表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

黒猫ツバキと『魔女たちの秘密基地』(前編)

登場キャラ紹介(コンデッサとツバキ以外)

 バンコーコ……コンデッサの友人。同世代の魔女。

 プリン……バンコーコの使い魔。メスの黒猫。ツバキの友だち。


 ジンキミナ……魔女たちの長老。コンデッサの魔法の師匠。

 サクラ……ジンキミナの使い魔。年長の黒猫。


※テーマは「秘密基地」です。

 季節は夏。

 ここは、ボロノナーレ王国の端っこにある村。


 20代の魔女コンデッサと彼女の使い魔である黒猫のツバキは、仲良く暮らしていた。


 最近、ツバキには気になることがある。(なま)け者のコンデッサが、頻繁(ひんぱん)に外出するようになったのだ。

 その際、ツバキはいつも留守番させられる。


 出かける時、コンデッサは妙にウキウキしており、帰ってきたら満足げにしている。

 いったい彼女は毎回、どこへ行っているのだろうか?


「ご主人様。また、お出かけなニョ?」

「う……うん。そうなんだ、ツバキ」

「いつもいつも、どんなところへ行って、そこで何をしているにょかニャ? たまには、アタシも連れて行って欲しいニャン」

「それはダメだ!」

 コンデッサが大きな声を出したため、ツバキはビックリした。


「な、なんでダメなにょ?」

「あ……怒鳴って悪かった、ツバキ。実は……な。私が近頃、訪れているのは〝魔女の秘密基地〟なんだよ」

「にゅ? 秘密基地?」

「そう。そこに顔を出せるのは、魔女だけ。それ以外は、何者であっても立ち入ることは許されないんだ。なんと言っても〝秘密基地〟なので!」

「ご主人様の使い魔なにょに、アタシも入れないニョ?」

「使い魔は、私たち魔女の大切なパートナーだが……秘密基地は、特別なんだ。魔女のみ入ることが出来る、神聖な場所なんだよ。ツバキを(ともな)って行き、万が一にもお前が大変な目に()ってしまったら、私は後悔してもしきれない。だから、我慢して留守番をしていてくれ。な? ツバキ。頼むよ」

「……分かったニャン。ご主人様はアタシが大事だから、連れて行ってくれないんにゃネ」

「そういう訳なんだ。じゃ、行ってくる!」


 コンデッサはツバキへ手を振るや、(ほうき)に乗って、サッと王都の方向へ飛んでいってしまった。


「秘密基地は、王都にあるのかニャ? それにしても……ご主人様の言葉は(うわ)ついていたし、目も泳いでいたニャ。(あや)しいニャン」



 王都の街角にある、猫カフェ。

 店内は、今日も訪れた大勢の魔女たちで(にぎ)わっていた。


「コンデッサ、いらっしゃい」

「やぁ、バンコーコ。また来てしまったよ」


 バンコーコは、コンデッサの友人で同世代の魔女である。


「相変わらず、みんな居るな」

「猫カフェの猫ちゃんたち、可愛いからね~」

「しばらく()つと、無性(むしょう)に会いたくなっちゃうんだよな」

「そうそう」


 コンデッサとバンコーコが頷き合っていると、他の魔女がニコニコしながら話しかけてきた。


「普通の猫ちゃんって、見ているだけで、不思議と新鮮な気持ちになるのよね」

(しゃべ)らないしな」とコンデッサ。

「2足歩行もしないしね」とバンコーコ。


 基本的に、全ての魔女は使い魔と契約(けいやく)している。そして使い魔のほとんどは、メスの黒猫だ。なので猫について、魔女たちは見慣れているはずなのだが……。


 この夏。


 何故か若い魔女たちの間で、猫カフェを訪問することがブームになっていた。ペット同伴(どうはん)は禁止されており、使い魔の黒猫がヤキモチを焼いても困るため、皆コッソリと来店している。言い訳は共通で『秘密基地へ行ってくる』だ。魔女同士で、申し合わせているのだ。


 店の中で猫たちと遊びつつ、魔女たちは語り合う。


「常に使い魔と一緒に居るから、ときどき猫ってどんな生きものだったかを私、忘れちゃうのよね」

「使い魔の黒猫は人間の言葉を喋ることが出来て、ちょいちょい2足歩行をしたりもするから」

「あと平気で、人間と同じ物を食べたり飲んだりするし」

「それで、主人である私に文句を言ってくる」

(つと)めをさぼることも、多い」

「つまみ食いも、しばしば」

「口が達者(たっしゃ)で、仕事における手の抜き方が巧妙なのには、腹が立つ」

「ちゃっかりしているのよね」

「あの世慣れた態度……小憎(こにく)らしく感じちゃうことも」


「だから、普通の猫ちゃんの何げない仕草(しぐさ)を見て、キュートな鳴き声を聞くと、()やされちゃう」

「猫カフェは天国」

「もふもふ~」


 と、ここでコンデッサが一言。


「でも、やっぱり私のツバキが1番可愛いんだよな~」

「あら。もっとも可愛い子は、うちのプリンよ」とバンコーコ。


 プリンは、バンコーコの使い魔だ。

 他の魔女たちも、次々と主張する。


「違う! 最高なのは、うちの使い魔」

「わたしの使い魔には、どの子も(かな)わない」

「皆、分かっちゃいないわね。ワタシの使い魔である、あの子の右に出る猫なんて、世界には居ないのに」

「うちの子!」

「うちの子!」


 結局どの魔女も、自分の使い魔が1番可愛いのであった。



 魔女の使い魔である黒猫たちは月に一回、定期集会を開いている。


 今月も黒猫たちは(つど)い、近況を話し合った。黒猫たちの口から、主人である魔女たちへの不平(ふへい)が続出する。


「ご主人様は、最近ちょっと出かけすぎニャン。『秘密基地に行く』って毎度、言うんにゃけど……」とツバキ。

「ツバキのところも、そうなんニャ。わたしのご主人様も、しょっちゅう〝秘密基地〟とやらに行ってるニャン」とプリン。


 ツバキとプリンの会話を聞き、他の黒猫たちも不満を()らす。


「あたしのご主人様も!」

「いつも1人で行くニャン、浮ついたかんじで。わたしを連れていかずに」

「いぶかしいにゃ」

「帰ってくるときはご主人様、変にこざっぱり(・・・・・)しているニョ」

「うちも! あれは、きっと《クリーン魔法》を使っているニャン」

「クリーン魔法……」

「ニャンでわざわざ、帰宅途中で身体をキレイに――」

「秘密基地って、服や身体が汚れるところなニョ?」

「むしろ、にゃにかの犯行を隠しているようニャ……」


 先月の集会でも、『ご主人様が秘密基地に行く』件は話題になっていたのだ。そのため今月は黒猫たちのイライラが、より高まる事態になっている。


 ポツリと、ツバキが(つぶや)く。

「ご主人様、浮気(うわき)をしているみたいニャ」

 後編に続きます。〝ご主人様の浮気疑惑(笑)〟の結末は……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 猫も使い魔もどっちも可愛い( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ