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王子様はバカじゃなかった、良いことだとも

「リタ、本当の君を教えてほしい」


 魔力量がおかしいと言われ、次に言われた言葉はそれだった。まるで、隠しているでしょうと確信しているようなその声音。逃げそうになる体。だって、普通に考えて魔力量が多すぎるのも中身が子供ではなくて一度人生を歩んだ大人であると知られるのは恐怖でしかない。けれど、ナチョはそんな私の両手をぎゅっと自身の手で包み込んだ。


「大丈夫。リタを嫌いになることなんてないから」

「……醜悪かもしれないよ」


 出てきた言葉にナチョは笑う。もう、その言葉はバラしたようなものだろうけど、ナチョの目は変わらなかった。


「どんなリタでもリタはリタでしょ」


 何かが変わるわけじゃないよとナチョは言う。


「…………父さんとか母さんとかに言わない?」

「もちろん、リタが望まないのなら、言わない。誓うよ」


 王子様に誓うよとか言われたら、死ねる。それが自分の秘密であったとしても。いや、そもそも肉付きの良くなったナチョって顔がかなり整ってるのですよ。えぇ、そんな人に誓われたら、死ねる。自分には死しかないのでは?? と思うほどだよ。むしろ、死しかないな。


「リータ」

「あい」


 名前を伸ばし呼びされるというご褒美。いや、はい、ごめんなさい。ちゃんと伝えますとも。目で訴えないで。





 木陰でゲロりました。それは綺麗に、私にはこことは違う世界で生きていた記憶があることを。


「そっか。だから、大人みたいな喋りや気遣いをすることがあるんだね」

「まぁ、色々と社会には揉まれてたと思います、はい」

「ちなみに『ギウクン』って何?」


 おぅふ! とんでもないワードを聞かれてるんですけど、やだー。しかも、なんか、ナチョの目が笑ってないんだけど。なぜ故に!?


「えっと、気のせい、では」

「寝言でよく出てくる言葉だったんだけど」

「…………」

「それに多分、人だよね。名前っぽいし」

「あぅ、それは、その」


 逃がさないよとばかりに詰め寄ってくるナチョ。

 はい、ゲロりました(二回目)。ついでにこの世界についても吐いちゃいましたとも。いや、どうせ、そのうち、ナチョに問い詰められそうだったから。


「ふーん、そのギウ君って子に似た僕の顔好きなんだ」

「はい、その通りです。一目惚れでしたー」

「過去形?」

「いや、今も好きですよ、好きだとも」


 うわーんと顔を両手で隠せば、ナチョはカラカラと笑う。ひどい、笑うことないじゃないか。てか、何で、私、十歳の子に暴露させられてんだ。


「ちなみにだけど、そのリタのいうげーむ? 遊戯では僕ってどんな感じだった?」

「正直にいうと、ナチョに出会えなくて、やめたから詳しいこと知らない。ナチョがどういう性格だったのか、その世界ではどう生きてきたのか知らない」


 それに私にとって、ナチョは今のナチョだからなぁと続ければ、ニコニコと笑うナチョ。その顔はどこか嬉しそうで、私が恥ずかしくなった。


「僕にとってリタが今のリタであるように、リタにとって僕が今ここにいる僕だっていうことが知れて嬉しいよ」


 心底嬉しいという顔をしないでください。惚れちゃうじゃん!!

 はっ、そうだ、悪夢で魘されている件も話して自分が心配だったから一緒に寝てたのもゲロったわけだし、これも言っておいた方がいいよね。


「あ、そうだ、ナチョにバレたので、これからはナチョと一緒に寝るのはなしで」

「なんで?」

「いや、だって、ほら、私ってば体は子供だけど、中身は大人だし」

「それがどうかした?」

「いや、あの、ね、いやでしょう」


 真顔で尋ねるのやめてくれません?? すごく圧が、圧がすごい。語彙力がないとかいうなかれ。だって、ほんと、凄いんだって。何をされたわけでもないのだけど、自分に圧しかかる何かがあるわけ。


「そう、リタは僕と寝るの嫌なんだね。はぁ、リタが一緒に寝てくれないと寝不足になってしまうかもしれないね」


 そしたら、ウリセスに心配されるかも、どうしようというナチョ。演技なんだろうね。演技なんだろうけど、儚そうな雰囲気を出すのやめて。居た堪れないよ。流石王子。演技力があるわ。


「べ、別に嫌なわけじゃなくてね」

「じゃあ、良いよね」

「いや、はい、うん、そうですね」

「よかった」


 ふわっと笑ったナチョに私は天を仰ぐ。顔が、顔がいい。私としては頑として退けなければいけなかったのだろう。いけなかったのだろうけど、無理!

 それにその後もナチョはバカじゃなかったんだなぁって思い知らされたよ。いや、バカじゃなかったのは良いことだよ。良いことなんだけど、瞬時に理解して攻めてくるのは良くないよ。

 中身が大人だってわかったからかな、スキンシップが激しくなった気もする。え、なんで?? ナチョというかイグナシオ殿下を攻略したことないから、どうしてそうなってしまったのかが全然わからないんだけど。逆に私の方が攻略されてる気がする。


「リタ、これ好きだったよね」

「え、うん、ありがとう」


 やたら、好きなもの把握されてるし、プレゼントとかされるけど、そんなことないよね???

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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