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龍を犬に置き換えたらだいぶ可愛い

 あれから、決まったことなのだけど、イグナシオ殿下は我が家で過ごすことになりました!!! マジか、私の心臓よ、健やかに保ってほしい。確かに村長の家よりは教会の近い我が家の方が呪いとかで緊急事態になったらいいもんね、わかる! ちなみに何故、ナチョがあの屋敷にいたのかは私には教えてもらえなかった。けれど、なんとなくナチョの雰囲気から理解はしている、つもり。王様とかには連絡飛ばしたのかな? まぁ、難しいことは大人の方々にお任せしましょう。

 ちなみに、起きたら自宅の自分の部屋だったよ。びっくり。いや、すごく眠たくなってまた教会で寝ちゃったのは覚えてる。ベッドに寝かされた瞬間、パチリと目が覚めて、父と目があった。そこで、殿下が我が家預かりになったのを簡単に教えてもらったのだ。父から説明を受け、目が冴えて眠れなくなってしまったので父と一緒に殿下の部屋を作ったよ。偶に重病人とかの人を泊まらせる部屋もあるけれどそれは一階だし、私たちの生活圏ではなかったので、同じところにと二階の空き部屋を急遽作り替えたわけ。魔法って便利ね。土魔法を持っている父は木の板と苗を持ってくるとそこからベッドをこさえてしまった。まるで木が成長する過程でそのままベッドになってしまったかのようなそれ。しかも、葉っぱも出てる。


「え、え、どうなってるの? いま、なえだったよ??」

「ははは、いい反応だな。ちょっと、成長を促進させただけだぞー」


 成長を促進させるだけでそんなことができるのだろうか。どういう魔法の動きをさせたらそうなるのか父が他の家具を作るのを私はじっと見つめた。父はここをこうしてこうと説明してくれるけどいまいち私にはわからない。父はもしかしたら、説明が下手かもしれない。聞きたい過程がすっ飛んでんだもん。そう思っても仕方がないでしょ。

 そうしてベッドの枠組みに板やマットを敷いたり、部屋を掃除したりとしているうちに母が殿下を抱きかかえた神父様を伴って帰ってきた。一体どう言う状態??


「こちらが殿下の部屋ということでよろしいでしょうか?」

「えぇ、ついさっき整えたばかりで足りないものがあるでしょうが」

「十分でしょう」


 抱えてきた殿下をベッドに寝かせ、神父様はでは後はよろしくお願いしますと言って帰っていった。

 そのあとは軽く夕飯をとって、おやすみなさいとなった。今日だけで色々あったからね! 主に私のせいかもしれないけど。

 ちなみに私は既に一人部屋を貰っている。まぁ、先祖代々の資料とかを本棚に詰め込んでいるせいなんだけどね。始めは夫婦の部屋に私も一緒だったんだけど、本とかを持ち込み始めたのと私が大人しかったのもあって一人部屋でも大丈夫なんじゃないかとなって数日おきにと慣らしを入れて今って感じね。

 ベッドに潜って目を瞑れば、母がお休みなさいとランプの灯りを消した。うん、きちんとベッドに入ったかの確認ですよ。それから、母達も部屋に入ったのか、しんと静まる。虫の音や木々のさざめきなんかは聞こえるけどね。


『うむ、生きておるようだな』


 目が冴えてるなとぼんやり思っていると私を覗き込むように暗闇に浮かぶ金色の光が二つ。そうだ、コウガのこともあったんだ。でも、うん。


「……おやすみなさい」

『これ、待たんか、寝るな。俺様、頑張ったのだぞ、誉めろ』


 ぽふぽふとベッドを叩くコウガ。なんだろう。俺様で偉そうな口調なのにかわいいと思ってしまうのは。


『ん? もしや、体調が悪くなったのか? 神父拐ってくるか? あぁ、それよりも――を連れてきた方が早いか。いや、――の手は借りたくはないな。うむ、やめよう』


 俯いた私に今度はオロオロとし始めるコウガ。誰かの名前を言っていたようだが私にはそれが誰だかわからなかった。けれど、あまり本人いや本龍? としては頼りたくない相手のよう。仲が悪いのかな。いや、まぁ、それよりもそうだ、コウガは何を頑張ったのだろうと疑問に思う。


「体調は問題ないよ。で、なんで、来たの? 即供給が必要になったわけでもないでしょ」

『なんでとはなんだ! 折角この俺様が手助けをしてやったというのに!! 誉めろ! 崇めろ!』


 グワゥと怒るコウガによくよく聞いてみると神父様を呼んだのはコレだった。呼んだというよりも教会の窓を割り、黒靄を見せ、後を追わせて発見させただけなのだが。まぁ、神父様の足が悪いのを知っていたのか一瞬で飛び去らず、ゆっくりと神父様に合わせてたみたいだけどさ。何度も振り返ってちゃんと来てるか確認したらしい。想像したら、思った以上に可愛かった。コウガを、龍を犬に置き換えてみるとホッコリするけど。


「……ありがと」


 素直に礼は言うよ。まぁ、教会の窓を割ったのはどうかと思うけどさ。けど、誰かを呼んでもらわなかったら、私と殿下は夜になるまで、いや最悪見つけてもらえなかったかもしれない。一応、あそこは誰かの私有地という認識が村の皆にはあったから。それに村の中なら誰かしらの目があるからという甘さもあっただろうし。


『当然だろう!』


 ふんすと鼻を鳴らすコウガを私は助かったよとお礼の意味を込めて撫でてみた。それにきょとりとするとお気に召したようでもっと撫でよと頭を擦り寄せてくる。なんだろう、これは犬だったっけ。

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