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第5話 冒険者カード

  「それにしても凄い本の数だな…」


  2mほどの高さがある本棚は7段で構成されており、そのほとんどはミッチリと分厚い本で埋まっていた。


  「文字は…読めるな」


  この世界が俺に合わせてくれているのか、それとも俺がこの世界に順応しているのか、そんな事は正直どうでもいい。1つ確かなのは、俺はこの世界の文字を読むことが出来、人とも普通に話すことが出来る事だ。ついでに言うと魔物とも話すことが出来る。


  文字は読めるが内容は理解できるのか、ふとそんな事を思った俺は目の前にある本に手をつけた。


  ペラペラとページをめくった結果、この本は地図である事がわかった。街や国の分布図や、経路、出現する魔物など細かく記載されている。無数にあるページの中から今自分がいる騎士の街を探した。わりとすぐに見つかった騎士の街の周辺で出る魔物を確認すると、大半はゴブリンだった。森の奥にオークやミノタウロスなど凶暴なモンスターが居ると記載されているが、同時に目撃者は0とも書いてある。


  一体どっちが正しいのやら…


  「お待たせいたしました」


  そうこうしていると、案内人の彼女が水晶玉みたいな物を持って入ってきた。


  「カイトさん、勝手に本を取っちゃ駄目じゃないですか」

 

  柔らかな口調で俺を注意する彼女は、俺が手に持っている本を本棚に戻した。


  「全く、マスターに見られていたらどうするんですか?」

  「え、どうかなっちゃうんですか?」

  「それは見られてからのお楽しみです」

  「でもこの部屋、俺とお姉さん以外誰もいないですよね」


  彼女は少しシビアな表情になると


  「透明化の能力って存在すると思いますか?」


  と聞いてきた。

 勘はいい方だ!と思う俺は察した。


  「もしかして、透明化したマスターがこの部屋にいるんですか!?」


  場は一気に静まり返った。見えないのなら気配を感じ取ろうと、そう考えた俺に合わせるように彼女は間を空けた。


  しかし、それはつかの間の出来事であって、彼女はまたすぐに口を開いた。


  「うちのマスターの能力は攻撃的なものですよ」


  …何だったんだ。この一連のやり取りは。


  彼女の思考が読めない俺は、愛想笑いで応えた。


  「それでは気を取り直してこれから簡単な検査を行います」

  「ちなみに不合格とかあるのですか?」

  「いえ、そういうのではありません。この検査は冒険者カードに記載されるデータを取る趣旨なので」

  「わかりました。それではリラックスしてやります」


  俺はここ一番と言わんばかりの気合を入れて!!…入れて、


  「あれ?検査って何するんでしたっけ?」


  気合いが空回りして先走ってしまった。


  「良いのですよ。最初は誰でも自分の能力が判明するのを心待ちにしているのですから」


  恥ずかしい…


  「それではカイトさん。この水晶を両手で持ち上げ、その状態をキープしてください」

  「えっと、こんな感じかな…」


  水晶玉は思ったよりも軽かった。5〜10kg無いぐらいだと思う。俺は肘を伸ばして、目線の位置ぐらいでキープした。


  なんだ…この体の力が吸い取られる感覚は


  「どうでしょうか?水晶玉に力を吸い取られる感覚はしませんか?」

  「はい。体の中から何かが流れ出てます」

  「それは良かったです。どうやらカイトさんには魔力適性があるようです」

  「魔力適性とは…?」

  「簡単に言えば魔法を使えるということです。ちなみに今、水晶玉に吸い取られているのがカイトさんの魔力になります」

  「これは、危なくないのか?」

  「心配はいりません。魔力が無くならない限り、意識を失うことはありませんので」

 

  え?倒れるの??


  俺は意識的に流れ出る魔力を止めようとしたが、そう上手くコントロールは出来ない。自然と指先に力が入ると、魔力の流れは止まった。


  やった!


  「お疲れ様でした。これで検査は終了です」


  なんだ!検査が終わったから魔力の流れが止まったのか!


  1人で葛藤していると、彼女はタブレットのような端末を持ち出し結果を確認した。


  「…うん。筋力、体力など基礎的な能力は平均以上です」


  これは小学校からやってきた空手のお陰かな。


  「知力も悪くないですね」


  大学に行く為に勉強も頑張った!


  「中でも一際優れているのは精神力ですね。この数値は凄いと思いますよ」


  …あぁ、いじめや嫌がらせに耐えてきたから耐性が付いたのか…あんまり嬉しくねぇな。


  「パッシブスキル欄にぼっち陰キャって記されてますが、これは一体?」

  「なんだと!?それは消せないのですか!」

  「すみません。スキル操作は出来ませんので…」

  「…そうですか。それで、そのぼっち陰キャってどんな効果があるんですか?」

  「わかりません」

  「え?」

  「スキルの種類っていうのは無限と言われております。マイナーなスキルなら効果は分かるのですが、こんなスキルは初めて見ました」

 

  …なんか悲しくなってきたな。大事なスキルがこんな名前なんて、クラスの奴らに見られたらいい笑いものだ。


  「そういえばパッシブスキルってなんですか?」


  俺は気になる事があればなるべく相手に尋ねるようにしている。『聞くはいっときの恥聞かぬは一生の恥』この言葉を知った瞬間、俺は興奮した。実際頭の良い奴っていうのは分からないことがあったら自分で調べたり、周りに聞いて解決する事で自分の知識として蓄える。分からないでは済ませたくない。だから俺はどんな些細なことでも聞く癖をつける。


  「パッシブスキルとは、自分の意思とは関係なく常時発動されているスキルのことです。魔力消費などはありませんので、あればある程お得って感覚で大丈夫です」

  「そうだったのか。それなら名前ごときでは文句も言えないな」

  「ですが、必ずしも良い効果が出るとは限りませんが」

  「やっぱりこんなスキルいらなぁーーい!!」


  こんなマイナスなイメージのスキル、いい効果なわけがない。畜生!序盤からとんだスキルを身につけてしまった…


  「実はもう1つ、パッシブスキルがあります」

  「なんですと!?待ってました!それでスキルの名前は?」

  「碧血丹心(へきけつたんしん)


  碧血丹心だと!?たしかこの四字熟語は…忠誠心とかじゃ無かったか?しかしこれだけじゃ全くスキルの意味が分からないな…


  「これは良いといってもいいのかな?」

  「最高です!!」

  「え?」


  彼女のテンションが一変した。先程まで仕事の一環で冒険者のサポートをしている感じだったのが、まるで婚活にでも来ているかのような食いつきになった。


  「四字熟語のスキルはとても貴重なんですよ!現在発見されているスキルは100%の好影響が報告されています」

  「おぉ!なんだか分からんがテンションが上がってきたぞ!」

  「それではカイトさん!冒険者カードが出来ましたのでお渡しします!後でクエストの受注の仕方やオススメなど教えるから下で待っててね!」

  「お、おう」


  激変した彼女のテンションについていけない俺は一旦部屋を出てクレアの元に向かった。


  マスターの部屋で1人になった案内人は、カイトの為にタブレットでランクアップまでの最高率クエストを探していた。


  ピコン!


  彼女のタブレットに1件の通知がきた。


  「これは、カイトさんの冒険者カード情報?」


  すぐに通知画面を開いた彼女は信じられない能力を目にすることになった。


 

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