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第2話 商人とゴブリン

  「大丈夫ですかお姉さん!!」


  ゴブリンが止まったのを確認した俺は、丸くうずくまりながら震える商人のお姉さん元へ駆け寄った。


  「私は大丈夫です。それよりも貴方の方が大怪我を…あれっ?もう治っている!?」


  お姉さんに言われ、俺は初めて腕の怪我が治っていることに気が付いた。


  そういえば、目の前で起きた出来事が衝撃的すぎて気付かなかったが、痛みを感じたのも僅か数分程度だった気がする。



 それにしてもこの回復速度…明らかに人間のそれではないな。


  俺はこの世界に来て人間を卒業したのではないか。そう悲嘆にくれていると、動きを止めていたゴブリンがこちらに振り返った。


  ヤバい!また暴れ出すのか!?


  「すみませんでしたぁぁぁ!!!」


  なんとゴブリンのとった行動は俺の予感と予想を良い形で裏切った。

 地に膝をつき、こうべを垂れる。その姿はまるで服従を意味していた。


  「正気に戻ったのか?」

  「はい。ご迷惑をお掛けしました」

  「その姿は…元には戻らないのか?」

  「今の所、戻りそうな感覚は感じられないです」


  とりあえずは一安心だな。それにしてもこれからどうしようか…

 選択肢は大きくわけて2つ。ここで商人の女と別れを告げてゴブリンについて行くか、その逆でゴブリンに別れを告げて商人の女について行くかの2択だ。


  「ちなみに君はこれから何処へ向かうのだ?」


  俺は先にゴブリンの目的を聞くことにした。


  「自分はこの森を抜けた先にあるゴブリンの住む村に帰る途中でした」

  「帰る…ってことは、もう用事は終わったのか?」

  「いえ、村に帰って、族長に伝言を伝えるまでが私の使命です」

  「そうか。それじゃ商人のお姉さんは何故街に向かっていたのですか?」

  「あっ…はい!私は村の農作物の収穫状況の報告と、街でしか買えない農具や肥料の調達です」

  「…お姉さんはそんな大事な仕事を護衛なしでやってたのかい?」

  「実は私達の村は今、貧困問題に直面してまして、その、護衛を雇う資金もない状態なのです」

  「そうだったのか。大体状況は分かった」


  村に戻るガタイの良くなったゴブリンとお金が無くて護衛も雇えなかった商人の女、どちらについて行くかなんて既に決まっていた。


  「すまないな。俺は彼女の護衛につくからここでお別れだ」

  「そ、そんな、せっかく魔王様に出会えたというのに…」

  「悪いが、俺はまだこの世界に来たばかりで何も分からないんだ。急に魔王と言われても全くピンと来ない。だから、しばらくはこの世界について知りたいと思うんだ」


  魔王のことについても詳しく調べたいが、何よりもクラスの連中がどうなったのか気になる。


  「そんな心配した顔をしないでくれ。お前が言うに、俺は魔王なんだろ?お前の事はしっかりと覚えたから、次会う時まで元気でいるんだ…」


  そうか!いいこと思いついた!


  今にでも泣き出しそうなぐらい目に涙を溜めているゴブリンを前に、俺は仁王立ちで大地を踏みしめ声を張った。


  「これは魔王命令だ!そこの臆病なゴブリンよ!!再び我が姿を現すまでに強くなるんだ!死ぬかもしれない?死が貴様を(むしば)むのなら、それを払い除けれるほど強くなれ!!

 俺は魔王だ!この世を統べる大魔王だ!!ならば!配下となる貴様もそれに相応しい力を示せ!!わかったか?……わかったかと聞いておるのだぁ!!!」

  「はい!魔王様!!不肖(ふしょう)(わたくし)が全身全霊を尽くし、必ず魔王様に見合うゴブリンとなり、再び貴殿の前に姿を現すことをお約束いたします!!」


  力強いゴブリンの言葉は、森全体を震え上がらせ、俺の魂の奥底まで響き渡った。

 今にでも泣きそうだったゴブリンの顔は、目標を見据えた狩人の目付きに変貌していた。


  臆病と言った俺の目がおかしかったのでは、と思えるほど凛々しい姿のゴブリンは、俺と商人の女に一例をすると静かにその場を立ち去った。


  これは次に会う時が楽しみだな。


  「あの〜、冒険者様〜」

  「はっ!すまない。すっかり感傷に浸ってしまった」

  「いえ、それはお気になさらず。それよりも先程、ゴブリンと話をしていたのですか?」

  「あ、いや…あれは」


  しまった彼女がいる事をすっかり忘れていた…

 これはどう誤魔化すべきか。


  「あぁ、気にしないでください!私、魔物と会話出来る方を初めて見ましたので、つい気になって聞いてしまっただけなのです…」

  「うーんと、その…」


  どう言おうか悩んでいる俺に、彼女は眩いほどの眼差しを向ける。


  ここは下手に言い訳をするのは良くないよな…


  「そうなんだ。実は俺、魔物と話すことが出来るんだ」

  「やっぱりそうなんですか!!」


  俺の言葉を聞いた彼女は、まるで初めて遊園地に来た子供のように目をキラキラさせながら、グイッと俺の懐に入り自己紹介を始めた。


  「それでは改めまして。私はレトール村の村長の一人娘、クレアです。冒険者様のお名前も聞いていいですか?」

  「あぁ、俺の名は坂島海渡だす」

  「カイトさんですね!お会いできて光栄です」


  すっかり彼女のペースに持っていかれた俺は、改めてクレアの姿を確認した。

 170cmぐらいだろうか、女性にしては少し高い身長に、腰の辺りまで伸びる明るいブロンドヘアが似合う彼女。スラッとした体型に控えめな胸。そして、素敵な笑顔。


  「うむ。これは間違いなくマドンナ級だな」

  「ふふっ、ありがとうございます」


  なんと!ボソッと呟いた筈なのだが、なんという地獄耳。


  だが、よく見ると髪は少し傷んでおり、肌の潤いもない。どうやら村の状況もあり、満足に手入れが出来てないようだ。


  「それではカイトさん!そろそろ行きましょう!この森を抜けて少し歩くと街が出てきます!!」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

まだまだ描き始めたばかりですが、今後も頑張っていきたいと思います。

変な文法とかありましたらどんどん言ってください。

また、評価などして頂けると私のやる気も上がったりしますので、良かったら最後にひと手間お願いします。

ではまた次回でお会いしましょう!!

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