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秘密と魔神教の話

遅くなりました!

「あっ、アルベルトさんおはようござい、ます……。何か変わりました?」

「アルベルト、よく眠れたか?疲れは取れたか?老けたか?」

「……師匠、おはよう」


 翌朝、起きて、裂けて血だらけの服防具を着替えて、食堂に向かったらセシリアとアンジェリカ、それにシャノンがいた。


「みんな、おはよう。おかげで、すこぶる体調は良いよ。あとアンジェリカ、俺は老けてない」


 今日起きたら昨日の疲れがまるでなかったかのように全くない。それどころか今ならなんでもできるのでは?と思えるくらいに力が張る。


 まぁ、気のせいだろうが。


「そうか。なら良かった」

「良かったです。…………アルベルトさん、食事をしながらで良いので話を聞いてくれませんか?」

「……俺も丁度話したい事があるんだ」


 俺は席についてウェイトレスに朝食を頼んだ。


 そして朝食が運ばれてきた。ビッグボアと呼ばれる大きな猪型のモンスターを焼いたベイクボアが運ばれた。


 これらが運ばれてくるまで、セシリアは一言も喋らなかったから本当に俺が食べるのを待っていたのだろう。


「昨日、アンジェと話し合ったんです。そろそろ私達の秘密をアルベルトさんに話しても良いかを」


 俺がベイクボアをフォークとナイフで切り分けて食べている(この街は金属製品が多い)とセシリアがそう切り出した。


「実は私は、聖女候補で、アンジェは私の守護騎士なんです」

「聖女、候補?聖女はわかるよ。御伽噺でもよく聞くからね。でも、その聖女候補ってのは知らないな。候補ってついてるから正式な聖女ではないってのは予想がつくが」


 凡そ二千年前、最初の魔王を倒した8人の英雄達。魔王との戦いで生き残った勇者、剣神、賢者。死んで遺体を持ち返られた守護者と聖女。死体すら確認されず、生死不明、行方不明のテイマー、錬成師、空間魔導士。


 この英雄達の中でヒーラー兼バッファーをしていた聖女の遺体は現在も教会の管理下に置かれ、聖遺物として人々を見守っているのだとか。


「アルベルトさんの考えは大体合ってます。聖女候補とは、今は亡き古の聖女アスカ様から聖人因子を賜りそれを育ませ、次代の聖女になる者のことです」


 セシリアの話によると聖人因子と呼ばれる力を伝説(古)の聖女アスカから賜る事で、聖女候補になるらしいが、因子の力は弱く、育てるのにも人の一生ほどは掛かるらしい。


 しかし、聖女候補は聖人因子の力を他者に一時的に移す事が可能らしい。


 セシリアは聖人因子を育てる為、因子の力を一つに絞り、助けたいという気持ちで聖属性魔法全般の効果をあげる『救恤』を育てている。


 そしてアンジェリカに、対象に自身が態度を低くする事で対象を強化する『謙譲』を渡しているらしい。


「聖人因子は一つじゃないんだな」

「はい。因子は七つの力がセットになっています。そして、この力を移すにも、移す対象に適性がないといけません」


 適性がないと因子の力が発揮されないらしい。


「救恤や謙譲の他にも自身の成長を早めたり、各種耐性や頑丈になったりなどの力もあります」

「……どうして、セシリアこの事を話そうと思ったんだ?」


 なんとなくわかっている。秘密にしていた理由も今話している理由も。


「それは、私達が信頼に足る人だと思ったからです。そして私の守護騎士として、因子の力を受け取って欲しいからです」

「待て待て!そもそも因子を移すには適性がいるんじゃなかったのか?」

「緩いんだよ」


 俺が適性について聞くとアンジェリカの方が答えた。


「そもそも適性は因子の力を使う為に必要な条件を満たせれば良いってだけなんだ。

 例えば私の因子の力『謙譲』は誰に対しても傲慢では使えない。

 セシリアの『救恤』も偽善で助けると言う気持ちでは使えない。

 ただ助けたい、それだけの気持ちでないと使えない、適性がないって事だ」


「……本当に緩いな」


 その適性条件、緩すぎやしないか?


 しかし、一つ疑問があるな。


「その聖人因子を育てるだけが目的じゃないんだろ?他に何が目的なんだ?」

「……やはりアルベルトさんは気づいていましたか」


 聖人因子を育てるには何か茨の道を通らなければ成長できない気がする。普通の何もない道では因子の成長は遅い筈だから。


「私の(・・)目的は魔神教の殲滅です」

「…………。それは魔神教が邪教だからか?」

「当たり前じゃないですか。魔神教は辺境の街で何をしたか、忘れたんですか!?」

「いや、忘れちゃいねぇよ」


 あの時、俺が少しでも早く駆け付けていれば、領主の館で生贄にされた20名の人達が死ぬ事も無かっただろう。


 今でもあの時の事を忘れる事はない。弱い自分を忘れる事は決してない。


「セシリア、一つだけ言っておく」

「なんですか?」

「邪教なのは魔神教の過激派だけだ」

「……アルベルトさん、貴方、何を言っているのか分かっているのですか?」

「ハァ」


 これは、セシリアはどうやら魔神教を勘違いしているようだ。


「セシリア、魔神教について言ってみろ」

「魔神教は魔王の意志、世界に破滅を齎す事が目的で、世界中で、虐殺と破壊の限りを尽くす忌々しい教団

「違う」

「何処がですか!」


 俺のダメ出しに、セシリアが叫ぶ。


「まず目的が違う。魔神教の目的は世界で革新をもたらす事、それも食文化の革新だ」

「そんなの貴方の間違いです!世界を革新させたいのではなく、破滅させたい筈です!」

「それはセシリアの勘違いだ。それが目的なのは過激派だ」


 前にも出たが、魔神教には二つの勢力があり、世間一般の魔神教の認識は過激派だ。


 理由は過激派の方が行動が目立っているからだ。


 だから世間は魔神教と言えば過激派が行ってきた蛮行を思い浮かべてしまう。


「俺は魔神教の穏健派と接触を持った事があるが、あっちはまともだった」

「過激派?穏健派?」

「私達が知っている魔神教とは過激派だけと言う事なのか?」

「そう言う事だ」


 アンジェリカはなんとか理解できたみたいだがセシリアはまだ理解できていない様子だ。


「セシリアは教会育ちなのか」

「……はい」


 やはりか。教会は昔から魔神教を目の敵にしていた。教会、女神教はこの世界でも最古と言える宗教だ。


 この女神教、最低でも二千年前から存在する宗教で、最初の魔王と戦っていた勢力だ。


 だから女神教は、最初の魔王を神と崇める魔神教を目の敵にしているのだ。


 そんな女神教の教会で育ったセシリアなら魔神教に悪い印象を教え込まれていてもおかしくない。


「セシリア、話の目的から段々と離れている」

「そうでした……。アルベルトさん、私の聖人因子を受け取ってください」

「………セシリアの目標は魔神教の過激派を殲滅でいいな?」

「はい。私は魔神教を、魔神教の過激派を殲滅したいです」

「………ちょっと考えさせてくれ」


 俺はそう言って、丁度食べ終わった食器にナイフとフォークを置き、席を立つ。そして、そのまま宿の外に出た。


「あっ、一週間弱体化してるのを話すの、忘れてた」


 後で話そうとしていた事を話しそびれていた事に気づいた。

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