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ノーテラーレジェンド  作者: 存在しない語り手
第2章【五人の有志、それぞれの思い】
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5節・赤土 陸 : 泣いた少年よ、大志を抱け


ふてぶてしい表情の少年はズンズンとヒカル達の方へと歩み寄る。


「彼がリクじゃよ」


「赤土 陸......」


リクはノムとヒカルを睨みつけると2人を指を指してバンビとカイに文句を言った。


「バンビはん、カイはん、何やねんこいつらは?2人知らんのが増えとるやんけ」


「月風煜君と野村忍君、君と同じ高校二年生さ」


「相手は化け物じゃからな、我々3人だけでは心許ないと思って戦力になる2人を急遽連れてきたんじゃよ」


「ほーん......」


リクは2人を品定めをするかのようにジロジロと睨んだ。


「ま、まぁ何にせよこれからは同じ目的を持った仲間になる訳じゃから仲良くな」


「俺は野村 忍ってんだ、気軽にノムって呼んでくれ!よろしくな!」


そう言ってノムは握手をしようとリクに手を差し出すがリクはその手をパシッと払いのけた。


「おのれらが口裂け女と戦う理由は何や?」


その問いかけに一瞬2人は困惑して顔を見合わせたがそれぞれの意思を言葉にした。


「大切な人を守るため」


「俺は親友を、ヒカルを守るため、そしてこの岐阜県を救うためだ!へへッちょっとカッコつけすぎかな?」


「ハァー......」


リクは2人に聞こえるほどの大きな溜息をついた。


「去ねや、二度とワイの前に現れるな」


「なっ何なんだよいきなり!そんな言い方ないんじゃないのか!?」


「......」


「これリク!」


バンビが慌てて仲を取り持とうとするがリクはそんな事は御構い無しに2人を責め立てる。


「ガキのヒーローごっこや遊びやないんや、そんなくだらん理由でおられたらこっちが迷惑するんや、まったくバンビはんもよくもまぁこんなどこぞの馬の骨とも知らん奴らを連れてきたもんや」


リクのその言葉に堪忍袋の尾が切れたノムが食ってかかる。


「何なんだよさっきから偉そうにしやがって!ならお前の戦う理由はくだらなくないってのかよ!?」


「ああそうや!ワイは背負っとる物の重さがちゃうんや!おのれらみたいなしょうもない理由で戦わへんのや!!」


「しょうもなくなんかない!!」


段々と2人の口論が激しくなっていく。


「2人とも落ち着くんだ!!」


「ノム、頭を冷やせ!」


カイはリクをノムから力尽くで引き離し、ヒカルは今にもリクに殴りかかりそうな勢いのノムを後ろから羽交い締めで止める。


「2人とも、今は言い争っている場合ではなかろう!!先程も言ったように我々は口裂け女を殺すという共通の目的を持った仲間じゃ!!今自分の戦うべき相手は誰じゃ!?それを忘れるな!!」


バンビに叱責され、ようやく正気に戻るノムとリク。


「......すまねぇヒカル、つい熱くなっちまって......」


「気にするな」


「落ち着いたか?リク」


「すんまへんカイはん......」


ほんの少し落ち着きを取り戻した2人だがどちらも無言でお互い睨み合っている。

その様子を見ていたバンビは呆れたような表情で言葉を吐き捨てた。


「......やはり今の君達では無理か」


ヒカルたちはバンビのその言葉を否定する事もできずただ黙り込む。


「口裂け女との戦いは君達のチームワークが必要不可欠じゃ、いくら個々の実力はあっても今の心がバラバラの君達では絶対に歯が立たんじゃろう」


「......」


「そこでじゃ」



次の瞬間にバンビの口からヒカルたちの予想の斜め上を行く言葉が出た。



「これから1週間、対口裂け女の為の特訓合宿を行う」



「特訓......!?」


「そう、特訓じゃ、みっちりとな」



「冗談やあらへんわ!!こいつらと1週間も仲良しこよしせなあかんのかいな!!」


「先生!本気ですか!?」


「へぇー!楽しそうじゃん!」


「1週間も口裂け女を野放しにしたら今よりもっと犠牲者が増え......!」



「黙らっしゃい!!!!」



バンビの一喝で抗議の声がピタリと止んだ。



「先程も言ったように口裂け女を倒すためにはチームワークが必要不可欠じゃ

今の君たちの実力とバラバラの心で何の準備もなしに口裂け女に挑んでみろ、なす術なく全滅させられるのが関の山じゃ」


「誰かが犠牲になるとわかっていながらそれを放っておくなんて俺にはできない」


これ以上口裂け女の犠牲者を増やしたくない一心でヒカルはバンビに反論した。


「確かに君は強いし現に長女を倒した事実もある、しかし三女と次女は長女とは訳が違う、単身で戦ってどうにかなる相手じゃない、だからこそ君達にはチームワークとコンビネーションを駆使して戦ってほしいのじゃ」


「しかし......!」


「君の気持ちはよくわかる、非情と思われても仕方あるまい、だが口裂け女を止められる可能性があるのは警察や軍隊などではなく明確な殺意を持った君達だけじゃ」


「今このまま口裂け女と戦って君達が全滅すれば岐阜県、いや日本の未来は閉ざされる。

だからこそ準備を整えてから確実に勝利を手にする

それが結果的により多くの人達を救う事になるのじゃ、わかってくれるな?」


「......はい」


犠牲者を出さずに皆救ってみせるというのはこの事態では不可能だし最早綺麗事でしかない

やむを得ない判断だが今は特訓をして力をつける事が今自分達のすべき事だと考え、ヒカルはこれ以上何も言わなかった。


「......理解してもらえたようじゃの、では行こうか」


「はい、先生!」


「力をつけたら絶対にワイが殺したるからな、待っとれよ口裂け女」


そう言うとバンビ、カイ、リクは合宿場へと歩みを進める。


「何なんだよあいつ嫌な感じだぜ、なあヒカル」


「確かにそうかもしれないけど、表向きだけでも仲良くしておいた方が話が円滑に進む」


「大人だね〜」


ヒカルとノムもバンビ達の後を追うように歩き始めた。






(目が腫れていた......あれは泣いた跡だ

それに赤土という名字、どこかに出かけていたのもひょっとして......)

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