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 番外編27:女子会?(シーリン視点)

 いつも私の拙い妄想しょうせつを読んで下さりありがとうございます。



 前回の番外編と同様、基本的には1話完結です。


 一通りの確認はしておりますが、誤字脱字の確認時間を本編制作に回させて頂きたいと思います。

 誤字脱字のお目こぼしをよろしくお願いします。

 あまりにも酷い時には教えて頂けると幸いです。


 20時では無く21時更新にすべきだったとすでに後悔しています。

 20時更新に間に合わない時もお許しください。

                            2018/11/01 何遊亭万年

 これはシーリンがベスとアンを初めて自分の部屋へと泊めた時の話。

 ユークリットが魔壁蝨まだにの治療を受けた夜の話。

 シーリンとベスとアンの女子会(?)の話。




 わたしへとユークリットは自分が世話をしている少女達を預けてきました。

 わたしが彼の部屋にあった荷物全てを焼却処分した為、毛布も寝床もありません。

 ベスもアンも二人共良い子なのですが、わたしはあまり二人へ深く関わりたくありません。

 そんなわたしの気も知らず、ベスとアンの二人はわたしへ話し掛けてきます。


「シーリンさんはユークリットさんをどう思っていますか?」


 子供らしい素直な質問ですね。

 わたしにだって恋愛感情の有無を聞いている事は分かります。

 ですがここは笑顔で大人の受け答えをしましょう。


「そうですね。見た目よりも真面目な男だと思いますよ。」

「真面目なヒトは好きですか?」

「真面目なヒトは好きですが、ユークリットさんが好きとは言っていませんよ?」

「ではどう思っていますか?」


 ベスの追及が激しいですね。

 アンも青い瞳を暗く輝かせてベスの追及を後押ししているようですね。

 恋愛感情が無い事をさり気なく伝えて、一刻も早くこの話を終わらせましょう。


「そうですね。わたしにとっては不出来な弟が出来た感じですね。」

「弟ですか?」

「手の掛かる弟ですね。魔壁蝨には噛まれる。御者は出来ない。裸でお客様の居る食堂に平気で入って来る。だけど真面目で素直なところは憎めないというところでしょうか。」



 どうした事でしょうか?

 赤い瞳も青い瞳も不信感が高まったように見えます。

 アンがベスの手に文字を書いて何かを伝えているようです。


 思った通り、この子達は一定の教養が身に付いているようですね。

 最近まで浮浪児だった子達がどこで文字を覚えたのでしょう?

 二人は皇族関係者かそれに準ずる高貴な出自と考えた方が自然ですね。



「そんなに悪い所を並べるのに嫌いにならないのは好きだからじゃないのですか?」


 この子達面倒ですね。

 ユークリットのようにわたしの笑顔で色々読み取ってくれると楽なのですが。

 館長と彼以外にわたしの笑顔で機嫌を読むヒトは居ないので仕方無いですね。


「そんな事よりもまずは寝床を確保しましょう。」

「シーリンさんを真ん中にして三人で並んで寝ます。」


 アンも首を縦に振ってますね。

 どうやら、二人はわたしをこの話題から逃がす気は無いようです。

 相手は十歳くらいの子供です。

 大人として相手をしましょう。

 わたしが十五歳で結婚していたら、この位の娘が居てもおかしくない年齢ですからね。

 今夜は母親になった寛容な気持ちで三人で寝る事にしましょう。

 二人をわたしの寝床へと案内して三人で川の字を書きます。



「シーリンさんは髪の毛を解かないのですか?」


 話題が、わたしにとっては、更に悪い方へと転がりましたね。

 ベスは本当に好奇心が旺盛で面倒な子です。

 ユークリットの話をしていた方がまだ良いですね。


「ええ。ヒト前では解きませんよ。」

「何か願を掛けているのですか?」

「そうですよ。ヒトに言ったら効果が無くなりますから、それ以上は聞かないで下さいね。」

「分かりました。」



 こういうところはユークリットと同じで素直ですね。

 二人共、本当に良い子達なのですよね。

 わたしが十歳の頃は……友達らしい友達はいませんでしたね。

 ですが、同年代の女の子達は「誰が好き。彼が好き。」と常に言っていた気がします。

 面倒ですが十歳に戻ったと思って二人に付き合いますか。

 母親になったり、十歳の子供になったり今夜のわたしは忙しいですね。



「わたしはユークリットを弟のように思っていますが、二人はどうなのですか?」

「おじさんです!!」


 アンも首をこくこく縦に振っているが、二人共顔が真っ赤になっていますよ?

 ここが攻め処ですね。

 攻守交替して面倒な質問をさせないようにしましょう。



「今日の夕食時、ユークリットが土下座して魔壁蝨の事を謝りながら言っていましたよね?」

「何をですか?」

「たしか『俺の娘になる事をもう一度考えてくれないか?』でしたか?」

「そっそれは……」



 昔、わたしも二人と同じ道を通っています。

 ベスとアンの答えを知りながら質問しているようなものですね。

 この国では結婚に対する規則は特にありません。


 しかし、親子での結婚は周りから、かなり白い目で見られます。

 例え義理だとしても「自分の嫁にする為に育てていたのか?」と育ての親が周りから迫害を受ける事間違いなしです。


 義兄弟……漢字が違いますね、義姉妹も含めて、ある一定数世の中にはいるそうですが……

 義兄妹や義姉弟も、かなり厳しい目が世間から向けられるのが現状です。

 実の兄妹や姉弟ならば、より厳しくなるでしょう。

 実の兄弟や姉妹となるならば、どんな困難が待ち受けているのか想像がつきませんね。


 これがおじやおばになると、途端に世間の目が緩くなります。

 貴族や士族が政略結婚で頻繁に行っているからでしょうか?

 親族であり結婚相手としても認められる、今のベスとアンに取って最高の関係ですね。

 庶民の間では多少の噂話が立つ事もありますが、それほど敬遠するヒトはいません。

 庶民の間でも少なからず夫婦になっているヒトもいます。


 二人の事は、ベスの頭に隠された装身具サークレットを見る限り、皇族の誰かがメイドにでも手を付けて生ませて捨てた子供だとわたしは予想しています。



 痩せすぎて表情がほとんど変わらないですが、真っ赤な顔をしたベスとアンが筆談を使って内緒話をしています。

 ベス、アン、あなた達の筆談は全てわたしに見えていますからね?

 湾岸施設の子供達で文字を読めるヒトは居なかったでしょうが、わたしは仮にも斡旋屋で受付をしているのですよ?


 わたしの目の前で筆談ってあなた達は莫迦ばかですか?

 子供のやる事です。

 ここは十歳ではなく母親の気持ちでいましょう。

 二人の内緒話は目をつぶって見ないでいる事にしてあげます。


 三人の事は館長も気に入っているようです。

 このまま斡旋屋の一階に住み込むようになるでしょう。

 このまま、二人が元気になって、受付業務や食堂の配膳を手伝ってくれるようになると斡旋屋の仕事も楽になりますね。

 ユークリットには館長が手配した物資の運搬でもやらせましょう。

 館長にはそろそろゆっくりとした余生を過ごして頂きたいです。


 自分が想像をした館長の隣にフィーナさんが居た事で少し胸がもやもやしてきました。

 なぜそんな想像をしてしまったのか、自分で自分に腹が立ちます。

 そこへとわたしにベスとアンが鋭い牙を突き付けてきました。



「シーリンさんはなぜドカチーニさんの娘にならないのですか?」

「それは……」

「ドカチーニさんがなげいていましたよ。シーリンさんが十五歳になってから一度も『おとうさん』と呼んでくれないと。」

「質問に質問で返すとは、まずはわたしの質問に答えてもらいたいですね?」

「シーリンさんこそ、自分が答えられない質問をしないで欲しいです!」



 ベスとアンの意志が強い事は分かっています。

 ユークリットが無理矢理ここへ連れて来なかったら自ら餓死を選んでいたくらいですから。

 ここは無難で二人が答えやすい話題へと変える事にしましょう。



「では質問を変えましょう。どうしてユークリットさんを信用したのですか?」

「シーリンさんもユークリットさんも私の装身具を見ても態度が変わらないからです。」

「そうですね。正直言えば、利口なヒトなら利用するか距離をとるかどちらかを選びます。」

「彼は三人で食事を取るだけで幸せだと言ってくれました。そして、本当にその気持ちに嘘が無いのです。」

「どうして分かるのですか?魔法か何かを使いましたか?」

「……女の勘です……」



 十歳の少女が『女』ですか。

 ベスは喜んでユークリットの髪を剃っていましたし、確かに『女』ですね。

 髪を剃り上げる事は世間的に「夫も嫁も要らない」つまり「恋人は要らない」と周りに宣伝する事になります。


 これで、ユークリットを恋人にしようと思う女性は居なくなるでしょう。


 そこから派生して、坊主頭と居る女性は、それだけの覚悟を持った男の恋人であり、『手を出す時はそれなりの覚悟をしろ』と言う意味にもなります。

 わたしにとってユークリットは簡単に恋人が作れる心配をする程良い男とは思えませんが。

 それとも館長と比べるから見劣りするだけなのでしょうか?



「シーリンさん。ユークリットさんには坊主の意味を教えないで下さいね。彼は坊主の意味を知らないみたいですし……」

「それは依頼ですか?」

「シーリンさんに依頼しても良いのなら、出来る範囲で構わないので、ユークリットさんが坊主の意味を知る事を防いで下さい。」

「坊主の事は暗黙の了解といった側面が強いですからね。基本的には彼自身が意味を聞かない限り誰も教えるヒトは居ないと思いますよ?」

「それでもお願いします。」

「分かりました。うけたまわりましょう。それで報酬は何を考えていますか?」

「シーリンさんがお嫁に行かない理由とドカチーニさんを館長と呼ぶ理由を話さない事で。」


 お互いの依頼と報酬としては釣り合いが取れていますね。

 利口なのか莫迦なのか。


「では、それで手を打ちましょうか。依頼承りました。」

「よろしくお願いします。」

「明日は少し早く起きて、髪をかしましょうね。二人で可愛くなってユークリットさんをびっくりさせてあげましょうね?」



 ベスとアンが嬉しそうにしていますね。

 年頃の女の子です。

 おしゃれをして嬉しくないはずがありません。

 ユークリットには最低でも二人の髪を梳かすくしは買わせないといけませんね。

 今度機会があったら彼に忠告する事にしましょう。


 明日、わたしは普段よりも更に早く起きる必要が出来ましたね。

 二人が起きだす前に自分の髪を編み込まないといけません。

 回復魔法を使えば頭の傷は治るかも知れませんが、大切な館長との思い出でもあります。

 わたしはこの傷を大切に隠していきましょう。



「明日は早いのですからもう寝ますよ?」

「はい。」


 ベスの返事とアンの首を縦に振るのを見たわたしは『隣にヒトが居る状態で寝るのはいつ以来だろう』と思いながら眠りにつきました。




 二人に囲まれて見た夢は館長と一緒に寝ていた、わたしが子供の頃の幸せ一杯な夢でした。

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