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銀色の月の満月の夜・衛兵達の戦争戦後(ネモ視点)

 隊のみんなで斡旋屋の裏庭に帰ってくると、そこにはマリーが朝食を用意して待っていた。

 マリーがフィーナ様の無事を確認して安心した顔を見せる。

 実に子供らしい可愛い顔だ。

 普段から、この顔をしたらモテるぞ、マリー。



 隊のみんなには朝食が振る舞われた。

 おばちゃん達は酒も入っていないのに、すでに宴会状態だな。

 ホルスとマリーがフィーナ様を自室の寝床へと運んで帰ってきた。



 フィーナ様が居ないので、オレが代わりに挨拶をするとしよう。

 と思ったところで、マリーが先に口を開いた。


「皆様、昨夜は我が主フィーナの為に命を懸けてのご奉仕ありがとうございました。主人不在の為、メイド長である私の挨拶になる事をお許し下さい。」


 隊のおばちゃん達へと深々と頭を下げるマリー。

 普段、斡旋屋では目に出来ない光景だ。

 一切、愛想のない、すまし顔のマリーはどこに消えた?

 先程見せた子供らしさの欠片も無い。

 精一杯の感謝の気持ちを込めた貴族に仕える者としての礼だった。



「やだよ。マリーちゃん。あんたにだって普段からみんなが世話になっているんだ。そんなにかしこまらないでおくれよ。」

「そうだよ。みんな感謝の気持ちで先生の所に志願したんだよ?」

「ありがとうございます。わずかばかりですが、朝食を食べてからの解隊とさせて下さい。」

「気遣いありがとうね。ありがたくいただいていくよ。また来月も呼んでおくれ。」



 おばちゃん達も勇者だな。

 この地獄に「また来月呼んでくれ」と言って、その言葉に皆で同調していやがる。

 最後にマリーは全部美味しい所を持っていったな。

 だが良いだろう。

 この中にオレの嫁になるべきヒトは居ない。

 オレの偉業はオレだけが知っていれば良い。



「あんたネモだったね。凄かったよ。さすがフィーナ先生が衛士補に選んだだけあるよ!」

「本当だよ。三本角に一人で向かって行った時は莫迦ばかだと思ったよ!」

「何を言っているんだい、あんた達。やり遂げる莫迦が結局一番偉くなって行くだろ?」

「英雄ってやつかい?」

「あたし達は、その第一歩を見たのかも知れないね!」



 俺を囲んでおばちゃん達が口々にオレを誉めてくれている。

 やはり、オレの放つ『英雄』としてのオーラがヒトを寄せ付けるらしいな。



「とにかくありがとね。あんたが居たからあたし達に怪我人が出なかったと思ってるよ。」


 口々にお礼を言って、オレを抱きしめてから、おばちゃん達が自分の家へと帰って行く。

 最後に、マリーとホルスとオレが残った。



「ネモさん。それなりのご活躍をされたようですね。フィーナ様の一応執事ですので当然とは思いますが、その調子でお願いします。」


 この子供ガキは業務連絡以外オレとは口を開かない。

 せっかくのメイド少女だと言うのに勿体ない事だ。

 メイドは大好きだが、やはりこいつは好きにはなれない。


 それより食堂の方が大分うるさくなってきたな。

 冒険者達が帰ってきたようだ。

 あいつの無事を一応確認しておくか。



 食堂に入るといつも以上に混雑をしていた。

 冒険者達が独自にヒトを集めているようだ。

 ユークリットは……居た。

 食堂の隅の食卓で潰れてやがる。



「無事だったようだな?」

「ネモか。お前も無事で何よりだ。」

「シャイニ……アンに礼が言いたい。」


 ユークリットが突然起き上がり、顔を歪ませて俺に顔を近づけて威嚇してくる。

 こいつは坊主頭にした事によって、人相の悪さが上がったな。


「俺の娘に手を出す気じゃ無いだろうな?」

「そこは紳士淑女協定を順守する。」

「その言葉は信じよう。だがしかし!今、シャイニ……なんと言おうとしたのだ?」

「シャイニング・ルナルナだ。」

「ならば良い。俺も先程会ってきた。部屋でベスのリハビリをしているはずだ。あとお前の心の中で何と呼ぼうと勝手だが、アンの前で『シャイニング・ルナルナ』と呼ぶなよ?」

「分かった。そこは約束しよう。」



 こいつはオレが『シャイニング・ルナルナ』を嫁認定していない事を知っているからな。

 意外とすんなり、面会の許可が下りた。



「ところでお前の小隊は、ヒトを集めないで良いのか?」

「今回は全滅した隊の遺品捜索が優先だったからな。出来るだけ戦闘は避けたからヒトを雇ってまで取ってくる収穫は無いそうだ。」

「なら、あんた。今日は荷揚げ屋かい?」


 いつの間にかホルスが居た。

 今は、アスリートみたいな綺麗な体をしているが、本性はユークリット以上に筋肉の塊だ。

 お前に返すよ、ユークリット。


「どうするか、迷っているところです。本音は今日一日ゆっくり休みたいですね。」


 こいつ、また敬語に戻りやがった。

 オレと話す時のように普通にしゃべれば良いものを。


「港じゃあ今日は荷物の運び放題だぜ?多くの奴らが満月の夜の回収に出掛けるからな。」

「そうなのですか?」

「とにかく、あんたも今日は港で荷揚げ屋だ。何故って?あたいが来た!」

「ブハッ!」


 思わず笑いが飛び出てしまった。

 ホルスお前、英雄学校アニメを見ていたのか?

 そのまま過ぎて、ひねりもなにも無いぞ?


 ユークリットがホルスに手を引かれてシーリンの元へ向かっている。

 どうやら強制イベントが発生したらしいな。

 あいつの許可も取ったし、オレはシャイニング・ルナルナの元へと向かおう。



 一応、ノックをして返事を待つ。

「どうぞ。」

 と返答があったので入室した。

 オレの姿を見た途端に2人の少女に緊張が走ったのが分かる。

 今朝の笑顔が嘘のようにシャイニング・ルナルナの顔が緊張しているのが分かる。

 今日は部屋の外からの挨拶にしよう。

 少女を怖がらせるのはオレの趣味じゃない。


「ありがとう。アンちゃんの加護のおかげで無事に帰れたよ。」

「訪問までしていただき、丁寧な挨拶をありがとうございます。アンはしゃべる事が困難な為私が代わりに挨拶をする事をお許し下さい。」

 ベスと言ったか?見るからに生意気そうな子供ガキだ。

「いや。感謝の言葉を言いに来ただけだ。邪魔したな。」



 オレはこの部屋の扉を閉めて、斜め向かいにある自分の部屋の扉を開けた。

 2人の嫁が出迎えてくれる。


「ブラックたん。ホワイトたん。今日シャイニング・ルナルナに会ったよ。いつか君達にも逢わせてあげるからね!」


 このまま2人とゆっくりしたいが、鎧を脱いで背広の洗濯をしないとな。

 背広には『三本角トリケラトプス』の返り血がべっとり付いている。

 オレは全てを脱ぎ、ネクタイだけは締めて背広を洗いに裏庭に向かう。

 何か忘れている?

 そうだ。

 ブーメランパンツだけは穿はかないと、またお盆が飛んでくるな。

 あの時はユークリットに完全に騙された。

 世の中は全裸族に厳しいらしいが、シーリンは下半身丸出しに厳しい。

 もう一度ブーメランパンツを装着して、裏庭へと今度こそ向かった。



 食堂は混雑もピークだ。

 誰もオレの方など見ない。

 ネクタイは紳士のたしなみだからな。

 ヒト前で外す訳にはいかないな。



 洗濯場でしゃがみ込み背広を洗い始める。

 さすがは高品質現代日本の背広。

 みるみる血の汚れも落ちる。

 現代科学の撥水はっすい加工は凄いな。

 俺が背広を洗濯していると、隣にシーリンが並んだ。

 彼女は冒険から帰って来てからまだ着替えていないのか、冒険用の装備を着たままだ。



「ネモさん。あなたが噂になっています。一人で『三本角』を倒したそうですね。」

「おや?もうお耳に届きましたか?」


 こういった事は自分から手柄を言わない方が良い。

 他人の口から広がった噂の方が、大げさになるものだ。

 何より『その方が格好良い』だろう?


「あまり目立たないように。あなたとユークリットさんの魔法は貴族や士族に目を付けられると困った事になります。彼らに死ぬまでこき使われますよ?」

「ユークリットにも同じ事を言ったのか?」

「はい。あのヒトは臆病者ですから心配ありませんが、あなたは目立ちたがりのようですから、少し心配ですね。」

「心配には及びませんよ。オレは世界を救う英雄ですからね!」

「そういうところが心配なのですが……一応警告はしました。あとは自己責任で。」



 想像した賛辞とは違うが、噂が広まっている事だけは確認出来た。

 こいつも別に異世界嫁候補には入っていないからどう思われても関係ない。

 まああれだ。

 アニメファンならほぼ誰でも知っている有名な言葉を借りればオレのハーレムはこうだ。

「日本出身、ネモ。ただの人間には興味ありません。この中に天使、魔族、獣人、ロボ子がいたら、オレのところに来なさい。以上。」

 と言ったところだな。

 魔女っ娘の嫁はブラックたんとホワイトたんが居るから既に枠が埋まっている。


 そんな事を考えながらだったからか、自然にネクタイとブーメランパンツを同時に脱ぎ始めてしまった。

 ユークリットの野郎がいつか言っていたっけ「全裸族にこの世界は厳しい」と……

 一度に2つ脱ごうとしたのが失敗だった……

 しかも相手はシーリンだ。

 こいつは下半身丸出しに対しても厳しい事を忘れていた。

 ネクタイを外すのまでは静観していたシーリンが、ブーメランパンツに手を掛けて半分下ろしたところで、オレの息子を人質に取りやがった。



 オレの息子は今、笑顔のシーリンに小剣を突き付けられて選択を強いられている。


「あなたがこれ以上下着を下げるのならば、わたしもこの剣を同じだけ下げますよ?」


 シーリンは笑顔のまま小剣をオレの息子の接続部へとピタリと寸止めされた。

 オレはブーメランパンツを元の位置に戻して、息子をシーリンからかくまった。

 パンツを下ろす動きの最中でピタリと寸止めをした事も凄い。

 パンツを元に戻すまで寸分の狂いも無く追尾してきたのも見事な腕前だ。



「あなたといい、ユークリットといい、あなたがたの国はわたし達よりも立派な服を仕立てているというのに、裸族しか居ない蛮族ですか?あなたがたが特殊なのですか?」

「オレをあいつと一緒にされては困る。今は洗濯をしようとしているから外しているが、オレは最後の一枚のネクタイをヒト前では外さないと決めている。きちんとネクタイを洗い、締めなおしてから、パンツを脱ぐべきだったと今は後悔しているから許してくれ。」

「時々ですが、あなたがたとは言葉が通じない事は理解しました。二度とヒト前で全裸にならないように注意して下さい。」


 シーリンは小剣を納めて、裏庭を出て行った。

 オレは安心して洗濯の続きを始めた。

 この背広が高性能と言っても毎日着ている訳にはいかない。

 先日フィーナ様がオレの為に用意してくれた、異世界仕様の背広が早く届いて欲しい。



 洗濯が終わった所で、せっかくの全裸だ。

 いつもは夜人知れず夜にやっている汗を流す行為を洗濯場で行う。

 戦争で血と埃で汚れた体を綺麗にしたかった。

 朝早い為かいつもよりは水が冷たかった。

 シーリンに「全裸は駄目だ」と言われたので仕方なくネクタイとブーメランパンツを乾かないまま着て部屋へと戻った。



 オレは部屋に戻るとブラックたんとホワイトたんの2人をベットに誘ってそのまま寝た。

 2人と何もせずにただ添い寝するのは久し振りだ。

 日が昇っている事もあるかも知れないが、2人を両脇に抱えただけで寝る事にした。


 寝る前に病室で見たあいつの姿を思い出す。

 シャイニング・ルナルナとベスと言う生意気な子供ガキを両脇に抱えていやがった。

 オレの嫁達には負けるが、羨ましい光景だった。

 昨夜になしたオレの活躍を嫁2人にだけは聞かせながら、いつの間にか眠りに落ちていた。



 オレが起きたのは夕方だった。

 オレは自分のやるべき仕事を放り投げていた事を思い出した。

 病室のアルフィアに朝飯と昼飯の事を謝りに行く。



 アルフィアは「初陣だからね。緊張していたから仕方ないよ。マリーが食事は持ってきてくれたから心配しないで」と許してくれて「明日からはまた運動の手伝いをよろしく」と言う。

 オレは彼女の優しさに感謝をして「明日から再びよろしく」と答えた。


 アルフィアに夕飯の事を聞くと「あたしの分も取ってきて」との事だったので食堂へ2人分の夕飯を取りに行く。




 夕飯を取りに行った食堂で、あいつとホルスとドカチーニが見た事も無い杖を突いたおっさんと4人で深刻な顔をしながら何かを話していたのがオレの目に入ってきた。

 ここまで私の拙い妄想しょうせつを読んで下さりありがとうございます。


 文字数も30万文字を越え、ここまで読んで下さった読者様には感謝の気持ちで一杯です。


 本題です。

 本編は今回で一応の区切りとさせて頂きます。

 次回エピソードの完成は間違いなく今週中には出来そうもありません。

 番外編が続く事になると思いますが、毎日更新を続ける事だけは頑張ろうと思います。


 番外編の更新時間は20:00で行かせて欲しいと思います。


 時間を過ぎての更新になる事もあると思いますが、その時はご容赦下さい。



 いつもと同じ挨拶にはなりますが、

 毎日更新する度にアクセスして下さる読者様、

 余暇が出来た時に一気読みして下さる読者様、

 タイトルとあらすじに釣られて試し読みされる方、

 全てのアクセスして下さる皆様に『やる気』燃料をいただいての毎日更新です。

 皆様の日頃よりのアクセスを本当に感謝しております。


 

 色々と足りない未熟者ですが、今後も末永くお付き合いを頂ければ幸いです。

                            2018/10/31 何遊亭万年

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