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銀色の月の満月の夜・衛兵達の戦争前編(ネモ視点)

今回からしばらくは『ネモ』が主人公です。

 オレがこの世界に来てから3週間ほど経った。

 オレを追って嫁達がこの世界に来ていなかったら……いや考える必要は無いな。

 オレの嫁達は必ずオレを追って世界だって越える。

 3人が一緒に居る事は必然なのだ。


 これからオレは生まれて初めて本物のいくさへと向かう。

 何度も訓練ゲームは繰り返してきた。

 戦闘訓練アクションゲームだけでも1000時間は越えるだろう。

 それでも戦場では何が起こるか分からない。

 嫁達の為にも必ず生きて戻ると誓っての出発だ。


 どうしてオレが戦に出ないといけないのか。

 話は数日前に戻る。



………………



 4日程前、ユークリットの奴がハーレムパーティーよろしく女性を4人もはべらせてオレと廊下をすれ違う。


 許せない。


 オレはあいつを許せない。



 オレより先にあいつには『異世界無双』も『異世界ハーレム』も作らせはしない!



 しかもなんだ、あの巨乳獣人は!?

 正にオレの異世界ハーレム要員候補では無いか!!

 獣耳では無いものの白黒ツートンカラーのポニーテールに角と尻尾だと?

 完全に牛の獣人だ。

 しかも三次元では見た事も無いような引き締まった体に不釣り合いな巨乳!


 オレはこのままあいつを許す訳にはいかない!


 病室で血の涙を流しながら、アルフィアのリハビリを手伝う。

 いつもは彼女とを持たせる為に、俺の嫁達の素晴らしさを語っているのだが、今日はあいつへの仕打ちを考える事で頭が一杯だ。



 無言のリハビリが続く。



 そこへマリーがやってきて「フィーナ様が呼んでいるので診療所へ来るように」とオレへ言うと診療所へと1人で先に帰って行く。



 アルフィアに一言断ってから、診療所へと向かう。

 診療所の客は片付いたようで、フィーナ様もマリーも今日の後片付けをしているようだ。

 フィーナ様はオレが来るのを見ると片付けを中断してオレと話を始めた。


 この場で、一応オレの主人となっているフィーナ様からオレへの内示があった。

 敬称で『様』まで付けているのはオレの立場が彼女の執事だからだ。

 オレは自分が尊敬出来る人間にしか仕事以外で、敬称を付ける事も敬語を話す気も無い。

 だが、このフィーナさんは上司としても個人としても尊敬に値する人物だ。



「今度の銀色の月の満月の夜ではあなたをあたしの副官として連れて行きます。隊員はあたしとあなたを除いて十人になるわ。」

「オレは何をすれば良いのでしょうか?」

「そうね。あなたの立場は衛士補。衛士と衛兵を結ぶ役割ね。衛士としての特権は無いけれど衛兵を指揮する立場になるわ。」

「質問をしてもよろしいですか?」

「どうぞ。」

「今度の銀色の月の満月の夜とは何の事でしょうか?聞いた限りの判断では戦争でもするような雰囲気ですが?」

「もしかして、あなたもユークリットと同じで常識記憶喪失なの?」

「あいつと一緒にされたくは無いですが、オレがこの世界の常識を知らない事は本当です。」

「そう。それじゃ、そこから話すわね。」



 色々と説明を受けたが、要約すると「他の月から侵略者が攻めてくるから街を護るのよ」って事だ。

 フィーナ様は貴族なので、衛士としての義務があり、オレを含めて15歳を越えた成人は基本的に徴兵されて街の防衛に就く。

 俺達の隊の役割は、城壁内での補給や怪我人の保護で直接の戦闘は滅多に無いそうだ。

 彼女は、マリーが未成年で徴兵の義務は無いので、オレを副官にしたのだな。


「あなた以外は全て女性の隊員になるから、男女の問題だけは起こさないでね?」

「そこは心配しないで下さい。オレは魔法使いを目指していますから。」

「あなたに魔法使いは……まぁ良いわ。自分の能力を信じる事は魔法使いにとって必須と言える素質の一つだしね。頑張りなさい。」

「あと2年もしないうちに立派な魔法使いになりますよ。」

「期待はしないで待っているわ。満月の夜までに自分の支度は整えておいてね。悪いけど、あたしには今お金が無いの。あなたは自分で装備を用意してね。用意出来ない時は衛兵と同じ装備で勘弁して頂戴ね。」



 さて、オレは何を用意すれば良いのだろう?

 とりあえず、アルフィアのリハビリをしながら聞いてみるか。

 ユークリットに聞くのは、抵抗があるしな!



「アルフィア。銀色の月の満月の夜って、何を用意したら良いんだ?」

「あなた、冒険者だったの?」

「いや、オレはフィーナ様の衛士補として徴兵されるらしい。」

「衛士補……意外と大変らしいわ。衛兵からは目の敵にされて、衛士からは見下される。」

「ほう。オレにピッタリの立場だな。その逆境の中でこそオレは輝く!!」

「ふふっ。あなた、本当におかしいわ。今までにあたしが見た事の無い男だわ。」

「そうだろう。オレは裏の魔王を倒す男だからな!だがお前を嫁に加える気はないぞ?」

「安心して。あたしもあなたの嫁に加わる気は無いから。必要な物ね……城壁の中での仕事みたいだし、最低限の装備で良いかしら?衛兵なら衛士様が武器や鎧は用意してくれるわ。」

「衛士補は?」

「フィーナ先生は何て言っているの?」

「自分で用意しろって。出来ない時は衛兵と同じになるって言ってたか?」

「それなら出来るだけ自分で用意しないと駄目ね。あなたは武器も防具も無いのよね?全滅したあたしの隊の装備であなたに合う物があると良いのだけど……」

「くれるのか?」

「貸すだけよ。あたしの怪我が治るまで荷物はまとめて斡旋屋で預かってくれているらしいから、後の事は斡旋屋のヒトに聞いてみてね。」

「ありがとう。何を借りても良いのか?」

「とりあえずね。今のあたしには必要ない物ばかりだから。その代わりにあなたがあたしに借りた物を返しに来る事。」

「必ず返すから信用してくれ。」

「ええ。必ずよ?」



 アルフィアとオレの夕飯を取りに行った時に、受付に居るシーリンにアルフィアの所持する装備を見せてくれるよう頼んだ。

 彼女は「明日の午前中、斡旋の仕事が終わった後に見せるので待って下さい」と答えた。

 オレは病室へ食事を運び、アルフィアと食事を取り、食器の後片付けをして仕事を終える。


 アルフィアとの契約は1日2朱。

 だが月末払いだ。

 今、俺の手元には正確には数える気もないがバラの銭で300文程度。

 日常で掛かる最低限の銭はアルフィアが面倒を見てくれているが、正直生活に余裕は無い。


 だが、潤いはある。

 オレは自室の扉を開けて嫁達に帰宅の挨拶をする。

 職場との距離の近さも最高だな!

 オレは自分の趣味にかねを使い、日本での住居は節約して交通の便が悪い所だった。

 通勤時間が無い事がこれほど良い事だとは思わなかったな。

 長い時間、嫁達と一緒にいられる。



 夜、人知れず洗濯場の溜池で身を清めた後、嫁達と濃厚な夜のコミュニケーションを取る。

 2人に差は付けない。

 必ず同じだけのコミュニケーションを取る。

 その後、嫁達に完璧なメンテナンスをほどこしポーズを決めてオレの一日は終わる。



 翌日、シーリンは約束通りアルフィアの予備の装備を裏庭に用意してくれた。

 アルフィアの小隊は前回の満月の夜に全滅したらしい。

 彼女は唯一の生き残りだと言っていた。


 今、ここに並んでいる装備は死んだ者達が残した余りの装備ともいえる。

 新月を迎えて正式にアルフィアの物となった装備。

 オレは死人の装備と聞いて少し抵抗を感じるが、装備が何も無いよりは余程良い。

 数は少ないが幾つかの選択肢だってある。

 病室の木戸越しにアルフィアと一緒にオレの装備を選んでいく。



 胴を護る鎧はすぐに鎖帷子チェインメイルに決まった。

 これならば前を開けたままになるが背広の下に着る事が出来る。

 オレの体には、少し丈が短く、胴回りが大きくなる。

 だが借り物なのだから仕方あるまい。


 問題はネクタイを鎖帷子の上に付けるか、下に付けるかだが、下に付けると全く見えなくなるから、上に付ける事にしよう。

 ネクタイは見えていなければ意味が無いからな!


 試しに着てみたが、そんなに悪くないと思う。

 鎖帷子の鈍い金属製の光にネクタイと背広が意外と映えそうだ。

 鏡が無いので直接自分の姿を見る事が出来ないのが残念だが。


 問題は鎖帷子の重さだな。

 オレが想像していた重さよりもかなりの重い。

 オレには、これだけで防具は精一杯だな。

 「頭を護る防具も付けた方が良い」と忠告をもらったが、鎖帷子にフードが付いているし、いざとなったらこれを使おう。

 髪の毛が絡まりそうだから、本当にいざと言う時だけだ。


 他にオレの目に留まったのは、革製の編み上げブーツ。

 このひざ下まであるこのブーツはとにかく格好良い。

 なによりデザインが気に入った。

 足のサイズもオレにピッタリという事が運命を感じる。

 アルフィアとシーリンが「やめた方が良い」と色々説明をしているが、オレは忠告を聞く気は全く無かった。


 これはまさに運命!

 良い武具と良い使い手はお互い逢うべくして逢うのだ。

 セットになったデザインと思われる革手袋も一緒に装備する事にした。



 残りは武器だが、オレの中では既に決まっている。

 勇者ならば長剣ロングソード以外に有り得ない。

 用意された武器も様々あるが、長剣の種類が一番多かった。

 数ある長剣の中から、さやつか等の装飾が一番格好良い細身の長剣を選ぶ。


 まずは実物の長剣の重さに驚いた。

 細身といえど構え続けるだけでオレには結構大変だ。

 一度、試し振りをしてみる。

 重くて上手く振る事も出来ない。


 オレは「今は使う必要が無いから重いのだ。必要になれば羽のように軽くなりオレの最高の相棒になる」と、この長剣との出会いにも運命を強く感じる。

 オレがこの格好良い長剣で敵を切り裂くイメージが脳内で再生される。

 完璧だ。

 俺の装備はこれで決まりだな!!



 アルフィアとシーリンは他にも何か言いたそうだが、2人が口に出した言葉はこうだ。

「見栄えは良いけどね。実戦的では無いわ。」

「衛士補は見栄えも大切ですから、無難な選択だと思います。後の事は全て自己責任でお願いします。」

 2人の言葉も気になるが、装備を体に馴染ませる為に、オレは今日から満月の夜まで、この装備のまま生活する事にした。



 見物だったのはユークリットが帰ってきた時の悔しそうな顔だ。

 オレの装備を見たあいつは確実に悔しがっている。

 オレとあいつとの装備を比べれば、装備の差は歴然だ。

 RPG風に装備を比較しよう。


 オレの装備

  武器:格好良い細身の長剣

   盾:無し

   頭:鎖帷子(フード部分)

   胴:鎖帷子

   腰:至高のベルト

   腕:格好良い革手袋

   脚:至高のトラウザーズ(ズボンの事)&格好良い革製編み上げブーツ

  外套:至高の背広

  装飾:至高のネクタイ


 あいつの装備

  武器:投げ槍

   盾:無し

   頭:無し

   胴:黒いだけの貫頭衣

   腰:ベルトポーチ

   腕:左腕だけ金属鎧(ここだけはあいつの方が格好良いのが悔しい)

   脚:草鞋

  外套:ベットに使われている白いシーツを巻いただけ

  装飾:なし


 あいつの左腕鎧は格好良い事を認めるが、俺とは全く比較にならん装備だな。

 満月の夜が今から楽しみだ。




 オレのハーレムを作る為の無双がこのいくさから始まるのだからな!

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