番外編8:フィーナとマリーの出会い
番外編は基本一話完結になっております。
毎日更新を続けた時の名残ですが楽しんで頂けたら幸いです。
この話は少しだけ過去の話。
フィーナとマリーの出会いの話。
幼きメイド長マリーの話。
はじめまして。
私の名前は『マリー』と申します。
現在十二歳と言う若輩者ですが、フィーナ・フォン・ヤンゼン様のメイド長です。
奥様にメイドは私一人しか居ませんが。
最近、私達の生活に大きな変化が生まれました。
奥様が貴族として独立されヤンゼン家を抜けたのです。
私は代々ヤンゼン家に属するメイドですのでお役御免と思いましたが、そのまま奥様……
そうでした。
もう『奥様』と呼んではいけないのでした。
そのままフィーナ様のメイドとして私もヤンゼン家から独立させてもらえました。
私とフィーナ様との出会いは四年前になります。
今回の話はフィーナ様と私の出会いの話です。
前当主の喪が明ける最後の年。
挨拶のためフィーナ様がヤンゼン家の本家へお越しになった時です。
当時、使用人の長屋暮らしだった私は八歳。
その年は両親が病気に掛かり亡くなった年でもありました。
当時ヤンゼン家では流行り病が蔓延しておりました。
私の両親も流行り病が原因で亡くなっています。
稀代の回復魔法の使い手として名を馳せていたフィーナ様は挨拶と言う名目で隠居先の村から本家に呼び出されたのです。
ヤンゼン家の方針で「大名の一族、及びそれに連なる高級家臣団のみを治せば良い」と言われたようでしたが、フィーナ様はその言葉に反論を唱えました。
「流行り病は最後の一人まで治さないとおさまらないわ。最後の一人まで全ての領民を治します」
と当主におっしゃったそうです。
事実、フィーナ様は三ヵ月の間、ヤンゼン家領地の村々を滞在してまわり流行り病を根治しました。
治しても治しても他のヒトへとうつるので、最後の一人を治す頃には村々を五周はしたと言われています。
そんな立派な所業を成し遂げたフィーナ様もヤンゼン家では『平民の妾』であり、地位はかなり低いものです。
流行り病を治した後、フィーナ様は私達と変わりがない使用人達が住む長屋で共に暮らしていました。
誰にでもへだたり無く接するフィーナ様に長屋の皆が魅了されていきました。
長屋暮らしを本当に楽しまれているフィーナ様。
本来ならばメイド達に囲まれて優雅な暮らしをしていてもおかしくないヒトです。
そんなヒトが私財を投げ売って私達孤児の面倒まで見てくれているのです。
そんなフィーナ様に転機が訪れます。
キヨウの都に居る帝からのフィーナ様に直接の呼び出し状が届きました。
フィーナ様に対するヤンゼン家の対応がまるっきり変わります。
フィーナ様は本家へと転居させられて二度と長屋には戻ってきませんでした。
その後は噂話でフィーナ様の事を聞くようになります。
「キヨウの都から帰ると貴族の位を得てフィーナ・ヤンゼン様からフィーナ・フォン・ヤンゼン様となっていた」とか「帝相手に爵位も領地も要らないから孤児を救ってくれ」と言ったとか「普段笑わない帝を大笑いさせて、爵位の返上は認めないが、領地の孤児の面倒を帝の名において命じられた」とか、どこからが真実でどこまでが嘘なのか分からないような噂ばかりです。
その噂が真実の事だとすぐに知れ渡ります。
皇室の印を掲げた孤児院が作られ「十五年の間、全ての孤児を無償で面倒見る」とヤンゼン家全ての領民に宣言されたのです。
私もその孤児院に入る事になりました。
孤児院の食事や寝床はフィーナ様と一緒に暮らしている時よりも良くなりました。
それでも子供達は私も含めて『貧しくてもフィーナ様と一緒に暮らしていた時代が良かった』と思っていたようです。
皆がフィーナ様との暮らしを望みました。
しかしフィーナ様はいつまで経っても孤児院に現れません。
フィーナ様は孤児院と切り離されて本家へと軟禁されていると噂されるようになりました。
しばらくすると孤児院の食事も衛生状態も目に見えて悪くなってきます。
管理人と言われる大人達が子供を殴りつけて言う事を聞かせる所になりました。
職業訓練と言う名の強制労働をしいられて、起きている間はずっと働かされるようになりました。
孤児院から逃げ出す子供達が増え、どんどんヒトが居なくなりました。
最後まで残っていた孤児はフィーナ様と暮らしていた子供だけになりました。
「おれ達だけでも最後まで頑張ろう。」
最年長の男の子がそう言って皆を励まして頑張りましたが『フィーナ様が行方不明』という噂が孤児院まで届いた時、皆の心が折れました。
皆居なくなりました。
残ったのは私一人となった今、起きている間は職業訓練と言う名の強制労働から、起きている間は折檻へと変わりました。
起きている間、代わる代わる大人が現れて私を蹴ったり殴ったりしていきます。
寝る時間も無いほどに、いつでも大人は現れて私を折檻していきます。
『もうだめだ。私は死ぬんだ……』
と私があきらめた時に、フィーナ様が帝の勅使を伴って現れました。
私を相手に「ごめんね。遅くなってごめんね。マリーよく頑張ったわね。遅くなったお詫びに何でも一つあなたの言う事を聞くわ。どんな事でもよ!」と泣きながら私を抱きしめて回復魔法を掛けてくれました。
その後、管理人達の不正が裁かれて、帝の勅使が直々に孤児院を運営する事となり、孤児院は元に戻りました。
子供達もフィーナ様が、自らの足で領地を歩いて探し、説得をして戻ってきました。
フィーナ様が前当主の妾としての喪が明け、一段落ついて平穏が訪れたと思った時に『十五年の領外追放』と言う刑に処されました。
数々の関所破りの罪との事です。
温情として「スーンプ城下に別邸を与える」との事ですが、孤児達が大人になるまでは領内に戻ってこれないという事です。
私はフィーナ様に「フィーナ様のメイドにして貰う」事にしました。
ヤンゼン家の方では九歳の私はメイドとして役に立たないのですぐに承諾してくれます。
ですがフィーナ様が、幼い私をメイドとする事に良い顔をしませんでした。
私は「何でも一つ言う事を聞いてくれる」と言う言葉を盾に取りました。
フィーナ様は「あらあら。あたしの為にその約束を使ってくれるの?」と喜んでくれました。
その後、三年の間、私は小さな別邸で幸せな暮らしをフィーナ様と過ごしました。
ドカチーニ率いる野蛮人達が現れるまでは!!




