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斡旋屋の新たな住人(シーリン視点)

今回でシーリン主人公が終わります。

 朝日が昇ってからの一刻(約2時間)がわたしにとって一番忙しい時間ですが、昼休みの半刻(約1時間)がわたしにとって一番辛い時間です。


 毎日食事に来て下さる常連様には感謝しかありませんが、毎日同じ自慢話を続けるのはどうかと思います。

 街の中の仕事は毎日代わり映えが無いので仕方の無い事とは思います。

 冒険者ならば毎日違った体験談を話す事が出来るのでしょうが。


 それでも今日は前回の銀の月の満月で衛兵として活躍したことを話すヒトが多く、いつもよりは退屈していません。

 満月の夜は、わたし達冒険者に冒険者の戦いがあったように、衛兵にも衛兵の戦いがあります。

 今は自分がいかに活躍したかの話がふくらむ時期であり、立てた手柄は日毎に大きくなり、毎日話が大きくかわって行きます。


 わたしにとっては、どこまで本当かは問題では無く、話が楽しいかどうかが重要です。

 一週間もすると話が固定してしまうので再び退屈の日々となってしまうのですが。


 本来ならば話す度に手柄が大きくふくらんでいくのを楽しむ時期なのですが、食堂の四人掛けの食卓へ座り楽し気に笑い声をあげている、館長の声へ耳が傾いてしまいます。

 どうにも気が落ち着かない為、お客様の話を聞き、笑顔を保つ事がいつもより大変困難です。



 落ち着かない自分の気持ちを笑顔で隠しながら接客をしていると、昼間でも薄暗い廊下の奥から、莫迦ばかが裸で駆けてきます。

 魔壁蝨まだにを取るために余分な毛を剃ったので、男性の急所も丸出しで、見苦しさが増しているユークリットです。



 八つ当たりを兼ねて木製のお盆を彼の急所へと投げつけました。

 そんな時でも、お客様への笑顔は忘れません。


「それで汚いものを隠しなさい」


 この距離でわたしが狙いを外す事はありません。

 目標は完全に沈黙しました。


 館長が席から立ち上がり汚物を店の外に引きずり出してくれます。

 館長をフィーナさんから引き離す事が出来て、これがまさに一盆二鳥というやつですね。

 気が散ることなく、お客様達の自慢話も楽しく聞けるようになりました。



 店の中にまで聞こえてくる館長の怒号が聞こえなくなると、ベルガーにお礼をしている、ユークリットの声が聞こえてきます。

 再び食堂へと生まれた姿で現れた彼を見てあぜんとしてしまいました。

 『ユークリットは一体何を考えているのですか?今は食事時なのですよ!』

 ふつふつと怒りが込み上げて来るのが自分でも分かりますが、笑顔、笑顔です。


 ベスとアンの二人も目を覆って汚いものを見ないようにしています。

 再び彼へとお盆を投げつけます。

 寸分の違いも無くむき出しの弱点へと命中させ、目標の撃沈を確認しました。


「それで汚いものを隠しなさい」


 八つ当たりを兼ねているのでいつもより声音が鋭くなってしまいましたが、気持ちが幾分かすっきりしたので、先程よりも自然な笑顔をユークリットに返す事が出来ました。


 毎日常連客に鍛え上げられて、何も考えなくても、わたしはいつでも笑顔でいられます。

 再び館長に店の外へと引きずり出されたユークリットを見て、更に気持ちがすっきりしました。



 次に店に入ってきたユークリットは館長の服を着ていました。

 わたしが今朝『心を込めて』洗った黒の貫頭衣です。

 館長がユークリットの事を気に入っている事は、自分のお古を次々と渡している事から察していましたが自分の服まで与えるとは。

 『………優秀な暗殺者は殺された事すら相手に気づかれない者……』

 殺気へまで高まりそうな怒りの感情に笑顔でふたをして気の無いふり。



 わたしが殺気の隠ぺいを完璧に行っている最中、店内ではベスとアン、ユークリットの三人が抱き合っています。

 子供のベスが涙声で、心配した事を告げる事から始まって、今後の要求、最後に安心した事を鼻をすすりながら告げる姿を常連客の皆さんも微笑ましい空気で見守りました。



 大団円を迎え、そこかしこで、何かに祝福をして乾杯が始まります。


「次の航海の無事を祈って乾杯!」

「今日の仕事が早く終わる事を祈って乾杯!」

「シーリンちゃんが行き遅れている事に乾杯!」

「俺の嫁に子供が出来た事に乾杯!」

「昼から酒を飲む事に乾杯!」


 何か聞き捨てならない乾杯の音頭が聞こえましたが、笑顔で受け流します。 

 お盆を両手に次々と注文が入る酒を配って回ります。


 そんな空気の中ですが、わたしはユークリットの鈍さに怒りの感情を高めていました。


 どうして、二人が身綺麗になっている事に気が付かないのでしょうか?

 二人とも昨日とは別人のように綺麗になっているはずです。



 ユークリットは、ベスとアンの二人を元の席へ座らせると、フィーナさんに謝礼と挨拶を始めました。


「フィーナさんはじめまして。ユークリットといいます。この度は命を助けて頂きお礼のしようもありません。このご恩に報いることが出来るよう尽力いたします」

「あらあら。丁寧な挨拶をありがとう。あたしの名前はフィーナ。しがない治療師よ。ドカチーニとシーリンの両親とは古い友人でもあるわ。あたしには子供が居ないの。恩に報いてくれるのなら、シーリンちゃんと結婚してあたしの養子になってくれるかしら?」



 食堂から喧騒おとが消えました。

 わたしの思考も止まるほどの衝撃です。



 先程までの微笑ましい空気はどこに消えたのでしょうか?

 完全に殺伐とした戦場のような空気になっています。

 常連客様の中には武器の鯉口を切って威嚇するヒトまでいます。

 さすがに武器を抜くようならば止めなければいけませんが、その必要性は無さそうです。


「その事に応じると命を幾つ必要とするか勘定が付かないので他の事でお返しします」

「あら。残念ね。あたしとしては是非お願いしたかったのだけど」

「すみません。本当に勘弁して下さい!」


 ユークリットが周囲の異変に気が付いて答えることで空気が少し和らぎました。

 自分にも関わってきそうなのでフィーナさんの言葉に聞き耳を立てる事にします。


「それならば、あたしの引っ越しを手伝っていただこうかしら?」

「そんな事でよろしければいつでも声を掛けて下さい。一番に駆けつけます」

「どこかに引っ越すのか?」


 二人の会話に館長も加わります。


「あらあら。今日ここに来る途中であなたとは話をしていたでしょう? 治療院を始めるのよ? あなたもみんな喜ぶって言ってくれたじゃない?」

「あれ本気だったのか?」

「あたしはいつだって本気よ? さあユークリット手伝って。最低限の必要な荷物を運ぶわ」

「ここにはお前が住めるような立派な部屋はないぞ?」

「先程訪問したユークリットと同じような部屋が二部屋あれば平気よ。一つは私室で一つは診療所ね。出来れば重症患者を寝かせて置ける部屋もいただけたら最高なんだけど?」


 館長が右手で顔の下半分を覆いながら答えます。

 あれは嬉しさを隠し切れない行為です。

 にやける口元を隠しています。


「分かった。なるべく要望に答える。昼の客がはけたら皆で引っ越しの手伝いに行く。俺は段取り付けてくるからな。シーリン。後は頼んだぞ」



 ………………



 長い回想になりましたが、先程の館長とフィーナさんの言葉を聞く限り、彼女が引っ越して来る事は決定事項のようです。

 昼休みの客がはけ次第、引っ越し受け入れの準備をしないといけません。

 館長に後を任されたのですから手を抜く事は出来ません。

 わたしのするべきは斡旋屋側の受け入れ準備ですね。



 昼食の時間が終わりお客様が居なくなると、普段はベルガーと二人で食器の洗い物や食堂の掃除をするのですが、今日は彼一人に任せます。


 まずは空き部屋の状況から考えましょう。

 今、二階の空き部屋は確定が一つ。

 次の新月に空く予定が四つ。

 空く予定である四部屋の住人には帰ってきてもらいたいですが、満月の夜からこれだけ経っても帰ってこないようであればやはり全滅したと考えるべきでしょう。

 引っ越し先に二階は無しですね。

 基本冒険者達の物置時々寝所ですし、入居者以外の管理は冒険者同士でやる事になっている所です。

 正直手を出したくありません。


 やはり一階ですね。

 現在の部屋の配置状況はこうなっていたと記憶しています。

 海側手前の部屋からシーリン自室・空・空・空・空・ユークリット達三人部屋。

 陸側手前の部屋から、館長・ベルガー・空・空・空・物置。

 本来一階は斡旋屋関係者の部屋とする予定でしたが、館長が気に入らなければすぐに追い出すので決まった従業員が居つきません。


 何とか居ついたのはベルガーだけです。

 館長はユークリット達が気に入ったようなので多分これからも居つくでしょう。

 フィーナさんも館長自ら引っ越しの準備に出掛けて行くくらいです。

 居つくのは間違いありませんね。

 そうと決めてフィーナさんと相談して詳細をつめましょう。



 わたしがフィーナさんの座る四人掛けの机で引っ越しの相談を始めるとベスとアンは「廊下を歩いてきます」と言って席を立ちました。

 本当に真面目な二人です。

 ユークリットの言う事を聞いて昼の間は常に廊下を歩き続けています。


「フィーナさん。引っ越し先の事なのですが、現在海側の部屋が四部屋。陸側の部屋が三部屋空いていますがどこにしますか?」

「あらあら。結構空き部屋があるのね? そうねぇ。あたし達の私室に海側を一部屋。診療室は陸側で良いわ。後は回復魔法を掛けてもいきなり動けないヒトの為に空いている部屋を適時貸して下さらないかしら」

「あたし達の私室と言うのは二人部屋と言う事でしょうか?」


 まさか『館長と一緒の部屋』などと言わないですよね?


「そうよ。あたしに使用人が一人居るの。今住んでいるお屋敷はヤンゼン家へお返しするからその娘の居場所が無くなってしまうの。一緒に連れてきてはだめかしら?」


 その言葉にわたしは安心しました。


「それでしたらもう一部屋増やしましょうか?」

「それには及ばないわ。あたしはこれを機にヤンゼン家と縁を切る予定だから収入が少なくなるの。一部屋千文、賄い一人二千文よね? 貴族年金で一ヶ月一両いただくとしても予算的に二部屋が限界なの。残りのお金は重症患者が出た時の家賃に少しでも取っておきたいわ」


 その後、食堂を掃除中のベルガーも加えて部屋の配置換えの相談です。

 診療所は入口近くが良い。

 ベルガーは陸側が良い。

 ユークリットの「部屋が焦げているので移動したい」と言う要望は却下。



 館長には無断ですが、部屋の配置はこのように変わりました。

 海側手前から、シーリン自室・館長・空・空・フィーナ達私室・ユークリット達三人部屋。

 陸側手前から、診療所・ベルガー・空・空・空・物置となりました。

 ユークリットを使ってフィーナさんの私室に他の空き部屋から寝台を移動し、二つ並べると引っ越しの受け入れ準備は完了です。

 暇があれば空き室の掃除をしていたため、特に問題なく受け入れ準備は終わりました。

 館長が帰ってきたら部屋の移動をお願いしましょう。



 館長が馬付きで荷車を借りて斡旋屋に帰ってくると、部屋の移動を告げます。

 館長は二つ返事で了承してくださいました。

 ベルガーを留守番に置いて、ヤンゼン家別邸へと向かいます。



 御者が館長、隣にフィーナさん、荷台にわたしとユークリットを乗せて荷車が行きます。

 御者台に乗る二人が楽しそうにお互いが分かれて暮らした二十五年間の話をしています。

 館長の話題はわたしの事が中心です。

 顔が赤くならないように注意しながら耳を傾けます。

 ユークリットが邪魔……話し掛けて来ようとする度に魔壁蝨まだにを見る目で制して黙らせます。

 そんな時でも笑顔は忘れません。

 わたしの仕事は客商売です。

 常に笑顔を絶やさない事は大切な約束でもあります。

 それにわたしの笑顔はユークリットを黙らせるのにはとても効果があるようです。



 別邸に近づくと、十二、三歳くらいでしょうか?

 成人するには少し幼いと思われるメイド服を着た少女が「奥様奥様どこにいらっしゃるんですか」と大声を上げながら駆けまわっているのを見ました。

 フィーナさんが館長に荷車を止めさせてメイド服を着た少女を迎えに行きます。

 余談ですが、ドレスもメイド服も神に祝福された衣服であり、ドレスは貴族、メイド服は貴族に仕える者にしか着る事が許されていない服です。


 マリーと紹介されたメイド服を着た娘は、フィーナさんに言われてしぶしぶ挨拶をすると、御者台のフィーナさんの隣に陣取り、わたし達と会話をする事はありませんでした。



 貴族の別邸と聞いていましたが、とても質素な平屋の家でした。

 庭には色とりどりの綺麗な花が咲き乱れています。

 どれほどの引っ越しになるのかとのわたしの心配をよそに、半刻と掛からずに準備を終えた二人の荷物は皮の鞄を一つずつ持ってきただけというものでした。


「あなた達も連れて行ってあげたいのだけどごめんなさいね」


 庭の花にフィーナさんが別れの挨拶をして引っ越しの準備が終わりました。



 わたしは館長、フィーナさん、マリーさんには歩いて斡旋屋へと帰ってもらい馬付き荷車とユークリットを置いていってもらいました。

 花に別れの挨拶をするフィーナさんに少し心を動かされました。


 庭の物置を探せばきっと堀棒シャベルが出てきます。

 これを使えば、本当の引っ越しが出来そうです。

 斡旋屋の裏庭に比べればこの庭は猫の額のようなものです。

 全ての花を連れて行ってあげましょう。


 予想通りに物置で堀棒を発見しました。

 堀棒をユークリットに渡しながら笑顔で命令おねがいします。

「この庭の花を全て斡旋屋の庭に移動しましょう」

「この庭全てですか?」

「ええ。根を傷めないように深く掘ってくださいね?」

「今日中に出来るかどうか……」

「魔力が足りなくなったら補充しますから心配しないで良いですよ?」

「イエス! マム!」


 最後に何を言ったのかは分かりませんが、仕事を始めてくれました。

 小声で「こいつは良いとれいにんぐだぜ明日の俺は今日より強い」と何度も繰り返しつぶやきながらひたすら掘り進めてくれます。

 意外にも丁寧な仕事で、根を傷めないように花から離れた位置を注意して、掘ってくれます。

 わたしは彼が掘り出した花を、荷車の奥から丁寧に並べていきます。

 日が傾き始めて西の空がほのかに赤く染まる頃、全ての花を荷車に積めました。



 ユークリットは「御者が出来ない」と言うのでわたしがやりました。

 使える事と使えない事の差が激しい男です。

 彼には斡旋屋に帰るまではゆっくりと休憩を取っていてもらいましょう。

 次は花を植え、その後にたっぷり水をあげる作業が待っているのですから。



 斡旋屋に帰り、普段は閉じている裏庭への搬入路を開けるようベルガーに頼みます。

 裏庭への搬入路は野外倉庫の中を通る形になっており、その野外倉庫の中には氷室として使っている土蔵があり、二重構造の建物となっています。


 野外倉庫の中は屋外と比べるととても涼しくユークリットは初めて入ったようで「涼しいですね。暑い時に涼みに来て良いですか?」などと聞いてくるので「駄目です」と一言笑顔で答えておきました。

 他のヒト達と違って、どうやらユークリットはわたしの笑顔が苦手なようです。

 ここ数日は何度も思うのですよね。

 彼はわたしの笑顔が苦手だと。

 再び「いえす! まむ!」と意味の分からない言葉を使っていますが、きっと了承したのだと思います。


 わたしには夕飯の受付と常連客の接待という仕事があるので、建物にそって花壇を作るようにユークリットへ指示を出します。

 この位置でしたら訓練場の場所が狭くなる影響も少ないはずです。

 三度目の「いえす! まむ!」の返答。

 間違いなく了承したという意味の言葉でしょう。



 夕食の時間はわたしにとって良い訓練時間です。

 酔っ払い達がわたしの死角を突いて体に触ってこようとします。

 お盆で護るか、体をひねって回避するか、他のお客様に呼ばれたのを装ってその場から立ち去るか、あくまでも状況に応じて自然な動きの中で行動を選択する事が前提です。

 相手の動きを予測して最低限の動きで最高の回避を選択する。


 これほど良い実戦訓練はありません。


 それでも一応客商売。

 常連客確保の為にも十回に一回程度触らせてあげることも重要です。

 誰が何回触ってこようとしたかを覚えた上で触らせても良い程度の動きならば触らせてあげる事も常連客を手放さない手段となります。

 具体的にはちょっとお尻を撫でる程度を一等にして、ももを触るのが二等、手を握るが三等と言った具合ですね。

 基本的には注文してくれた毎日の累積金額で等級は変わります。

 勿論、触った分だけ累積金額も減少します。


 お客様の顔を覚えられますし、暗記力の良い訓練にもなります。

 あるヒトから学び十年以上続けている訓練です。



 しかし今日は図らずもお客様感謝祭りになってしまいました。

 館長とフィーナさんがベスとアンを連れて一つの卓を囲んで楽しそうに笑いながら食事をしているのです。

 フィーナさんの隣にはマリーが直立して待機しています。

 館長もフィーナさんも「マリーも一緒に食事をしよう」と誘っているようですが、マリーは固辞しているようです。

 そちらの様子がどうしても気になってしまい必要以上に体を触られてしまいました。


 最大の屈辱は後ろから胸をもまれた時「初めてシーリンちゃんの胸に触ったぞ! 思った以上に小さかった!」と喜ぶ常連客様には驚いて振り向いた振りをして熱いスープを頭からかけてやろうかと思ったほどでした。

 わたしにそんな事があったのに館長は楽しそうに笑いながら食事をしています。

 とても腹立たしいですよね?

 後でユークリットへ八つ当たりしておきましょう。



 お客様が全員帰り、後片付けの皿洗いの為に裏庭に出るとユークリットが黙々と花壇造りを続けていました。

 本当に真面目な男のようです。

 色々と莫迦だとは思いますが、少しだけ見直してあげます。

 詳しく仕事を確認すれば、庭の土を余剰となる分掘り取った後に花の根に付いた土を落とさないように植え付けています。

 その上、先日の魔力の検証実験で余った石を使い花壇の周りを囲っています。

 真面目なだけではなく、莫迦の割に意外と、丁寧な仕事ぶりです。


 最初は八つ当たりを考えていたわたしでしたが、考えを改めてお互いの仕事を黙って続ける事にしました。



 食器洗いを終えて花壇を見れば、ユークリットは水をまいている最中でした。

 水は洗濯場の溜池で桶を使い汲んだ後、柄杓ひしゃくを使い花壇にまいています。

 本当に出来る事と出来ない事の差が大きい男です。


 ベスとアンが窓からユークリットの仕事を見ています。

 花壇が完成するとわたしはユークリットをねぎらい「残り物で申し訳ないですが」と断った上で夕飯を特別に用意してあげます。

 彼の好みは、朝はパンがたっぷり、夜は魚がたっぷりです。

 パンを少なめ魚を多めに用意してあげました。

 残り物なのは本当の事ですが。



 ユークリットが食事を始めるとベスとアンも部屋から出てきて席に座ります。

 二人には、館長とフィーナさんよりも、ユークリットの方が似合いますし、みんな楽しそうです。


 三人が楽しそうに今日あった事を話しています。

 いつの間にかユークリットがベスとアンに対して土下座をしています。

 ベスが怒ったふりをしているのを、わたしは確信しています。

 アンもベスに便乗するように首を縦に振っています。


 わたしも幼いころ、館長に対して怒ったふりをしたものです。

 こう言うのを神の言葉で「ツンデレ」と言うのでしたっけ?

 少し違う気もしますが、わたしも神の言葉にはあまり詳しくないので、仕方ないですね。


 わたしは、仲の良い三人のやり取りを見て、少し胸がすっきりして今日の仕事を終えることが出来ました。

 その事もありユークリットの願いもこころよく引き受ける事にしました。

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