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不本意ですが【おじさん】になりました

 ドカチーニの斡旋屋に帰るといつもの廊下をいつものように歩いている2人へ「ただいま」と声を掛ける。

 ベスも「おかえり」と言ってくれる。

 アンも口の動きで『おかえり』と言ってくれているのが分かる。

 こんな些細な挨拶だけでも幸せになれる俺はどうかしているのか?

 2人に「大事な話がある」と言って自分達の部屋へと呼んだ。



 部屋に入るとベットへと腰掛ける2人。

 俺はまず2人に用意した御守り袋を渡す。


「これは俺の国の風習で御守り袋と言うんだ。いつも首に掛けていて欲しい。中は見ちゃ駄目だぞ。本当に困ってどうしようも無い時に開けると神様が助けてくれる……時もある」

「ふーん。必ず助けてはくれないんだ?」


 そう言いながらも嬉しそうに首に御守り袋を掛けるベス。

 アンもとても嬉しそうに御守り袋を眺めてから自分の首へと掛けた。。

 ベスから敬語が無くなっている。

 狙った訳じゃないけどプレゼント作戦成功か?

 好感度アップか?

 ハートマックスか?


「残念だけど、神様にもどうにも出来ない事が多い」


 世の中、お金で解決出来ない事も多いが、解決できる事も少なくはない。


「そうね。確かに神様に祈っても叶った事のほうが圧倒的に少ないわ」

 うん。

 骸骨過ぎて表情変わらないけどベスもアンも深刻な顔だ。

 この娘達が今まで暮らしてきた状態を考えれば、実感がこもってるのが分かるな。

 普段から神様になんて祈らないけど『神様』今日は祈るから俺に勇気をくれ。



 大きく1度深呼吸。



「2人共、俺の娘にならないか?」

「それは嫌!」


 ベスに一蹴されました。

 アンも首を横に振っています。

 その動きに合わせてアンの御守り袋も左右へ揺れています。

 たまに神様に祈ってもご利益なんて無いのは当たり前だよね?


 泣ける。

 考える余地すら無しの即答。


「なんで? 確かに出会って3日くらいしか経ってないけど、俺にはもう、お前達は大切な家族だぞ?」

「四日よ! 家族は、とても、とっても、とぉっても、嬉しいけど娘は絶対嫌!」

「家族になるのは嬉しいって言ってくれているのに……なんで?」

「あんた今二十六歳よね? わたし達は来月十四歳よ。後一年もすれば成人するわ」

「14歳? どこから見ても10歳程度にしか……」


 ベスとアンが右と左の同時ビンタ攻撃を仕掛けてきました。

 スローモーション過ぎるので考える余裕があります。

 回避は簡単ですが、それをすると余計に面倒事が増えそうなので避けないと決めました。

 年齢もびっくりですが、ベスはともかくアンが攻撃してきたことの方がびっくりです。


「十二歳差の親子なんて言われて親と思える訳ないじゃない!」


 そっぽ向くベスのほっぺたが瞳の色と同じです。

 これは照れている証拠……と思いたい。

 くそう。

 第2親等に格下げだが、こいつで行くか。

 この立場に憧れている二次元スキーの仲間達『おいらに力を分けてくれ!』。


「じゃあ兄妹という事で……」

「それも嫌!」


 再び一蹴。

 泣けてきます。

 再び考える余地すら見せない即答。

 義妹が出来るなんて事の為に二次元スキーの仲間が力を分けてくれるはずが無いですよね?

 自分だったら『仲間に力を貸すか?』いや『絶対に貸さないね』絶対にだ!


 御守り袋を購入した時にあった高揚感はすっかりしぼんでしまいました。

 今2人の好感度はどうなっているのでしょうか?

 ショックで心の中が敬語になってしまいます。

 アンに助けを求めてすがるように見ても、泣き出しそうな顔で、フルフル横に顔を振っているだけです。 


 ここが最後の砦です。

 これ以上は譲れない所まで来ました。

 やはりな『最後に頼れるのは自分の力だけだ!』と土下座をしながら頼み込みます。


「どうか、どうか、おじさんでお願いします……」


 弱々しい声になってしまいました。

 これが蹴られたら死んでしまいそうです。

 主に私の心が。


「仕方ないわね。姪にならなってあげるわ」


 最初からそう言えとばかりに今度も即答。

 思わず顔を上げた俺に2人の喜んでいる様子が目に飛び込んでくる。

 ベスがほっぺたを染めてそっぽ向くのは照れている証拠……と断定。

 アンは細い首が折れないか心配なくらい縦に首を振っていて青い瞳がキラキラ輝いている。

 2人は手に手を取って喜んでいる。


 嬉しいけど悲しい。


 第3親等……親戚か……良いもんね。

 俺だってお前らの事、こころの中では『赤い瞳の骸骨』と『青い瞳の骸骨』に格下げだ。

 悔しかったらさっさと肉つけてふっくらして俺を安心させてみせやがれ。



 ちょっとすねて2人に背を向けて座っていると、左右後方に2人の気配を感じた。

「これからもよろしくね。おじさん」

 と耳のすぐそばで優しい声が聞こえると今度は2人が同時キス攻撃を俺のほほに仕掛けてきました。

 唇が薄すぎて歯が当たったような感じしかしませんでしたが俺の心は天国に昇る気持ちで放心しました。


 ほっぺとは言え記憶の限りでは初キスです。

 子供の頃の忌まわしい記憶が一瞬思い浮かびましたが『あれは俺に記憶が無いから無効』と記憶の底に封じます。


「誓いのキスよ。破ったら絶対、絶っ対、絶ぇっ対、許さないからね!」


 いつものように2人を代表してベスが言うと、揃って部屋を出ていきます。

 建付けが悪い扉を2人で協力して開ける姿が可愛すぎです。


「先に食堂行ってるから、赤い顔を元に戻してから来てよね!」


 自分達も真っ赤なくせに良く言ったものです。

 動揺して心の中の敬語が止まりません。

 大きく3回深呼吸しましょう。


 スーーハーー。


 スーーハーー。


 スーーハーー。


 

 よし親戚上等!

 一応親族!

 目指せいつかはお義兄ちゃん!



 心の中の敬語も収まった。

 飯食べに行くか。

 あいつらはきっと食べずに俺を待っている。

 不思議と確信を持って部屋を出た。



 結果は、待つまでもなく食堂へと続く廊下のうちに2人へ追いつきましたとさ。

 2人を後ろから見守れる位置をキープして仲良く食卓へと向かう。

 親娘にはなれなかったけど2人共変わらずに可愛いと思うおじさんであった。

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