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論功行賞

前回の本編のあらすじを3行で。

・最初は社長がくれた有給休暇強制消費ドッキリ企画と思っていたが実は本物の異世界だった。

・圧倒的な俺tueeeが出来ない中、本音は日本へと帰りたいけど、自分が生き残る為に冒険へ出る。

・満月の夜を無事乗り切り、ユークリットはベスとアンと共に、この異世界を生きる事を決意した。

 銀色の月の満月を乗り切った。

 3人で一緒に朝食を食べる。

 今までと同じ行為なのに、今までと同じ気持ちでは無い。

 俺は今、ただ3人で食事をするだけで幸せを感じている。


 娘2人へのベルガーさんの食事は少しずつ固形物が増えていっているようだった。

 本当に出来たヒトだよ。

 港町の熊さん。

 あ、言い忘れていましたが、この度、骸骨2人は娘2人へ格上げされました。

 恥ずかしくて他人には絶対言えませんが。



 26歳で娘が2人か。

 この世界は15歳で成人だったよな?

 成人してすぐに娘が出来るとか、何というリア充。

 嫁が居ないのは難産で命と引き換えに双子の娘を生んだと言う設定だな。

 うん。

 そうしよう。


 シーリンさんが嫁?


 冗談でもやめて下さい。

 擦り切れて無くなるまで尻にしかれ続けるじゃないですか。

 常に俺がシーリンさんへ土下座をして許しをこう姿しか想像できません。



 下らない妄想はやめて現実を見よう。

 今は幸せが一杯につまった朝食の時間だ。

 うちの娘が骸骨過ぎて表情は分からないが瞳を見れば嬉しそうなのが分かる。

 やばい。

 見ているだけで俺まで嬉しい。


「ユークリット。そろそろ行くぞ!」

「今日も荷揚げ屋のお仕事? いってらっしゃい」


 ベスとアンが軽く手を振って送り出してくれる『俺の娘達が可愛すぎる骸骨について』そんな幸せをドカチーニさんの一言が破壊した。


「いや、今日のユークリットは街の外へ魔物の回収作業だぞ」

「今日も街の外へ出るなんて聞いていません!」


 赤い瞳に炎が宿る。

 青い瞳からは水が溢れ出しそうだ。


「大丈夫!今日は昨夜倒した素材を集めてくるだけだから。戦闘はしない予定だから」

「帰ってこなかったら一生口聞きません!」


 そう言って2人は協力しあいながら廊下へと歩いていってしまった。

 帰ってこれなかったら口を利けないのは当たり前と思ったけど『怒った娘も可愛いツンデレツンデレ』と娘にデレデレな新米パパであった。



 今回武器は護身用に投げ槍1本と小刀ナイフだけ。背にはベルガーさんと同じ大きなバックパックを背負って出発した。

 他の3人は昨夜と同じ通常装備だ。

 一般人のヒトのうち8人ほど荷揚げ屋で見た事があるヒト達だった。

 多種族の顔の区別はまだあまりつかないけど多分間違いない。

 他の4人は牛やら馬やらに荷馬車を引かせた、港では普段見ないヒト達だった。


 城門を出るとまずは首長蜥蜴の回収に向かう。

 荷車が川を渡る必要があったので少し心配したけど全く無用の心配だった。

 今回は比較的城門近くで獲物を倒せたので回収作業も楽との事。

 条件が良いのでヒトも容易に集まったそうだ。



 首長蜥蜴を倒した現場に到着する。

 俺は半径5メートルほどの草刈りの後、首長蜥蜴の肉を16人分焼く仕事を与えられた。

 前回肉を焼いた時の反省を生かして筋膜を剥ぎ、影包丁を入れて肉の筋を切断。

 これで少しは肉が柔らかくなるかな?


 生草が狼煙のように煙を上げている。

 魔物の襲撃は大丈夫か心配したが周囲でも狼煙が上がっていて、どこのパーティーもやっていることかと少しだけ安心した。

 火だけは消えないように注意しよう。

 燃料は幾らでもある『肉をきっちり焼く』それが今日の俺の仕事だ。

 肉を焼いていると言うよりはスモークでいぶしていると感じるほど煙が多いのだが。


 シーリンさんとドカチーニさんが見張りに立ち、ベルガーさんが解体指示をだして仕事をしていた。

 太陽が真上に上がる頃には解体が終わる。

 昼飯に俺が焼いた肉が全員に配られ「今まで食べた首長蜥蜴とかげの中で一番うめぇ」と声が上がる。

 ベルガーさんが親指を立ててくれる。

 それだけで俺は満足だ。

 投げた槍の柄は全て折れていたが、金属製の穂先が全て無事回収出来たのは良かった。



 荷車一杯に首長蜥蜴の素材を積んで街に帰る。

 途中、昨夜持ちきれなかった走り蜥蜴の回収にドカチーニさんとベルガーさんが6人の一般人を引き連れて森に入る。

 残りは荷車と共にお留守番となり不安はあったが『シーリンさんが居るから大丈夫』と心で何度も唱えながら8人の帰りを待った。


 今の状況は実質、冒険者1人に対して一般人7人と4頭だ。

 『俺を戦力に入れないでねシーリンさん』そんな願いを込めてシーリンさんの方を見る。

 荷車の上に乗って周囲を警戒していたシーリンさんの笑顔が同時にこちらを向く。

 笑顔に陰が落ちているのは一段高い所で逆光になっているからだよね?

 抜かれた小剣は周囲を警戒しているからだよね?

 逆光が眩しくて『本日の色は何色か』は観測出来てませんからね!


 戦闘になる心配は必要はなかった。

 意外と早くドカチーニさん達が森から帰ってくる。

 昨夜のうちに解体も終わっていたし、本当に素材を取ってくるだけだったからだ。



 城門をくぐり素材引き取り所で荷物を下ろすと一般人のヒト達には1000文。

 荷馬車を引いて来たヒト達には3000文が渡された。

 『回収作業に人件費で2万文掛かっているよ。収支は大丈夫なのか?』と言う心配をよそに、素材は全部で50両近くになった。

 素材や武具は高価で貴族達が絡んでくるので基本的に、両・分・朱の方で扱うらしい。


 50両は山分けと言う訳ではなく、必要経費やら何やらも含めて、リーダーが配分するらしい。

 配分の権利はリーダーに一任だ。

 まるで戦国時代の論功行賞だな。


 最低のリーダーは本当に最低限の報酬しか仲間へ渡さない事もあるらしいが、そんな事をすると二度とパーティーを集められないくらいに悪評が広まるらしい。

 そんな最低限の報酬しか渡さないリーダーでも、それに見合う強さがあればヒトが集まるのが冒険者の不思議なところだ。



 夕飯時が近づく前にドカチーニの斡旋屋で論功行賞が始まる。

「みんな、今回は良くやってくれた。怪我人を出すことなく首長蜥蜴、走り蜥蜴の親玉を倒せたことは望外の出来だ。今回は一人十両受け取ってくれ。ユークリット。折れた槍は直して置くから俺に渡せ。必要経費のうちだ」

「ありがとうございます」

 お礼をして穂先を8本ドカチーニさんに渡した所でニヤリと笑うドカチーニさん。

「但し、投げ槍十三本は買い取って貰う。お前の武器だからな。一本一分で三両と一分だ。お釣りの六両三分が報酬だな。小刀は俺のお古で悪いがくれてやる。大事に使ってくれ」

「ありがとうございます。それでしたらあと1分払いますから、無くした分の新しい槍も買い足して下さい」

「そうか。買っておこう。ユークリット。上手くいったらお前に良い事が起こるかも知れないぞ?期待せず待ってろ。俺はこれから出掛けるからシーリン後は頼んだぞ」

 と言うとドカチーニさんは自分の装備を付けたまま、俺から壊れていない投げ槍まで受け取ると出掛けてしまった。

 シーリンさんが笑顔で俺の事を珍しく見ていたが、何となく怖くて、声を掛ける事が出来なかった。



 娘2人は廊下を歩いていた。

 俺達の話が終わるのを待っていたようで、話が終わると歩くのを止めて、いつもの席に座った。

 『そう言えば昼飯食べてないのかもな?』と思うと3人分の昼飯をベルガーさんに頼んで娘達には遅めの俺は2度目の昼飯とした。

 時間的にはおやつの時間に近い。


「今度街の外に出掛ける時にはきちんと事前に報告してから行って下さい」

 ベスからの警告が敬語に戻っちゃったよ。

 好感度ダウンなのか?

 俺はかなり落ち込みつつ、その事を了解した。


 昼飯を食べると娘達は再び歩き始める。

 まだまだ2人1セットにならないと動けないが大分力強さが増してきた……と思う。

 これが親の欲目ってやつか!?

 俺はこれから街に出掛ける事を娘に断っておいた。

 行き先は街の中だが、これでまた勝手に出掛けると、後が恐そうだからな。



 シーリンさんに教会の場所を聞いてそこを訪れる。

 娘達に御守り袋を買うためだ。

 教会は高い塔が立っていたので遠くからも目立ちすぐに分かった。


 この前ドカチーニさんと街に行った時には使わなかったが【港橋】と呼ばれる港湾施設と街をつなげる大きな橋を通った。

 教会に行くにはこの橋を渡る方が斡旋屋からは近いからだ。


 この橋の下を流れる川をトモウェイ川と呼び、この街の物流はこの川を使って船で運ばれている事が多いそうだ。

 このまま上流へ行けば、皇族の別邸となる公園の中を流れたり、人工の水路を使ってスーンプ城まで続いているらしい。


 教会に着くと胸から下げる紐が付いている色付きタイプの御守り袋を2人の瞳の色に合わせてそれぞれ購入した。

 お布施と合わせて2朱掛かった。

 思っていたより高価な物でびっくりしましたよ!

 その御守り袋の中に1両ずつ入れて御守り完成だ。


 夕飯時で斡旋屋が込み出す前に急いで帰ろう。

 娘達の喜ぶ顔を想像するだけで俺はにやけてしまった。

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