シーリン過去編7:再会
突然現れた二匹の鬼に連れられて斡旋屋を連れ出されました。
現在斡旋屋の近くにある拓けた土地の片隅に居ます。
衛兵さん達が居ないと思ったら訓練をしていたのですね。
沼地の中の比較的固い場所をひたすら走っているようです。
それともひたすら走る事によって踏み固められているのでしょうか?
なにやら高い櫓の上から怒鳴り散らしているヒトがいます。
立派な口髭を生やしていますし、服装からして下級貴族、きっと衛士様ですね。
普段は【迷宮の斡旋屋】では見た事がありません。
これまでは、銀色の月の満月の夜でさえ、衛士様が来る事はありませんでした。
わたし達は衛士様のいる櫓から一番遠い所へと陣取りました。
へろへろで走り続ける衛兵さん達は歩く事が許されない雰囲気です。
彼らに比べたら、これからわたしがやる事は天国でしょう。
どんな地獄が待っていると思いましたが、ちぃ姉が指示したのは【立つ】事だけでした。
たぃ姉はちぃ姉の隣でわたしへ指示する事を聞いているだけです。
「天から一本の糸が降りて来て、頭がそれに吊るされているのを思い浮かべて。足の幅は広すぎず狭すぎず、そうそうその程度。左右の足に載る重みは一緒にするの。はい。そのまま少し左に体を捻って。そのまま自然と足先が向く方へ向けて。そうよ。上手ね。そこで少し腰を落とす。うーん。最初にしては上手だけど、まだまだね」
何とか合格点は頂けたようです。
「それじゃあ、その恰好のまま陽が暮れるまで、頑張ってね。シーリンちゃん」
「辛くても楽しちゃ駄目よ。シーリンちゃん」
わたしに一声だけ掛けると、二人は斡旋屋の中へ、戻って行きました。
最初は衛兵さん達と比べたら天国だと思っていました。
四半刻(約30分)も経たないうちに、それが大きな間違いだと気付きました。
最初は腿の筋肉がぷるぷると震え出しました。
そして膝が笑い始めます。
その震えを必死に抑えながら、我慢して立ち続けると、背中、脇腹、腹筋、全ての筋肉が悲鳴を上げ始めます。
限界です。
まだ半刻(約1時間)経ったかどうか。
ただ立つだけという事が、こんなにも辛いものだとは思いませんでした。
私の前を走り抜ける衛兵さんが、自分もへろへろのくせに、体の震えが止まらないわたしに暴言を吐いて行きました。
「それだけ体中が震えても胸は揺れないのだな」
「お前じゃなくて受付嬢のどちらかなら周回する事にやる気が出たのに残念だ」
「あんたがそんなに笑っているのを見たのは初めてだな。顔じゃなくて膝だけど」
この手のからかいは、反応を返すと、余計に相手が喜びます。
わたしは衛兵さんへの怒りを気合へと換えて夕方まで立ち続けました。
最終的にわたしは力尽きて倒れました。
一歩も自分では動けません。
倒れた所で、再びたぃ姉に背負われて、ドカチーニの斡旋屋へと帰る事になりました。
たぃ姉がわたしを背負いながら軽口を叩きます。
「今日のシーリンちゃんの膝くらい、顔も笑えるようになると良いのにね」
「衛兵さんにも言われましたが、わたしは笑えています!」
「確かに今日は、へろへろの衛兵さん達を、笑わせてはいたわね」
どこかでお姉さんは、わたしが立っている所を、見ていたのですね。
わたしはたぃ姉へ返せる言葉が思い浮かばず、唇を噛みしめました。
無言になったわたしへ「良く頑張ったわね」とたぃ姉は一言呟きました。
背負われて【ドカチーニの斡旋屋】へと着いた後、まともに歩けないわたしは受付で、来店を断る仕事くらいしか出来ませんでした。
今日も食堂は帰る客が少なく満席となっています。
たぃ姉の真似をして笑顔でお客様と対応しようと一度は思いました。
しかし鏡に映った自分の笑顔を思い出し、現実はいつもの素っ気ない対応になりました。
わたしが相手ではつまらないのでしょう。
満席だと分かると、お客様は別のお店へと脚を向けます。
お客様の行動は、当然の事だとは思いますが、悔しい気持ちも生まれました。
たぃ姉が楽しくお客様と話している姿を、わたしはもやもやした気持ちで眺めていました。
たぃ姉と話しをするお客様の笑顔がとても楽しそうです。
普段一人で寂し気に夕食だけを食べに来ていただけのお客様も笑顔になっています。
わたしは男性を【野蛮で野暮でやらしくて嫌いだ】とは思っていますが、食堂へと来るお客様には【楽しく過ごしてもらいたい】という気持ちもあります。
お客様に楽しく過ごしてもらう事を苦も無くこなす、たぃ姉に少しだけ嫉妬をしました。
今日も夜寝る前に、たぃ姉とわたしの笑顔を良くする訓練をしてから、寝ます。
どうやら今日もわたしの笑顔がお姉さんの根気に勝ったようです。
どうやったら上手に笑えるようになるのでしょうか?
朝も全く同じように【迷宮の斡旋屋】へと向かいました。
袋の中へ石礫はいっぱい拾えて、わたしの笑顔には合格は出ませんでした。
迷宮の斡旋屋へと着けば、再び二人のお姉さん達が、睨み合い始めました。
二番の護符を受付台から、そっと取り、わたしは迷宮へと向かいました。
昨夜から今朝に掛けて、先日との違いは、酔っ払いの衛兵さん達が居ない事ぐらいでした。
いつものように迷宮へと入り、いつもの区画へ。
今日も二番の護符の調査です。
【命中力】の祝福を未だ実感しません。
一体【二番の護符】とは、神の言葉で『シューティングガード』の祝福とはどのようなものなのでしょうか?
お姉さんが『ソロでは意味が無い』ような事を言っていましたが、本当のようですね。
ここ数日の実験でなんとなく体感しました。
それとも護符自体に意味が無いただの御守りみたいなものなのでしょうか?
一番の護符も含めて、未だに護符の祝福を感じた事がありません。
そんな事を考えながら、迷宮内での実験を続けましたが、お昼を迎える頃には、今日もわたしの魔力が尽きました。
明らかにおかしいと感じました。
わたしは一日迷宮で魔法を使い続けても平気になったはずです。
今日はこれで迷宮から地上へ戻りますが、明日は一番の護符を持って迷宮へ潜りましょう。
もしかしたら、わたしの魔力が一日持った事は、一番の護符の祝福なのかも知れません。
わたしが【迷宮の斡旋屋】へと帰ると、いつもは酒で潰れている衛兵さん達が、力尽きて潰れている衛兵さん達へと変わっていました。
どうやら、今日は朝から訓練をしていたようですね。
わたしの事をからかうだけの気力も無いようです。
普段は朝から何もせず、酒を飲み、だらけていたというのに何かあったのでしょうか?
今日はお姉さん二人が睨み合っている事はなく、ちぃ姉が受付に居ました。
お昼の焼き蛙を食べた後、昨日と全く同じで、午後はひたすら同じ姿勢で立ち続けました。
今日もすぐに身体に限界が来ます。
同じ姿勢で居続ける事の大変さが良く分りましたが、やっている事の意味は分かりません。
今まで全て自己流で修練を積んだわたしはお姉さん達を信じて言われた通りやるだけです。
へろへろで走る衛兵さん達が気晴らしで掛けてくる【言葉の刃】にも黙って耐えます。
今日も、身体に限界がきて自力で立てなくなるまで、心だけは折る事無く続けました。
夕方、たぃ姉に背負われて帰り、寝る前と朝は笑顔の練習をしながら石を拾い迷宮へ。
二人のお姉さんが睨み合い、食堂に衛兵さん達がいない所まで昨日と一緒でした。
違いはわたしが二番の護符の代わりに一番の護符を持って迷宮へ出た事だけでした。
いつもの場所、いつものように魔法を使いながら、石礫を投げ続けます。
今日は二番の護符から一番の護符へと換えました。
わたしの感覚としては魔物への命中率に差はほとんど感じません。
ですが大きく変わった事は時間が経つにつれて実感します。
今日は、お昼を迎える時間だと言うのに、わたしの魔力がまだ尽きようとしていません。
どうやら一番の護符の祝福【消費魔力の軽減】のようです。
護符の祝福を初めて実感しました。
何日か一番と二番の護符を交互に使ってみて情報を確定しましょう。
迷宮の斡旋屋に帰って食事をした後は【立つ】修練です。
ただ立っている事を修練と言う事に抵抗はありますが、間違いなく【苦行】ではあります。
少しは慣れてきたという事でしょうか?
今日は昨日までよりは、膝が笑い始めるのを、耐える事が出来ました。
力尽きて倒れ伏すまで、今日も続けました。
ただ立っているだけで、力尽きるわたしを、へろへろで走る衛兵さん達が莫迦にして行きます。
莫迦にされるのは、子供の頃から慣れているので、心を殺せば全く平気です。
立ち続けていた間は、怒りを気力へと換えていましたが、今日はもう無理です。
心を殺して、耳に入ってくる嘲笑を、やり過ごしましょう。
夕方には再びたぃ姉に背負われて帰る事になりました。
夕飯時は、楽しそうに食事やお酒を飲むお客様達を、受付で眺めるのがわたしの仕事です。
その後、寝る前と迷宮へ行くまでは、たぃ姉による笑顔の訓練も続きました。
幾日か一番と二番の護符を交互に使いながら、午前は迷宮へ。
午後はひたすら同じ姿勢で立つ訓練が続きました。
同じ場所で訓練をしている衛兵さん達の中の一人が、彼らの休憩中に、わたしを莫迦にするために真似をしてきましたが、彼も半刻経たないうちに膝が笑い出し、まともに立っていられない状態になりました。
それを見た他の衛兵さん達が、同じように、真似をします。
結果は、最初の彼と同じでした。
それから後は、わたしを莫迦にしてくる衛兵さんは、いなくなりました。
幾つかの暇な満月の夜を越えたある朝、わたしに大きな変化が訪れました。
それは【迷宮の斡旋屋】へと入った時に起きました。
「遅い!!」
さて彼は誰でしょうか?
見た記憶があるか無いかすら思い出せない少年がわたしへと大きな声を掛けてきます。
少年は見せびらかすように、冒険者の証を首から掛けていました。
武具はわたしと同じで小刀くらいですね。
草鞋すら履いていない所を除けば、わたしとほとんど装備は変わりません。
冒険者の証を見せなければ、一般市民と全く変わりが無いところまで同じです。
「これからは、おれがお前の相棒になってやるからな!」
「必要ありません」
わたしは少年へ言い放ち、二番の護符を手に迷宮へと向かいました。
後ろでお姉さんと少年の言い争いが行われている事は無視します。
「今日一日は迷宮での約束事を教えると言っているでしょう!」
「そんな事は十分知っているって!ずっとこの迷宮で【もぐり】してきたんだぜ!?」
「【もぐり】と【冒険者】では全く違うのよ。色々と守らないといけない約束があるの!」
いつものように魔法を使い【もぐり】達から隠れるように区画を移動している時に、彼の事を思い出しました。
彼は【もぐりの大将】だと。
これまで私の拙い妄想を読んで下さりありがとうございました。
まず結論を書きます。
この度、ネット小説七感想の一次落選を受けまして、更新速度を月1度【第一金曜日】更新へと落とします。
これまでおおよそ25名前後の初日・二日目に最新話をお読み下さった読者様には本当に申し訳無いと思いますが、私のわがままをお許し頂きたく思います。
この一週間、初レビューも頂けました。
それをきっかけにジャンル別ランキングへと初めて載る事も出来ました。
週間ランキングに載ると言う幸運にも恵まれ、ブックマークは1.5倍にまで増えました。
週間ユニークユーザーも初めて1000人を越えた事にも感謝をしております。
ランキングに載る中、それだけ読者が増えても頂けた感想は2件。
評価を頂けた人数も2人だけであります。
何かのエッセイで一次すら通らないと言う事は『小説として成り立っていない』と読んだ覚えがあります。
まさにその通りと、数字が語っており、私自身も痛感しております。
数字が私へ語ってきます。
「お前が書いたのは【妄想】であって【小説】ではない」
「ブックマーク100越えが【底辺】卒業? お前は【なろう作家】にすらなれていない」
素人が毎日毎日四か月の間、妄想を垂れ流していたこの作品。
一次審査に落ちて当然ですし、読者様から評価を頂けない事も当然の事だと思います。
それでも尚、この話を諦めきれない私は序盤の内に改稿を優先させる事に決めました。
【改稿作業】と【短編作品の制作】を中心に修行を積みます。
私は【小説】を書けるようになる事から始めようと思います。
最新話がほとんど進まなくなり、読者様も激減する事は、間違いない事だと思います。
ブックマークを整理し忘れた読者様が、何か月、何年と過ぎてから「こんな妄想もあったな」と思い、ふとこの作品を目にした時に「しっかりと小説になっているではないか」と思って頂ける改稿をしたいと思います。
多くの方とは別れの挨拶になると思いますが、
最新話まで読んだ後感想まで下さった読者様、
ブックマークをしてまでお読み下さる読者様、
毎回更新する度にアクセスして下さる読者様、
余暇が出来た時に一気読みして下さる読者様、
更新した部分を読み返しに来て下さる読者様、
タイトルとあらすじに釣られて試し読みされる方、
全てのアクセスして下さる皆様に『やる気』燃料をいただいて更新する事が出来ました。
毎月第一金曜日19:00の更新へと更新速度が落ちます。
半分以上【エタ】る、この作品を読み残る読者様が居て下さったのなら無上の幸せです。
2019/04/05 何遊亭万年




