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熱い視線

 現在、俺は朝から危機に直面していた。

 この部屋の雰囲気ははたから見れば穏やかな雰囲気に見えるだろう。

 だが魔女フィーナ笑顔魔人シーリンに加えて新たな強敵が突然出現した。

 全く予期できぬ出現であった。

 その後、俺は常にその者の監視下にある。

 その者は、俺の一挙手一投足に、熱い視線を送ってくる。

 その視線の抑止力は強烈だった。

 俺は大皿へ手を伸ばす事が出来なくなった。

 どんなに俺自身が望んでいたとしてもだ。



 時は、ドカチーニさんの執務室へと入室した時まで、さかのぼる。



………………



 執務室の扉を開けるとフィーナさんが1人で待ってた。

 用意された椅子は3人分。

 元からある執務室に備え付けられた椅子へとフィーナさんが座っている。

 残りの2脚は、フィーナさんの対面に2つ並んで置いてある。

 この椅子に、俺とシーリンさんは座れば良いのだ、と判断する。



 俺は迷わず左側の椅子へと手を伸ばした。

 シーリンさんは右利きのはずだ。

 彼女の攻撃力も多少は下がるだろう。

 朝一番に、彼女の地雷を、俺は踏み抜いている。

 シーリン笑顔マイスターである俺が『お怒りの笑顔』を間違えるはずが無い。


 このくらいの事では今朝の俺の不運は止まらなかった。

 入室後すぐに、全く意図せず、フィーナさんの地雷も踏んだ。

 この事は断固として俺の責任とは認めない。

 ドカチーニさんが男達の楽園へと外出中だった事が悪いのだ。



 幸いな事は2つの地雷、共に踏んだ瞬間に爆発するタイプの、地雷では無かった事。

 爆発するまでの間、恐怖を味わい続ける事になるが、地雷から足を離さなければ良いのだ。

 2人と一緒にいる時間だけは、必要以上と言える程、十分ある。

 慎重に爆発物を処理しろユークリット!!



 椅子を引く時も、さりげなく、シーリンさんから距離を置くように引いた。

 それでもまだ彼女の手が俺に届く範囲だ。

 これ以上露骨に距離を取ったら彼女の地雷が爆発しかねない。

 彼女が本気になれば、指先1つで何をされるか、分かったものでは無い。

 そんな俺の不安をよそに、彼女は俺の右隣の椅子へと、しとやかに座る。



 俺とシーリンさんが着席するのを待っていたようにフィーナさんが口を開いた。



「シーリンちゃんも朝のお仕事は終わったのかしら?」

「はい。わたしは大丈夫です。わたしが居なくても、後はベルガーが始末を付けてくれます」

「そう?ベルガーならば安心ね。ユークリットはどう?」

「今日は500文で話し相手になって欲しいとの依頼でしたが、フィーナさんにはいつもお世話になっています。ただ私と話をするだけで銭を払ってもらう必要はありませんよ?」

「あらあら。あたしはあなたに銭を払うのでは無いわ。あなたが一日働かない事によって減るベスちゃんとアンちゃんの生活費の為に銭を払うのよ」


 フィーナさんの言う通りだ。

 俺に取って、稼ぎの無い日が一日でもあるのは、家計が非常に苦くなる。

 ここはフィーナさんの言葉に甘えよう。


「ありがたく頂きます。今日一日、よろしくお願いします」

「そう?それじゃあマリー。クッキーとお茶を持ってきて。昨日頂いた物よ?その後は厨房から外へ出ている事。斡旋屋の敷地の中なら好きにしていて頂戴。何か用事があったら、あたしからあなたを呼びに行くわ」



 マリーがお盆にクッキーを綺麗に並べた大皿とお茶の入ったポットを載せて入室し、机の上に並べる。

 マリーがポットから3人分のお茶をれている。



 俺は『待ってました』とばかりに、大皿のクッキーへ手を出し、無造作に1つ口に入れた。

 何とも言えない高貴な甘みが幸せをともない俺の口野中一杯に広がる。

 今朝起きてから一番の幸せを味わった。

 同時に下唇を噛んだ感じで何とも言えない目付きで俺を睨むマリーが視界に入ってきた。

 不幸と言う名の魔物が近づく足音が聞こえてきた気がするのは気のせいだろうか?


「フィーナ様。私はこの場で待機しています」


 いつものお澄ましマリーとは全く違う表情だが、所作は普段と全く変わる事無くそつなくこなして、フィーナさんの後ろへと控えた。

 今、この瞬間も、マリーが俺の事を恨みがましく睨んでいるのは気のせいでは無い。

 自分の後ろに控えたマリーに対してフィーナさんが振り返り言葉を掛ける。

 フィーナさんが振り返ろうとした瞬間、マリーの顔がいつものお澄まし顔に戻った。



「マリー。あたし達はヒトに聞かれたく無い話をするの。あなたが他のヒトへと漏らすような事は無いと思うけど、下手をするとあなたの命に関わるの。出て行ってもらえるかしら?」

「フィーナ様の命に関わる話に、私が共に命を懸けない理由がありません!」

「マリーの気持ちはとてもありがたいわ。だけど、あたしの為にそこまでする事ないのよ?」

「私の為です。私情で私はここに残ります!」

「そんな我がままを言わないで頂戴。あなたの心配するような事は一つも無いのよ?」

「それでも!今日だけは一緒に居させて下さい!お願いします!」



 普段よりも強い口調で自分の我がままを主張するマリーに、フィーナさんはこちらへと振り返り、俺達の意見を聞く。

 再び下唇を噛み、俺を親の仇と言わんばかりに睨む、マリーが俺の視界に入ってくる。

 不幸と言う名の魔物はどうやらここへ留まる気らしい。


 俺はちらりとシーリンさんの横顔を確認するが涼しい笑顔を浮かべている。

 マリーが俺を睨んでいる事など、彼女は全く、意に介していない。



「マリーがこの場に居る事で、下手をすれば、あなた達にも迷惑が掛かるわ。それでもマリーがこの場に残る事を許してくれる?」

「そうですね。既にユークリットもいる事です。マリーさんが増えても問題は無いでしょう」


 シーリンさんが間髪入れずに「マリーが居ても良い」と賛意を示した。

 彼女の言葉を受けて、マリーから俺に対する、無言の圧力が強まる。

 俺は少しでもマリーの好感度を上げる為にも誉め言葉を交えながら賛意を示す事にした。


「私はマリーの口の堅さに絶大な信用を置いていますよ。私とは挨拶を含めて一言もしゃべろうとはしないのですから。誰彼構わず話すようなヒトでは無いので問題無いと思います」

「マリー。ユークリットに挨拶を返さないのは本当の事なの?」



 俺は、口の堅さを強調したかったのだが、フィーナさんは別の言葉に重きを置いたようだ。

 再びフィーナさんが、自分の後ろに控えたマリーへに振り返り、真偽を確かめる。

 フィーナさんが振り返ろうとした瞬間、再びマリーの顔が、いつものお澄まし顔に戻った。

 そして真実の一部分を切り抜き、逆に俺を追い詰める事になる言葉で、切り返してくる。


「全裸で挨拶をしてくるユークリットさんに、挨拶を返す事なんて、私には出来ません!」

「マリー。それは本当なの?」

「本当です。シーリンさんもその時一緒に裏庭に居ました!間違いありません!」

「えぇ。彼女の言葉に嘘はありません。確かにユークリットは全裸で挨拶をしていました」



 2人の言葉を聞いたフィーナさんの眉根が更に寄る。

 あの日は、シーリンさんに俺が着ていた貫頭衣を洗濯されていて、確かに全裸だった。

 ん?既に脱ぎ捨てていたのだったか?

 その後の地獄がきつすぎて正確な記憶が曖昧だ。

 あの日の真実はどうあれ、情勢は完全に3対1。


 マリー。

 お前には『全裸スカイクラッドの観測者』のコードネームをくれてやる!

 色々な方面から『お叱りの言葉』が届きそうなコードネームだ。

 ありがたく頂戴しろ!


 俺の冤罪をどれだけ訴えても、この場に居る3人には、聞き入れられる事は無いだろう。

 現代日本でも「この人痴漢です」と言われた時点で男性側が99パーセント敗訴だと言う。

 冤罪を晴らすのはタイムリープ無しで『石の扉』を見つけ出すようなものだ。


 男性が自分の身を守る為に、女性専用車両も良いが、男性専用車両も作ってくれ!

 俺自身その車両を使う日が来なくてもだ。



「ユークリット。あなたが筋肉強化の魔法を自慢したいのは分かるけど、所構わず全裸になるのは、良く無いわね」

「自分の大切な息子を護る為にも、なるべく全裸にならないように、今後は気を付けます」

「そうよ。気を付けてね。ユークリット。罰としてマリーの座る椅子を持ってきなさい」

「分かりました。すぐに取ってきます!」



 痴漢冤罪は全面敗訴だが、魔女フィーナ様から俺への、寛大な処置。

 彼女の言葉は、俺に取って、まさに『渡りに船』だ。

 マリーの地雷を知らないうちに踏んだことで『怒れるゴブリン』が2匹から3匹に増えた。

 俺の生存本能が『この場から今すぐ逃げろ』と言っている。

 既に事態は『悪い予感』では無く『悪い悪寒』だ。

 俺はすぐさま立ち上がり、自由への扉へと手を掛けた瞬間、腹の底から冷える声を聞いた。



「あなたが『かえらぬヒト』とならない事を祈っています」

「シーリンさん。『かえらぬヒト』という言葉の使い方は間違いではありませんか?」

「間違ってなどいませんよ。あなたの心に何かやましい事があるのでは無いのですか?」

「やましい事なんて考えていませんよ。すぐに戻ってきます」



 私にやましい事?

 ええ。

 ありますよ。

 どこで踏んだのか、マリーの地雷まで、今朝の私は踏んでいたのですよ。

 怒れるゴブリンが2匹から3匹になったのです。

 違約金の250文を払ってでも逃げる気は満々ですよ?


 ですが、あなたの冷えた声で、私の頭も冷えました。

 間違いなく漢字で書いたら『還らぬ人』ですよね?

 笑顔魔人シーリン様。

 私を『亡き者』にする気満々ですよね?

 違約金の250文を払うだけで、あなた様のお仕置きが、終了する訳がありませんよね?

 この異世界に私の『安全な逃げ場所』なんて所はどこにもありませんよね?

 考えるだけ時間の無駄です。


 今日の最悪は『苦しみに耐えきれず死にたくなっても死なせてすらもらえない』事です。


 考える必要も無く直感で分かります。

 実際にはそんな事にならないと信じていますが、有り得ない事ではありません。

 異世界に人権がどれだけあるかなんて私は知りません。

 人権があっても、今の3人に私がヒトとして認められている保証が、どこにもありません。

 最悪の事態だけは避けましょう。



 気をしっかり持てユークリット!

 まずは心の中の敬語を抑えろ!!

 俺は食堂のカウンターに並ぶ手近な椅子を手に取ると、執務室へと急ぎ戻る。

 俺が座っていた椅子は、場所をフィーナさんの隣に移動してマリーが座っていた。

 先程よりもシーリンさんから距離を取り、彼女の手が届かない所へと、椅子を置き座る。

 俺が座るとフィーナさんが、いつもと同じ口調で、世間話でもするように話を始める。



「一人お客様が増えてしまったけれど本題に入るわね。マリーもう一度言うわよ。絶対に今日ここで聞いた事を他のヒトに話しては駄目よ」

「はいフィーナ様。絶対に他人へと話したりしません」


 フィーナさんは指を一本立ててマリーの口に当てる。


「絶対に秘密よ。それでは話を始めるわ。シーリンちゃんは迷宮に潜った事はあるのよね?」

「ソロ……一人ですが何度かは……」

「シーリンちゃん。今日は良いの。ユークリットには口止めの誓約書を書かせてあるわ。マリーにも書かせるわ。絶対に口外はさせないから、迷宮で使う言葉を使っても平気よ。むしろ今日は、迷宮でしか使えない言葉を使って話をするのよ。その為に、一番盗み聞きをされにくい、執務室を使わせてもらっているのよ」

「そうですか。それが本当ならば良いのですが」



 シーリンさんの笑顔には『不審』と書かれている。

 確かにマリーのような子供が秘密を守れるかどうか不安だ。


 迷宮で使われている言葉は、神殿が秘匿して、一般市民には出回っていない。

 例えば、迷宮では『ゴブリン』と呼ばれる魔族も、一般市民は『緑小鬼』と呼ぶ。

 神殿の怖さは、今までフィーナさんから聞いてきた事で、俺にも何となく分かる。

 俺が実際に酷い目にあわされた事はまだないとしてもだ。


 神殿がフィーナさんに対しておこなった事は本当の事だと思う。

 現代日本では考えられない理不尽が異世界ではまかり通るのだ。

 そういう意味で俺にもシーリンさんの気持ちが分かる。

 だが次に起こした彼女の行動が、俺の不安は間違いであったと、はっきりと言っていた。



「マリーの事は何も心配していませんよ」

「そう。ありがとう。マリーもシーリンちゃんの信頼を裏切らないようにね」

「はい。フィーナ様」


 シーリンさんは、私の顔を見ながら、笑顔の下で一体何を不審に思っているのでしょうか?

 深く考えると心が痛くなりそうなので考える事をやめる事にしましょう。

 そして次のフィーナさんから出た来た言葉で、シーリンさんは完全に気を悪くしました。



「シーリンちゃんはユークリットがドカチーニの弟子になった事は知っているかしら?」

「いえ。知りません。初めて聞きました」

「あらあら。あのヒト、シーリンちゃんにも言っていなかったのね」

「まさか!わたしにユークリットと迷宮でペアを組めと言うのですか?」

「そう。正解」

「今回の話はお断りします」


 シーリンさんが、どこから出したのか、金銀の1分を机の上に置く。

 机の上に置いた1分は違約金だろうか?

 俺への報酬と比べたら随分差があるな。

 だが本当に驚くべきは彼女との賃金格差では無い。


 彼女は体にピッタリとフィットした特注の紺色の貫頭衣を着ている。

 特にベルトポーチとかを身に着けている訳では無い。

 一体どこから金銀を出したのだろう?

 俺が心配するべき本当の問題は、どこからともなく、武器が出てきそうな所だ。


 少なくとも、俺がプレゼントした『銀色のかんざし』は、今や武器にしか見えない。

 そのかんざしの先端は、買った時には、もっと丸みをおびていましたよね?

 そんなに鋭く尖っていませんでしたよね?



 シーリンさんが席を立ち、部屋を出ようとしたところで、フィーナさんが止める。


「シーリンちゃん。待ちなさい。ユークリットを迷宮に送り込むのはまだ先の話よ。まずは街に時々入り込む害獣や害虫の駆除からやらせるそうよ」

「ではわたしの参加はその成果が出た後と言う事でお願いします」

「これはドカチーニからの依頼よ」



 その一言でシーリンさんの動きが止まった。



「今日はシーリンちゃんがユークリットに迷宮の事を説明するの。あたしはシーミズの港町にあるフクロ城の迷宮には行った事が無いの」

「わたしはスーンプ城の迷宮に行った事が無いので違いが分かりません」

「あらあら。それなら尚更二人で一緒にユークリットを鍛えないといけないわね」

「それではユークリットがどのくらい迷宮の事を知っているかを聞く事にしましょう。あなたはペアと言う言葉は知っていますか?」



 シーリンさんが立ったまま、私を見下みおろした角度で、笑顔のまま訪ねてきます。

 これは怖い。

 思い出せる事を1つずつ思い出して答えましょう。

 今までフィーナさんから聞いた、迷宮での話を思い出しながら、私は答えました。



「2人で行動するヒト達の事です。他に1人はソロ。6人ならばフルパーティーです」

「ユークリット。よく覚えていたわね。その通りよ」

「それでユークリットはペアを組むにあたり一番相手の迷惑になる事は分かりますか?」



 この質問が、シーリンさんが俺に聞きたい、本当の質問だな。

 しっかりと考えろ!

 だからと言って時間を掛けるな!

 彼女は俺の隣に立ったまま、見下みくだした笑顔で、答えを待っている。


 この笑顔は俺の目が錯覚しているだけだ。

 シーリン笑顔マイスターでも彼女の笑顔を読み間違える事はある。

 彼女は俺を見下みさげているだけだ!

 何となくだが更に印象が悪くなったぞ?


 それにしても日本語は不思議だ。

 少しルビを変えるだけで全く同じ漢字で書かれた言葉がえらく印象を変える。

 違う!

 今考えるべきはそれじゃない!


 最高の答えはなんだ?

 今までのフィーナさんが話してくれた中に、絶対にあるはずだ!

 幸いな事に、彼女が俺に誓約書まで書かせた事柄を、一番に思い出せた。

 今朝すでに、マリーに対してすら、彼女が警告を出しているではないか。


 少しだけ『ドヤッ』と顔にまで出たかも知れない。

 その位この答えに俺は自信を持っていた。



「迷宮で使っている言葉を外で使う事です」

「そんな事がなぜ相手の迷惑になるのですか?」



 シーリンさんの笑顔はビクともしない。

 俺もドヤ顔のまま静止する。

 答えを間違えたのか?

 答えが間違っていても、言い直しても、どちらを選んでも結果は変わらないだろう。

 それだけは分かる。


 ならば俺は、この答えで、突き進むしかない。

 心の中のアニキが言っているだろう「おまえが信じる、おまえを信じろ!」と。

 全文載せたらやばいけど、この一文だけならセーフだよな?

 分厚い碁盤の中心だって貫き通してやる!



「神殿が迷宮外での使用を禁じているからです」

「なぜ使用を禁じているのですか?」

「分かりません」

「では、なぜ使用してはいけないのですか?」

「答える事を拒否します」



 シーリンさんの笑顔はビクともしない。

 俺は答えを完全に間違えたのか?

 分からないが、答えが間違っていても、俺に損は無い。

 間違えていたとしても、この場からシーリンさんが居なくなるだけだ。



 シーリンさんが再び椅子へと座った。



「良いでしょう。ユークリットも最低限の事は分かっているようです」

「そう。良かったわ。まずはシーリンちゃんの迷宮探索の話をしてもらえるかしら?」

「分かりました。わたしは迷宮で大した事はしていませんよ」

「良いのよ。ユークリットにシーリンちゃんが体験した迷宮の話をしてあげて頂戴」



 部屋に穏やかな空気が再び流れ始めた。

 安心して、大皿からクッキーを1枚取り、口に入れた瞬間にマリーの目付きが変わる。

 彼女は椅子に座ったまま一言もしゃべろうとはしていない。


 ただ俺の行動だけは『一切見逃さない』とばかりに血走った瞳で見つめている。

 熱い視線だ。

 女の子からの熱い視線なんて、現代日本で描いた夢の1つ、だったが現実は全く違った。

 恨み殺されそうな熱い視線など受けたく無かった。




 俺はマリーからの熱い視線で終始監視され、シーリンさんの迷宮冒険譚を聞く事になった。

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