「ラブ インストール」
テレビゲーム「ラブインストール」のヒロイン小春日 楢〔かすがの こなら〕が大好きすぎる主人公 朝比奈 陸 〔あさひな りく〕は次元の境目を失うくらいであった。そんな、ある日一緒にオムライスを食べていたのであったが......。
夏休みと言えば、何をしますか?
と聞かれたら、即刻ゲーム!と答えてみる奴挙手しろ!と言われたら、絶対挙手しないのに、家ではテレビゲームばっかりの高校二年 朝比奈 陸。
「ゲームはやっぱ、ギャルゲーだよな。」
とぼやきつつ、食事を他所に、愛好しているゲーム 『ラブインストール』を進める陸がいる。
「ちょ、だめ、陸。」
橙色セミロングの紺のハイソックスに黒いミニスカートの見た目お姉さん系同級生、春日 小楢 (はるひの こなら)に自分の名前を呼ばせて、少し小音にした。その後、周りを見渡し、誰もいないはずの部屋を改めて確認する。
「やっぱ、かわいいよね。小楢 。」
と誰も聞いていない感想を述べ、画面に飛びつきたい心を抑え、コントローラーを再度握り締め、目は一心にその彼女の瞳だけを見つめる。
「まだ、だめだよ。もう、もうちょっと。」
小楢は、彼を制すが彼の思いそして、食いつきは留まるところを知らない。
「もう、だめだって、あっ。」
小楢は声をあげ、陸にしがみつこうとした。
「もう、だめだって。」
喉から手が出るほど欲しいのに何とか自我を保ち我慢する。
そして
「もういいよ。」
と、許しが出た。
その声と共に、陸は食事にありついた。
ここは、レストラン 陸はゲーム上で小楢とデートをしており、今はお昼である。我慢すると食事が美味しくなるらしく、お預けを食らっていた所だった。あっ、という声は、ウェイトレスさんが落としたカップの音に敏感に反応し、驚き彼にしがみついたのだ。
今日は、オムライスだ。一人で食べる飯がまずいなら、彼女と食べる飯はやっぱり最高だ。
モグモグもぐもぐ。
「陸くん。しっかり食べてね。」
彼女も、オムライスを食べる。画面越しではあるけれど、一緒に食べられるのなら、ここまで、昼飯を待った甲斐があるってもんだ、食事がより喉を通る。
「陸くん。あーんして、あーん。」
小楢が、少しずつ画面上からスプーンを前に出す、彼女の言われるがまま、陸は口を開き、画面へと、足を進ませる。
少しずつ、少しずつ
そして、かぶりついた。
「ん?美味しいぞ。」
違和感を感じつつも、こんな美味しいもの始めて食べたような感動を覚えた死んでもいいくらいの嬉しさに心を弾ませたのも、束の間。
「きゃーーー。」
うわなんだ。と思いつつ、僕は、敷いてあったカーペットの上に倒れ込んだ。
「やっぱり、美味しいな。小楢ちゃんと食べるのは。」
幸せな気持ちでお花畑が見えた。
「あっ、痛たた。大丈夫ですか?」
陸の体に触れ、声をかけた。
誰かが倒れ込んできたようだ。
「ごめんなさい。私たら。」
馴染みのある声。この高鳴る鼓動。僕の思い描く理想。全てが、一人の人物を指した。
まさか、と思い、少しずつ瞼を開いた。
「えっ!小楢。」
陸は現実に驚嘆し、咥えたスプーンを落とし、気を失った。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
彼女は、陸を起こそうと必死だった。
「私たらほんと。」
「ばか、ばか。」
「どうすればいいの?こういう時、119番? 周りの人に知らせればいいの?もう〜。」
薄っすら小楢が、頑張っているのが何となくわかったが、そこで意識が途絶した。
読んでいただき、ありがとうございます。
次作の投稿は、「時が来たら、」という回答が同数でTwitterの集計結果多かったので、そうするつもりです。続く内容が気になる方は DMを送って頂ければ、考えておくつもりです。