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3

 人気のない場所の確保。

 元主人公二人の迅速な対面。

 

 主人公二人の脳内に、今まで散々「殺せ」という命令をしまくっていたのは、それが所以である。

 まぁつまり、静かなこの十字路で二人に殺し合ってもらうことで、世界が二人を完全に拒絶する(殺す)までの時間を稼ぎ、人気のない場所――ここで、二人揃った状態で息絶えてもらうことによって、より円滑な説明ができるような場を設けた、というわけだ。


 ……たったそれだけの理由で、二人に殺し合いをさせるのは、実際問題、かなり酷であり、正直気が引けるのだが。

 ともあれこれで、円滑な状況説明が、二人にできる。

 やってほしいことを、伝えることができる。

 

 ――と、思ったのだが、

 

「……はぁ」


 ボクは、冷え切った嘆息をした。

 そんな簡単に事は進まなかったのだ。

 ハーレムアニメの主人公と逆ハーレムアニメの主人公。

 感情コントロール機能を外した二人の性格なんて、誰にも想像できない。

 そして無論、ボクにだって予想できない。

 


 ――ましてや、二人がこんな面倒な性格をしていた、なんて当然思ってもいなかった。



「……で、お二人さん。喧嘩は終わったかい?」

「局長。これは喧嘩ではありません」


 真っ黒な髪のを弄りながら、滉輝は片目を瞑った。


「え?」

「言葉と言葉の正面衝突です」

「日本では、それを喧嘩と言うの! 分かった!?」


 ああ、面倒だ。


「――局長」

「はい?」


 薄茶色に染まった髪の毛を、風になびかせながら、今度は奈々が、口を開いた。


「そういったステレオタイプに囚われた考え方……良くないですよ。ましてや、他者にその考え方を強要するなんて、どこぞの脳筋教師と同じです」


 あぁ、更に面倒だ。


「そ、そうかい? わかったよ」


 すてれおたいぷ?

 なんじゃそりゃ?

 一体、どんな体位なんだ?

 まぁ、適当に流しておけばいいか。

 というか、早く本題に入らなくては。


「じゃあ、そろそろ状況説明を再開させてもらうよ」

「お願いします」「お願いします」


 また、二人の声が重なった。

 実はこの二人、案外気が合うんじゃないだろうか?

 そんなことを思う。


「ボクは二次元管理局という会社の現局長で、鬼川滉輝はハーレムアニメの主人公、そして、南奈々は逆ハーレムアニメの主人公。

んで、この世界は二次元の中にあり、君達は今、脳内に仕込まれた特殊な無線機によって、ボクと会話している。ここまでは、百歩譲って理解してもらったね」


「……何か色々とぶっ飛び過ぎて、もう、どうでも――」

「良くないから! ……分かった?」

「……はいはい」

「私も、理解はしました」

「よし。……で、問題はここから」


 少し間を開けて、続けた。


「君達は、確かに主人公なんだけど……その中でも、『元主人公』なんだ」

「……は?」

「どういうことでしょうか?」



「まぁ、簡潔に言うと……主人公だった君達は、一度、死んだんだ」



 そう。二人は一度……死んだ。

 二人の過去の記憶(主人公であった時の記憶)が改変されてしまっているも、恐らくそれが起因しているのであろう。


「……ま、まじかぁ」


 目を見開き、ただただ驚愕する滉輝。まぁ普通はそうなる。至って正常な反応だ。

 ただその滉輝の傍らで、


「というと……一度蘇生されたわけですか?」


 奈々は、顎に人差し指を当てながら、そう言った。

 ……あれ?おかしい。

 なぜこんなにも彼女は冷静でいられるのだろうか?

 ボクはそんな疑問を抑え込むかのように、返答した。


「お。南君。なかなか鋭いね」

「ザオラ○ですか? それともザオ○ク?」

「どっちでもないから!」

「そうよ。何言ってるの? 鬼川君。フェ○ックスの羽を使ったに決まってるでしょ? 蘇生した上にヒットポイントまで全回復するんだから」

「話をややこしくすんな!」


 無理やり咳払いして、脱線した話を元に戻す。


「君達を蘇生した方法は、ザオラ○唱えたわけでも、フェ○ックスの羽を使用したわけでもないよ……」

「じゃあどうやって?」

「――君達から、いや、この世界の全住人から、感情コントロール機能を、取り外したんだ」

「感情コントロール機能……」

「それは、一体何なのでしょうか?」



「アニメに登場する全キャラに取り付けられているもので、キャラの行動・感情・台詞などを強制していく機能だよ。まぁつまり、この機能があるからこそ君達二人は主人公になることができて、またそれ故に二人の主人公が存在してしまった世界は、君達を拒絶――殺してしまったんだ。ってなわけで、ボクはこの機能をオフにして、現実世界に類似した自由な世界を作ることによって、主人公である君たち二人から『自分が主人公であるという意識』を消失させることは勿論、主人公以外のキャラからも『君たち二人の事を主人公と見なす意識』を雲散させて、やっとのことで君達を蘇生した、ということなんだ!!」



 ……はぁ……はぁ。

 ボク、説明乙。

 かなり疲れるな、これ。


「局長?」

「ん?」

「今の良く聞こえなかったんで、もう一回説明してもらっていいですか?」

「ふざけんな!」

「嘘ですよ……まぁ要約すると、主人公である俺ら二人を一般人化することで、世界からの拒絶を避けたというわけですよね? ……まぁ、一応筋は通ってますけど」

「……で、局長は私達に何が言いたいんですか?」


 眉間にシワを寄せる二人。

 ……まぁ先延ばしにしても仕方がない。

 意識を固めたボクは、机を叩き、そんな難色を示す二人の意識を集めた。

 そして、


「ボクは、君達にやってもらいたいことが、あるんだ」


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