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滅茶苦茶、短いです。
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――鬼川滉輝が死んだ。
そして南奈々も死んだ。
まぁそれはそうだ。無理もない。
一つの世界に二人の主人公がいるなんてことは本来、ありえないことなのだから。
世界が二人を拒絶したのだろう。そして、世界から跳ね除けられた二人は、何の跡形も残さずに消失してゆく――――のであろうが、
「生憎、そう言う訳にはいかないんだよね……」
そう、二人にはまだまだこれから、やってもらうことが沢山あるのだ。
「だから……とりあえず生き返ってもらわなくちゃ」
ボクはパソコンの画面に目を向け直した。
主人公である二人を蘇生させる方法は――ただ、一つ。
「この世界の住人全員から、感情コントロール機能を取り外すことだ」
感情コントロール機能。キャラの言動や行動を操作する機能。
そしてそれを取り外すことによって、二人は救われる。
なぜなら、
「二人が、もう主人公ではなくなる……から」
感情コントロール機能を外せば、二人が主人公である意識は勿論、他のキャラが二人のことを主人公だと認識する意識も消失する。そして二人が、主人公でも何でもないただの一般人と化してしまえば、世界が二人を拒絶することはもう、無くなるだ。
「よぉし」
ボクは指の関節を鳴らして、マウスを握った。
スクリーン上にはもう既に、『感情コントロール機能オフ』のマークが映し出されている。そのマークを押すのは、局内では恐らくボクが初めてだろう。
故に今、ボクの手は震えている。だが、
「やるしかないか」
そうだ。決めたんだ。やるしかないんだ。
そう決心してボクは、マウスを握る右手に左手を添えてゆっくりと、そのマークを――クリックした。




