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過去編~歩隆と杏里とアキラと~

家を出ると、外には人が一人もいなくなっていた、まるで俺らだけがこの街に取り残されているかのように。

辺りはもう薄暗く、変に赤い夕日が気味の悪い街にマッチしていた。


「みんな、避難したの?でも、どこに?どこに行けば助かるの?」

杏里は完全にテンパってしまっている。


「俺にも分からねぇ、とりあえずアキラと合流しよう。話はそっからだ」


「う、うん。分かった・・・アンゴ公園だよね?」


そう、俺とアキラが約束しているのはお互いの家の丁度真ん中にあるアンゴ公園だ。家から互いに徒歩10分かなりの近場だ。


俺は、杏里の手を引き、辺りを警戒しながらアンゴ公園に向かった。

道中にはさっきまで誰かが乗っていて人だけが消えたように三輪車や自転車が倒れていた。


報道から1時間も経ってないのにこの始末か?


無事、二人でアンゴ公園に辿り着けた。やはり誰もいない。

それから5分ほどしたら、アキラが走ってやってきた俺と同じ大きなリュックを背負いながら。


「ハァハァ・・無事か?俺はさっき感染者と遭遇した。

ずっと虚ろな状態でフラフラと歩きながら電柱にぶつかっては倒れを繰り返していた。それを、少し監視してたら遅れてしまった、ごめんな。

でも、多分だが分かった事がある。感染者の視力は機能していないかもしれない。試しに缶を遠くに投げたらそっちに向かって歩いて行った、もしかしたら・・・聴力で判断しているかも知れない」


たった少しの時間でこの情報。さすが、俺の親友だ。


「俺たちはまだ遭遇していない、人一人も見ていない・・・な?杏里。」


「う・・うん。」杏里はまだ震えている。


その時、

バタバタバタと数人の足音が聞こえた


「杏里、歩隆ちょっとこっちに隠れよう。」

とアキラは公園の車椅子用の大きなトイレに指をさしそこで身を隠した、アキラと俺はドアから様子を伺うと一人のサラリーマンらしきおっさんがバタバタと大きな足音を鳴らし走って公園に入ってきた。


すると、後ろから感染者・・・いや、これは完全にゾンビだ。

三体のゾンビがおっさんをふらふらと追いかけている。足を絡めたのかコケてしまったおっさんにゾンビ達が群がり

「痛い・・痛い・・・うぉぉぉおおおーーーー」と断末魔が聞こえ辺りは静まった。


後ろで杏里は耳を塞ぎながら静かに泣いている。

音を鳴らしてはいけない事はちゃんと分かっているらしく必死で声を殺していた。


俺はまた公園の様子を見ると、さっきのおっさんがフラフラと立ち上がり三体のゾンビと共に公園んから出て行った。





「・・・・・・・。おい、アキラ」


「あぁ、わかってるよ。もう説明いらないだろう・・・そういう事だ。」

アキラは悟ったかのように冷静だ。


「この調子じゃ、警察なんてアテにならない。ここからは自分の身は自分で守るしかない。杏里、わかったか?できるだけ、俺らは杏里を守るよ。でも、こればっかりはどう対処していいかわからない。だから、自分の身は自分で守るんだよ。」


俺は、知っている。アキラが杏里の事を思っている事を。

この状況で、淡々と杏里に現実を伝えているのは杏里に少しでも生き延びて欲しいから生ぬるい言葉で変に安心させないように。


「・・ヒク・・・ヒク・・・。うん、分かった・・・。アキラ、歩隆これから三人で頑張って生き延びようね。いつか、絶対助けが来るから、絶対に。」


アキラの言葉が響いたのか、杏里は泣くことを辞め。

絶望的な表情をしながらでも前向きな発言をした。アキラが惚れているのはこの性格だろう。男の俺でも尊敬してしまう。正直俺もめちゃくちゃ怖い、初めて聞いた断末魔、死体・・・恐怖で泣きたい気分だ。


アキラは立ち上がり、リュックから携帯とイヤホンを取り出して懸命に情報収集を始めた。


「なぁ、杏里SNSで高校の連れと連絡とか取れたか?」


「ううん・・・。全く。誰からも返信こないよ」


「そっか。」



沈黙が続く。無理もない頭が状況に追いついていない。



「なぁ、歩隆。お前リュックに食料どれだけある?

生憎俺は全くなくて家にあった水とチョコレートだけなんだ。とりあえず、食料調達だな。もしかしたら同じ考えの奴等に出会うかもしれない。」


「よし、杏里立てるか?ここだと・・・近いのはミドリスーパーだな。」


「そうだな、行こうか。早いに越した事はない」


リュックを背負い、アキラが杏里の手を引き静かに俺らはトイレから出た。








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