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閉鎖の桜  作者: うみの はまぐりん
2/11

入院まで

姑とはますます関係が悪くなり姑自身も持病の腎不全の症状がひどくなっていた。

ある日、姑が風呂場で自殺を図ったのだ。図ったと言っても真似事だけで大事にはいたらなかったのだが、それを聞いた私は激怒した。姑にビンタをくらわせると彼女に言い放った。

「お前は透析患者だ。三日病院に行かなければ死ねるじゃないか」

自分が自殺企図を繰り返しているのに姑の自殺企図は許せなかった。


姑を殴ったことで、もうこの家にはいられないと思った。旦那を説得し自宅から少しはなれた小綺麗なアパートに別居に踏み切った。しかしこの別居がさらなる地獄の入り口だったとはこの頃は気がつかなかった。


息子はそれまで幼稚園バスで通園していたが、別居後は自家用車で送迎することになった。また家賃を工面するためにトンカツ屋でアルバイトを始めた。このころから吐き気、胃痛に加えて不眠に悩まされるようになった。寝付けないし寝ても途中で起きる、なぜかいつも4時22分に起きた。体重は50kgをきりうっすらとあばらが浮き出てきた。


そんな生活の中でも一つの安らぎがあった。東京生活時代の親友ゆかりちゃんとかわすファックスのやりとりだった。彼女とはなんでも話せた。お互いに子供は一人っ子の4歳児、彼女はそろそろ二人目を考えていると言った。「だって兄弟がいないとかわいそうじゃん」。私はそんな余裕がなかったので頑張ってねとだけ言った。

しばらくして二人目を妊娠したという知らせを受け取った。私は喜んだ、先に待ち受ける悲劇も知らずに。


トンカツ屋の仕事はあまりうまくいかなかった。お昼時混雑するとてんぱってお客様の前でお膳をひっくり返したこともあった。くたくたになってアパートに帰る毎日、砂をかむような虚しさだけだった。そんななかでもゆかりちゃんとのファックス交換は唯一のなぐさめだった。

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