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ガミキのヘッポコストーリー  作者: ゼロ
銀の煌翼 編
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前日章 『世界』は瞬く間にその『存在』を換えた

 俺の名前はユウキ=イシガミ。ハンターギルド《ヴェンガンサ》所属の剣士だ。

 現在いまではこう言った紹介が当たり前になっているのだけれど、『あの頃』は違った。

 ハンターになった経緯は……まあ簡単で、迷子の俺は拾われたのだ、このギルドに。

 二年前の当時、ハンターギルドを旗揚げしてまだ間もないマスター シリュウが率いたのは同じ故郷の若者数名。

 俺も《ヴェンガンサ》の古参メンバーとして黎明後期から活動に勤しんでいた為、ギルド内ではある程度の地位は築いているみたいだ。

 およそ集団行動と呼べるものに不向きな性格は現在も尚改善された訳ではないのだが、俺をギルドに導いてくれた元相棒や同じ最年少のヘンリーくんを初めとしたメンバーと触れ合っていく中で徐々に《ヴェンガンサ》が居心地の良い場所へと変わっていった。

 こんな感覚ずっと忘れていた気がした。実際はほんの一年余りの事だったんだけれど。


 そう、俺には《ヴェンガンサ》に至る前にとても大切な『場所』が在った。


 初めて出来た友達って奴らと他愛なく過ごした日々。男四人に女一人の変なグループだったけれど、間違いなく『仲間』と呼べる存在だった。

 それが堪らなく懐かしく、かけがえのない程に愛おしい。

 現在、俺には居場所が在る。

 だけど、あの『場所』も紛れもなく俺の居場所。

 俺が『俺』でいる事の出来た唯一の『場所』。そんなつもりでいたんだ。


 ……ただ、それは俺の意志とはあまりにも無関係に崩れ、そして壊れ去った。


 ───気付けば俺は迷子になっていた。


 記憶は確かに存在している。だけど、右も左も分からない。まして自分の身に何が起こったのかなんて尚更分からない。

 記憶は確かに存在していた。だけど、頭で理解出来る範疇をゆうに超え過ぎていて、何が起こったのかなんて分かる筈がなかった。

 だけど、時間は俺に考える猶予を好きなだけ与えてくれた。だからこそ信じ難いが、信じる他なく、受け入れる他なかった。

 だからこそ俺は辿り着く事が出来た。その答えに。


 ここは俺がいた『場所』ではない。


 色んな媒体で何度も観た事がある現象が自分自身に起きたのだと悟った。いや、そう思う他なかったから。


 あの日、俺達五人はいつもの様に笑い合いながら刹那を重ねていた。



 それが突然───世界が割れたんだ。



 言い方を変えれば俺達のいた空間が割れた。これが正しい表現なのかは分からないけれど、抗う事の出来ない見えざる力によってその空間に引きずり込まれた。

 その狭間は蒼白く煌めく光線的な文字の羅列によって埋め尽くされていて、感覚的に天地の概念などなく、すぐにここがこの世に存在していない場所なのだと感じ取った。

 微かにその羅列の一部に座標の様な文字列を見付けたが、それも束の間意識はそこで途切れた。

 目覚めるとあの時怯える様な瞳で必死に俺の手を掴んでいた友達かのじょの姿もなく……、



 見知らぬ『世界』に放り出された俺は文字通り迷子になっていた。

『世界』は瞬く間に『世界』たらしめる意味や存在を換えた……。

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