つまらない
「夏哉、ゲーセンいこうぜ」
「あぁ」
「ごめん、急に行けなくなっちまった。ほんとごめん」
これがドタキャンというやつか、と夏哉は考えていた。
「いいの?霧城君と何か約束してたんでしょ」
「いいんだよ。まぁ夏哉だし」
そう言って笑い、二人は手を繋ぎながら廊下を歩いていった。
これが俺の価値か、と夏哉は考えていた。
下校時間はとっくに過ぎ、皆は部活やら家に帰るやらで廊下には夏哉が一人立っているだけだった。立っていてもしょうがない、と考えた夏哉は一人、廊下を歩き出した。
次の日、俺は廊下に立っていた。扉を開けるか開けまいか悩んでいた。
「っていうか、霧城君ってなんか気味悪いよね、いつも笑ってってさ」
「それ思った。何言っても何も感じてないみたいな」
女子会・・・というよりは女子による陰口大会が開かれていたからだ。
「でも逆に考えてみろよ。何も言わないんだぜ、こっちから断りやすかったりするじゃねーか」
「そういやお前、いつも断ってたよな」
「だって、夏哉だし」
さらに男子まで入ってきた。
これが団結力か、と夏哉は考えた。ある意味で、だが。
しばらくするとその大会も終わり、新たな話題へと移っていた。
「そういや今日、来るんだろ?」
「宅配便が?」
「ちげぇよ、転校生だよ。て・ん・こ・う・せ・い」
転校生か、どんな奴だろう。少し顔がにやけてしまった。
ともあれ、やっと教室に入れる。
ガラッ
扉を開け、中に入るといつものようにおはよう、と声をかけてくる。もちろん俺はそれを返す。
「席に着け~今から転校生を紹介する。黒雪君、入ってきなさい」
綺麗。その少女が入ってきた瞬間に目を奪われた。それは周りの人達も思っていたようで気づけば、しーんと教室が静まり返っていた。
「えっと、黒雪零です。よろしくお願いします」
零が自己紹介を終えた後、わーっと教室が盛り上がった。席は夏哉の隣。不覚にも嬉しいと感じてしまった。
周りにいる人達とは違った雰囲気で、よろしくねと笑顔で言われてしまっては夏哉であろうと少しばかり照れてしまった。
これが夏哉と零の出会いだった。