出会い
何もなかった。
空に色があろうとも、その青を白く染める雲があろうとも・・・・・
会話をしても、何も感じることはなかった。
上っ面の言葉には何も思わず、ただ、偽りの笑顔で、嘘の言葉を交わし合う。いわば『作業』。
泣けば罰金。怒れば逮捕。憎めば社会追放。
誰もが感情という存在を否定し、又、それをなくそうとした。
そうして世界は初めて成り立つ。
『嘘』という何にも劣らぬコトバによって——
—— 僕らに色はなかった ——
※ ※ ※
僕はこの世界が嫌いだ。
皆が、全てを偽ろうとする。
いいキャンバスは持っているはずなのに、誰一人として色をつけようとはしない。
「・・・・・・ということで、今日の授業を終わります。」
僕にしてみれば、授業なんていうものは『洗脳』。
この世界を平和という名で縛り、人々に嘘をつかせ続ける。
幼少からのその日常は当たり前になり、それを疑う者はいなくなった。ただ一人、僕を除いて。
学校を終えると、僕はいつも電車に乗って帰宅する。
いつもどうり、ホームに向かい、二、三分電車を待つ。そして、電車が来れば、それに乗る。ちょうど、その時だった。
「この世界の嘘が嫌いなの?」
「えっ?!」
その声のする方を見ると、僕と同い年くらいの少女が一人、立っていた。だが僕は、動き出している電車の窓からただただ見つめることしかできなかった。
少女の黒くて長い髪は風になびき、太陽の光が彼女を明るく照らしていた。
これが少年と少女の初めての出会いであり、始まりでもあった。