過去を想うか、未来を観るか・・・
誤字・脱字等があれば報告お願いします。
・・・・。
僕は、死んだ。
だけど、目を開けるとそこには・・・・あの銀髪少年がいた。
「やぁ、久しぶり。すぐに会えると思っていたよ。なんせ真は死にたがっていたからね」
銀髪少年は嬉しそうに笑う。だが、真自身の夢の中で見た時とは違う部分が四つある。まず一つ目は、ステッキの飴を持っていない事。二つ目は、雲っぽいのに乗って浮遊している事。三つ目は、右目に眼帯をしている事。四つ目は、雲に隠れて見えにくくはなっているが、銀髪少年の両足が綺麗に消えたように無いことだ。
「何で、そう思うんだ?」
確かに、零が消えたときからは強く思うようになったが・・。
何故この少年が僕を読み取るように知っているのかが分からない。
「真が僕を呼んで、僕が真に現実・・いや未来・・それとも過去かな?兎に角、夢を見せたからかな。正確にはどれも真が経験してきたはずの記憶の一部・・か。」
「じゃあ、今まで僕が見てきた夢は全て僕が経験してきたことだと言いたいの?」
「それは違うよ」
銀髪少年はクスクスと笑った後、部屋の中をグルグルと飛び回り、真の顔にぐっと近づく。真が驚くと、また笑った。悪戯をしては相手の反応を楽しんでいる無邪気な子供のようだった。
「夢は誰もが見る。見ていないと思っていてもそれは忘れているだけであって、いつもいつも見ている。見ない日なんかないんだ。けれど真の言っている夢は、僕自身が見せている・・所謂真の記憶にあたるものと、真自身の脳の処理の一部が見えているものとがあるけど、真の見ている夢の約九割は後者だよ。僕なんてほとんど出る幕はないし、真が呼んでくれないとまともに出ることすら叶わないしね。まぁ、僕達は君達によって作られているといっても過言ではないから仕方ないんだけどさ、暇なんだよね~。もう少し頻繁に呼んでほしい所だけれど僕は長生きしたいからさ、そんなことは望まないよ。といっても、もうそろそろ・・・・ね。まぁ、色々あるって事だよ。大人の事情ってやつ?」
銀髪少年は愚痴を言った後少し顔を僻ませたがすぐにフッと笑い、雲のようなものの上で仰向けになったあと手を組み、それを頭の下へ潜り込ませた。気持ちいいのか、気分がいいのかは知らないが、口笛を吹きながらおっとりとしていた。
「・・・っと、そんな事は置いといて、真、幾つか質問するよ?」
「いいけど・・何か意味があるの?」
「答え方と真の想いによっては・・かな・・・いや、何ともいえないか・・。」
曖昧な答えを出す銀髪少年に対して、真は「何なんだろう」とただ思うだけであったが、吹っ切れたかと思えばまた困った顔をし、嬉しそうに微笑んだかと思えば何か物足りなさそうな、悲しそうな顔をする。そんな銀髪少年に何故か親近感を持ち、いつの間にか真自身も微笑んでいた。
「どうしたの、急に微笑んだりして?」
「いや、ただ何となくだけどとても親しみやすくてさ、何て言うんだろう・・・こう・・・僕の写し身?って言うかもしくは・・う~ん・・・そう!ドッペルゲンガー?とにかく、近いなって感じるんだよ」
すると銀髪少年は何かを思いついたのか「そうだ!」と言った。
ニヤニヤし始め何をたくらんでいるのかと思っていると、銀髪少年の姿はみるみる真そっくりになっていた。銀髪少年が真の隣に行くと、向かい側に鏡らしきものが出てきて、それで見てみると一卵性の双子のように似ている真と銀髪少年の姿があった。いきなりの出来事にしばらく唖然としていた真であったが、隣で笑っている少年を見ると自然と顔が緩んだ。
「何か、弟が出来たみたいだ」
真がボソッと呟くと、それが聞こえたのか、少年も
「真はある意味僕のお兄ちゃんだからね」
と言った。
その後は少年も元の姿に戻り、一時間ほど他愛のない話をしていた。
二人の笑いあう姿はまるで本当の兄弟のようだった。
「さて、たくさん真と話せた事だし、そろそろ質問しなくちゃね。じゃあまずは一つ目。『真は僕を信じる?』」
「もちろん!」
即答だった。その答えに安堵したのか、銀髪少年もほっと肩を撫で下ろす。だがまだ一つ目だ。まだ安心できないと思ったのかまた顔を強張らせた。
「じゃあ二つ目」
そういって少年は親指と人差し指を立てる。
「『真は未来を観たい?それとも過去を・・零を想うの?』」
「・・・・。零を・・過去を想うよ」
真にとってはすでに答えは決まっている事だったが、何故か即答する事ができなかった。
「じゃあ最後。」
銀髪少年は手に顎をのせ、鋭い目つきで真を見た。
「『真は何を信じるの?』」
「それは君だって最初の質問で答えたじゃないか」
「それは悪までも僕自身を真がどう思っているかを聞きたかっただけで、今僕が真に聞いている事は、真自身はこの世界の中で何を信じるかだよ」
真は少し難しい顔をした。そしてその様子を銀髪少年もジロジロと見ている。シーンとした空間の中、ただ答えを探す者と待つ者が難しい顔をしているだけであった。
「・・・・そうだな、信じるものか・・僕の信じるものは僕自身の『感情』かな。僕はアノ世界においての異例者みたいなものだったからさ、何か孤独感って言うか・・そんなものを感じていたんだよね」
「そうなんだ。・・よし、じゃあね。いってらっしゃい。真自身が信じるものをもって・・」
そう言って銀髪少年は手を振った。
真の足元がガコッと音を鳴らし開くと、真は下の見えない真っ暗闇の中へ落ちていった。真が落ちていく直前、銀髪少年は真の耳元で「僕はずっと真の傍にいるからいつでも呼んでね」と囁くと、真は驚き、又、嬉しそうに笑った。
「うっ」
銀髪少年の左手は綺麗に消えていった。
受験のため、更新は三月下旬くらいになりそうです。
すみません。