第3話「涙の思い出」
結局一日経ってもママは帰って来なくて、連絡すらもなくて…。
おねいや親戚のおばさん達、皆は一日中大慌てでママを探してたのに私はずっとお布団の中で泣いてたんだ。
ママは私の事が嫌いになったのかなとか、私がママの作ってくれた料理で嫌いなお野菜を残しちゃったからなのかなとか…色々と嫌な考えがグルグルしていてたの。
でもおねいはこんな時も笑顔で私を気にかけてくれていたの。
「みっちゃん、もうお昼だよ。ご飯食べよ?ご飯食べないと元気出ないよ」
「いやっ、食べたくないっ」
「みっちゃん…」
ママが帰って来ないのに…ずっと笑ってられるなんて、おねいは本当はママが嫌いなんだって思った。おねいが本当はママが嫌いだから、ママは帰って来ないんだって…ママが帰って来ないのはおねいのせいにしたりもした。
でもおねいは自分も辛いのに私を不安にさせないために必死で笑顔を作ってたんだよね。
それから私達はママが帰って来るまでの間、親戚のおばさんとおじさんの家に預けられる事になったの。
そのおじさんとおばさんの家におねいは小さい頃に何度か遊びに行った事があるみたいだったけど、私は初めてだったから、さらに不安でずっとおねいの後ろに隠れてた。
「さぁ、美香ちゃん、美月ちゃん、遠慮なく上がってね」
「はいっ、ありがとうございます。おじゃまします」
「………おじゃまします…」
おねいに手を引かれて、恐る恐る初めての家を上がって、ゆっくり進んでいく。
「あ、隼人さん、こんにちは。ひさしぶりです」
おねいが軽く頭を下げて挨拶した先には…この頃まだ高校生だった隼人がいたの。
今と変わらず目付きが悪くて、背も凄く高いから見下ろして睨まれている気がして、凄く怖くて思わずおねいにぎゅっと抱き付いちゃったの。
隼人は私達を横目でチラリと見て、無愛想に「ああ」と一言だけ言って奥の部屋に言っちゃったんだ。
ほんと隼人ってば、高校生の頃から何も変わってないんだから。
「こら、隼人!ちゃんと挨拶しなさい!…ごめんね、美香ちゃん、あの子ったらいつもああなのよ」
「いえ、そんな気にしないで下さい」
でもあの頃の私は無愛想で冷たい感じの隼人が凄く怖くて、優しくしてくれたおばさんやおじさんとも中々お話が出来なかったの。
その後何日もママを探したけど、何もママの手掛かりはなくて…もしかしてママはどこかで死んじゃったんじゃないかって考えるようになって…私はどんどん落ち込んで、ついにはご飯も食べなくなってしまったの。
おねいにおじさんやおばさんは凄く心配してくれていたけど、学校もお休みして、ずっとずっと泣いてたんだ。
今すぐママを探しに行きたいのに、ただ泣く事しか出来ない自分が 嫌でさらに悲しくなって…泣いての繰り返し。