事後処理
長らくお待たせいたしました。八話目投稿です!
ーーーあれ?俺いらない子じゃね?
そう思ってしまったのは仕方がない事ではないだろうか。なんせ、初陣だーなどと言っておきながら一人も敵を倒して(無力化して)いないのだから。やった事といえば、山の道無き道を駆け上って疲れ果てた一人の前に現れただけ。そんなの草蛇でもできただろう。
「鏡美と草蛇達のスペックが予想以上だったのは嬉しいが…」
そう、どうやら俺は、眷属のことを少々過小評価していたらしい。なんと今回の戦闘では、戦死者どころか負傷者一匹いなかったのだから。これは後で、よく労ってやらないといけないだろう。
だが、今はそれよりも。目の前で気絶しているこいつと、その仲間…侵入者達に聞かねばならない事がある。
「お前達、戦ったばかりで悪いがこいつともう一人…鏡美が捕縛した奴を残り三人の所へ運んでおいてくれ。俺はこいつらの独房を造らないといけないからな。」
*****
「う…?」
意識が覚醒する。だが体が拘束されている事から察するに、どうやら俺は捕まっちまったらしい。
辺りを見回すと、俺以外の奴らも全員縛られて転がされていた。
「目が覚めたようだな。」
「「「「!?」」」」
突如聞こえた声に振り向いた、俺以外の奴らが驚く。何故ならそこにいたのはあの白蛇だったから。
白蛇の声に、隊長殿が錯乱したかのように叫ぶ。
「なっ…なんなんだお前は!私達をどうしようというのだ!?」
「 そう怯えるな。別にとって食おうというわけではない。ただ、少々私の質問に答えてくれれば良いのだよ。
…まず、お前達は何者だ?」
「ふん、化け物に話すことなど「俺達は、合衆国国軍の特殊部隊の者だ。」き、貴様!何を勝手に答えている!?」
隊長殿を遮って答える。というか隊長殿は、実は馬鹿だったらしい。今話の主導権を握っているのはあの白蛇だ。それに、俺達に(無傷にすませているとはいえ)攻撃してきたことから、あの白蛇が少なくとも味方ではないことは自明の理だ。なのにあの態度…自殺なら一人でやってくれ。
「ほう、お前は真面目に答えるのだな。懸命な判断だ。後の質問もお前に答えてもらおうか。…鏡美、そこの愚か者を少し黙らせておいてくれ。」
「シャア!」
「な、お前は!?止めろ!放せ!モガガー!」
白蛇の命令に、あの牙がおかしい蛇が隊長殿の口に蔦を噛ませることで答えた。隊長殿があの蛇に過剰反応していたのは、つまりそういう事なのだろう。
「五月蝿い奴も黙った事だ。質問を続けよう…お前達は何をしにここに来た?」
「突如起こった異常事態の調査と、そのただ中にある国と人々の救出…が、俺達以外の表向きの言い分。だけど俺達はそもそも極秘任務でここに来たから、表向きには公表すらされていない。
任務の内容はーーー『この事態の原因を特定し、あらゆる情報を持ち帰れ』だ。」
「ふむ…では次。お前達の任務は失敗したが、その時にはどうしろと命じられている?そして合衆国はまだ部隊を送ってくるか?」
「『任務失敗後は、即座にその旨を連絡せよ。もし捕縛されたなら、けして口を割るな。』が命令。そして…十中八九、送り込んでくるだろう。成功した場合の利益が半端じゃないからな。」
さて、全て正直に答えているが(命令なんてもう無視だ。俺は命が惜しいんだよ)…この蛇さんのお気に召したかね?
「…分かった。素直に答えてくれたこと、感謝する。だが、私としては…いや、『私達』としてはお前達を帰す訳にはいかない。すまないが、しばらくは捕虜として生活してもらう。」
「ああ、構わないさ。こっちは命があるだけで御の字だからな。」
こうして俺達は、しばらくここで暮らすことになった。自由にはできないだろうが、まっ、休暇だと思って気儘にやるさ。
*****
ーーー八百万の神のおわす国。その首相官邸で、二人の…いや、一人と一柱が話していた。
「そ…それは本当ですか!?」
「ああ。今日、私の領域にも異国の者が侵入して来てな。そして各地へ走らせた斥候から、どうやら他の神も戦闘になったと連絡が来た。これは最早一刻の猶予も無いだろう。」
「は…分かりました。では議事堂の準備を致します。日程はどのようになさいますか?」
「今日中に全国の神へ招集をかける。『会議』は明日決行だ。」
ーーーそして後日、あらゆる神が議事堂に集まることとなったのだった。
次回、新たな神々全員集合です。