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第1章  始まりを告げる悲劇

 科学が進んでいく中。

 もうどれが『ヒト』なのかさえ、分からなくなっていた。


 町を歩けば必ず居る【人形】たち。

 それらにはちゃんとした名前がある。

 人がヒトを創ったのだ。

 世界が絶賛した最初の人形【サリナ】から始まった。

 世界的大企業の会社、ドーラル社が創りあげた傑作。

 人のように行動し。

 人のように喋り。

 人のように個性がある。

 ドーラル社はこの人形達『エンジェィル』を世界的に売り始めた。

 すぐさまこの情報は全国に広がった。

 おもちゃ会社はもちろん。

 電気会社などもすぐ買い始めた。

 自分で顔を選び、性格を創り、言葉、表情、名前、スタイル……。

 人々は追求し続けた.

 波紋のように乾いた世界を潤した。



      *



 3ヶ月前、最愛の恋人を失った。


「う、そだろ……?」

 現実だと知るのに時間などいらなかった。

 ああ、もういないんだと。

 悲しいというより、寂しかった。

 冷えた体がより現実感を増させていった。

「残念ですが」

 そんな医師の声さえリアルだった。


「無駄になっちまった」

 一人きりの部屋の中でぽつりと声を落とした。

 小さい箱。

 開くと真ん中に指輪が寂しそうにあった。

 今日、渡すつもりだった物なのに、わたすほんにんがいんなくちゃ意味がない。

 端無十八はゆっくり息を吐いた。

 こんなことドラマの中だけのことかと思っていた。

 現実に、しかも目の前でおこるなんて思っても見ないことだった。

 そんな彼が『エンジェィル』に出会ったのは1週間前だった。

 でっかいショーウィンドウに『エンジェィル』の原型、『ドール』が並べてあった。

 様々な顔立ち。

 スタイル。

 店の中にはいると顔のパーツ、髪が並べてあった。

 はたから見れば不気味な後景だ。

 そこには、綺麗なガラスケースに入った愛する人がいた。

 息が止まった。

 死んだはずの人がいた。

 無意識なまま十八は購入していた。

 No.777の非売品『エンジェィル』で、値段も他の『エンジェィル』に比べれば格段に高かったが十八の家には金が有り余るほどあった。

 十八は家に帰ってすぐプレグラムを入力し始める。

 愛する人の名前、行動、言動、そして記憶を入れていく。

【この『エンジェィル』はドーラル社777体目の『エンジェィル』です。外見は完成済みですが、他の機能は備わっていないので独自で入力してください。

 なお、この『エンジェィル』は特殊で、自分が『エンジェィル』ということを知らないのであらかじめご了承ください。………では、貴方の幸せを祈っています】

 箱に入っていたデジタル説明書を聞き終えると、箱が自動的に開いた。

 綺麗な栗色の髪にガラス玉のような瞳。

 まさしく彼女だった。

「おはようございます」

 

【貴方の幸せを祈っています】


 もう壊れていたんだ。

 でもどうしても支えがほしかったんだ。


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