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不死身の魔法使い

作者: 散散満
掲載日:2026/03/15

2026/03/15 誤字修正

『森の奥に邪悪な魔法使いが住み着いたらしい』


 王国の城下にはそんな噂が流れていた。狩人が森の中で黒いローブ姿の人物が鶏の首を切り血を振りまいているのを見たとか、薬草採りに行った農夫が禍々しい毒草の畑を見たとか、不審人物の目撃情報も集まってくる。だが実際に被害にあったものもなく人々は恐れながらも放置していた。


 しかしそれから数年後、城下町で疫病が流行した。そんな中で『あの魔法使いのせいではないか』という話が人々の間に広まりはじめ、ついに一部の気の荒い者たちが魔法使いの住処を特定し、そこを襲撃した。急襲を受けた魔法使いは魔法を使うこともなく彼らの手にかかり命を落とし、その死体は城外に晒し者にされた。


 異変が起きたのは翌朝だった。魔法使いの死体が消え失せていたのである。夜中のうちに獣が食い尽くしたのではという者もいたが、食い散らかしたあとも引きずったあともない。そして決定的な出来事が起こる。森に入った狩人が黒いローブの魔法使いを目撃したのである。偵察に行った面々は魔法使いの拠点周辺に仕掛けられた罠に引っかかって撤退した。襲撃を警戒しているのは明らかであった。


 これはもう手を出さないほうがいいという声もあったが、恐慌に陥った人々はさらに人数を増やして襲撃をかけた。そしてある程度の犠牲は出たが再び魔法使いは命を落とし、またしても城外へ晒された。そして深夜、前回のこともあり見張りを立てていたにも関わらず彼らの前で魔法使いの死体は忽然と消え去った。そしてまた森の奥で黒ローブの魔法使いが目撃される。


 ここに至って噂は国の中枢まで届いた。国が軍を動かし、今度は魔法使いを生きたまま捕らえた。そして尋問された魔法使いは自らに復活の魔法をかけていたのだと説明した。王は死刑囚を処刑場へと引き出してその魔法をかけるよう命じ、魔法使いはそれに従った。そして死刑囚は処刑されたが、翌朝には処刑場で復活していた。この様子を見ていた王宮付きの魔法使いは「魔法自体はわかったが自分で使うには魔力が足りない」と評していたという。死刑囚は牢に戻され永遠に繋がれることになるという。


 復活の魔法が事実だとわかった国王は自分自身と生まれたばかりの王子にその魔法をかけるように命じた。王宮付きの魔法使いがたしかに同じ魔法がかかっていると断言し、魔法使いはそのまま幽閉されていたがある日突然姿を消した。かつての拠点もきれいに始末されており魔法を使って何処かへ去ったのであろうと思われた。捜索も行われたがその行方は全く手がかりがなかった。


 それからさらに十数年後、異常が発生した。いや、発生しなかったと言うべきか。牢に閉じ込められていた例の死刑囚が病にかかり、命を落としてそのまま復活しなかったのである。『一度復活したらもう一度魔法をかけ直す必要があったのではないか』『病気による自然な死では復活できないのではないか』といろいろ仮説が立てられたがその検証をすることは不可能だった。


 復活の呪文が一体どういうものであったかの新たな情報が得られたのはさらに十数年後であった。王が病に倒れ、治療のかいなくついに命を落としたのである。あの呪文は有効なのであろうかと見守る王の家族と臣下たち一同の眼の前から王の遺体は消え失せ、かつて王が復活の呪文をかけさせた場所で復活した。呪文をかけさせたその当時のままの姿で。


 おそらく復活の魔法とは自然死かどうかにかかわらず一度だけ、呪文をかけたときのその状態で復活するものであろうと推定された。魔法使い自身はときどき自分に魔法をかけ直していたのであろう。


 そして王宮では王の復活について箝口令が敷かれた。何しろ復活の魔法をかけてから30年近く。そろそろ老境に入ろうかとしていた王が壮年の姿になってしまったのである。何者かが入れ替わったと疑われても不思議はない。


 そして別の問題も発覚していた。同じく復活の魔法をかけていた王子の存在である。やがては王位を継ぐだろうと思われていたが、もし命を落とすようなことがあればおそらくは乳児に戻ってしまう。これが起きてしまったら王が若返ったという以上の大問題だ。


 これを何とかするにはあの魔法使いを探すしかないかと改めて大捜索が行われたが、やはりその行方は一向に知れなかった。他の高名な魔法使いに頼ってみても解決する手段を持つものはいなかった。


 そしてそれから長い年月が流れ、王位を孫に譲った後も異常なまでに長生きした王と、その子で一度も王位につかぬままいつの間にか記録から消えた王子の存在が歴史書に記されている。

要するに『セーブ機能』が秘伝というレベルだったらどうなるんかなと書いてみた。

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