第5章 ぽかぽか邸 ― 静かな夜のリビング ― 柊の家族 ―
外は静かな雨。
リビングの灯りの下で、柊が初めて語る自分の“家族”のこと。
環と凪に、柊の心の奥が少しずつ開かれていきます。
夜。
外の雨音がやさしく窓を叩く中、
3人はリビングのソファに並んでいた。
「なぁ環……環は過去のこと、いろいろ話してくれただろ?」
「そうですね……話しましたね。凪くんにも。」
凪がうなずく。
「うん。あのとき、聞かせてもらってよかったです。」
柊は少し目を伏せ、静かに言った。
「じゃあ、今度は俺の番だな。」
凪と環が目を向ける。
部屋の灯りが穏やかに柊の横顔を照らしていた。
「俺は、高校を卒業した年に、両親を事故で亡くした。
そのあと、柊真さんに引き取られて――
柊真さんも、奥さんをずいぶん前に亡くして、ずっと1人だったんだ。
俺を引き取ってからは男の2人暮らしだった。……で、今に至る。」
一瞬の静寂。
雨の音が遠くでやさしく響く。
環がそっとマグカップを置いた。
「柊真さんが……柊を支えてくれたんですね。」
柊は小さく笑う。
「そうだな。柊真さんは父親でもあって、
でもそれ以上に、“生き方”を教えてくれた人だ。」
凪がまっすぐに言う。
「……柊先輩が今、誰かを支えられる人になったのは、
柊真さんのおかげかもしれませんね。」
「かもしれないな。」
柊は2人を見渡して、柔らかく目を細めた。
「でも今は――お前たちが、俺の支えだ。」
環が微笑み、凪が少し照れたように笑う。
「僕も!僕も入っててうれしいです〜」
「そうだな。凪も俺の家族だな。」
「じゃあ、僕もずっと一緒に住んでもいいですよね?」
「もちろんです!凪くんも家族ですから。」
「……悪くないな。」
3人の笑い声が重なって、
外の雨音に静かに溶けていった。
過去を語ることで生まれた、現在のぬくもり。
“支える”ということは、“支えられる”ことでもある。
柊の言葉が、ぽかぽかと胸に残ります。




