12岐路 未来へとつながる選択肢
子供たちはギルドが保護した
参加者は王国騎士団が確保して鑑別所に連行された
リョンリョンはアルージシと一緒に出てきた
「リョンリョン!」
4人が心配そうに駆け寄った
「今回の件、リョンリョンの単独行動で間違いないかね?」
アルージシは冷たく言い放った
「違います!俺らは…」
「デンリュウ!」
リョンリョンが涙ながらに声を張る
デンリュウはいたたまれなくなって
リョンリョンを引き寄せ抱きしめた
「違うだろ。お前1人が被って何になる。俺たちはみんなで今回の件に関わった。たまたま中にいたのはお前だっただけだ。たぶん他の誰かがそうなっていたらお前だって同じようにするはずだ」
リョンリョンはデンリュウの胸の中で声を殺して泣いた
「アルージシさん、ギルドで話せますか?」
ミポポはそっとしてあげたい気持ちがそう言わせたようだった
「わかりました」
「リョンリョンが落ち着いたら一緒に行きます」
4人の足音が路地裏に響き渡り、遠く霞んでいく
「落ち着いたようだな、みんなが待ってる」
リョンリョンはデンリュウの手を強く握った
(いつもは冷静を装ったり、エレーナとふざけたりしているが
普通の女の子だ。寂しい時も辛い時だってある。今回のように強がったりすることも…)
手を繋いだまま、ギルドに歩き出した。
リョンリョンは終始無言だった
◇
【冒険者ギルド】
扉を開けるとモルロが待っていた
「デンにぃ!あー手つないでる、ずるーい!」
ミポポはモルロの頭を撫でて
「今日は許してあげてね」
「ふーん、わかった!」
そう言って子供たちのところに戻って行った
「それでは奥に…」
エレーナもその様子を横目で見てはいたが
特段何のアクションも起こさなかった
何回か来ているはずなのに裏口からギルドマスターの部屋までがすごく遠く感じる
こんなに静かで物音一つしないことにも気づく
「さぁ、入って」
いつもの部屋
最後に入ったリョンリョンがドアを閉めた
そして、いつものソファーに腰掛けた
しばらく沈黙が続いた
「いやー、こういう空気は好きじゃないんだよ。
わかってる、わかってますよ、君たちのことは!
立場上人前では毅然に振る舞うしかないんだから」
「…すいません」
リョンリョンは誤った
「リョンリョン、わかっていますよ。今回もスーヤラードのギルドマスターが関わっていたんだね?」
「どうして、それを?」
「スーヤラードギルド独自の依頼で向こうから冒険者を遣すから
あの場所に連れて行けと。そしたら王国騎士団にまで話が伝わっていて、あの騒動と言うわけだ」
リョンリョンは話し出す
「ツッコミどころがいっぱいですね。
まず、エドガルの王国騎士団をどうやって動かしたか
2つ目に、何でわざわざ向こうから冒険者を遣したのか
3つ目、何のためにあのギルドマスターがオークションに出て2人の奴隷契約を行ったのか」
「何?ギルドマスターが奴隷を買った?」
「えぇ、サキュバスとエルフの少女を」
「…証拠がない…と言うか取れないね」
リョンリョンはマジカメで撮った画像を見せた
「すごい!何ですかこれは?ここに写っているのは…間違いない、チリアロだ。本当に会場にいたんだ。ただこれは公的な証拠にはならない」
リョンリョンは今回の件を分析する
「今回の件で、そのチリアロが絡んでいるのは間違いない。自分たちの用が済んだ後、先に会場を離れ、自分が呼び寄せた冒険者をアルージシさんのところに向かわせる。騎士団にも同じタイミングで声をかけたんだろう。その後は言わずもがな」
リードは続ける
「あの男の総取りだな。ギルドとしての功績と自分の欲しいものはしっかり手に入れている。一枚も二枚も上手だったってことだ」
「今回の件で上から何か言われたら、リョンリョンには厳重注意と言うことで収めておく。何も言われなければ、放っておくよ」
「ありがとうございます」
「ところで相談なんだが…子供たちを解放した後、あの人数をどうする気だったんだ?」
「ここにいるルボーアさんにミドーガルドへ連れて帰ってもらう予定だったんです」
「それはそれでこちらのギルドから依頼したいのだが」
「いいですよ、最初からそのつもりだったので」
「それは助かります」
「はーい!みんなー集まってー」
モルロを含め10人の子供たちがデンリュウの声に集まった
「今まで大変だったね。パパママと別れてそれぞれ狭いところでよく頑張ったね。でも、もう大丈夫。このお姉さんと一緒にミドーガルドって言う村に行ってもらう。そこではお手伝いをしながら勉強したり、今まで以上に大変なこともあるかもしれない。でも、自分で未来を作っていける。将来なりたいものがあれば、きっとそれにもなれる」
「おれ、ぼうけんしゃになる!」
「いいね!君はきっと強くなる、強くなれる。だから、自信を持って頑張って欲しい。そして何よりこの先の人生を楽しんで!」
「はーい!」
モルロはデンリュウの裾を引く
「わたしはここにいちゃダメ?」
「そうだな、ダメじゃないけど寂しい思いをすることになるよ。みんなと一緒におしゃべりしたり遊んだりして、大きくなったらまたここにおいで!」
「…うん…わかった!」
◇
翌日、みんなはミドーガルドに向けて出発した
「デンにぃ!バイバーイ、遊びに来てねー」
◇
「こうなるとやっぱりスーヤラードに俺たちが行くしかないようだな」
「チリアロの不正を暴いてやらないとアタシはきがすまないよ」
「乗りかかった船だ。俺たちもお供するぜ!」
ミポポも大きく頷いた
「さぁ、明日からまた忙しくなりそうだね」
リョンリョンの強い意志が感じられる
月は高く登っていた
お読みいただきありがとうございました!
この後を連載するかは未定なので
一度ここで完結とさせていただきます。