11岐路 奴隷オークション
【冒険者ギルド】
エレーナとリョンリョンが話している
「ウルシバラ!」「ダーリーン!」
2人が走ってデンリュウに向かってくる!
「デンにぃ!おつかれー」
「モルロ!お疲れ様」
ガッシャーン
さすがの2人も少女にはぶつからないように避けたため壁に衝突した
「イタタ…幼女を使うとは卑怯な…」
「リョンリョン、おつかれー。リードさん達は?」
「そろそろ来るんじゃない?」
「デンリュウ、ごめん、待たせたか?」
「いえ、自分も今来たところです」
「デンリュウさーん!」
四足走行してくるが、こちらもモルロを見て急ブレーキをかけた
「ルボーアさん!」
「わ…私も何か手伝えることがあれば」
「ありがとうございます」
「プロジェクトとしては奴隷の全解放が目的。中に入れるのはリョンリョンだけ。表でデンリュウとルボーアさん、裏口で俺とミポポでリョンリョンからの報告を待つ。表、裏口でも妙な動きがあれば情報は共有したい。イヤーリンクスで連絡を取り合おう!」
■■■イヤーリンクス…イヤホン型のトランシーバー。
魔力を使うため声に出さなくても会話が可能■■■
◇
5分おきくらいに路地裏の建物に人が入っていく
「招待状に書かれた入場時間、バラバラに割り振られて表と裏から人目につきにくくしているようね」
ミポポが指摘した。デンリュウは注意を促す
「この後はイヤーリンクスを使って声を出さないように」
〈りょーかい〉
〈そろそろ俺たちも配置に着こうか〉
〈アタシも入り口に向かうわ〉
〈リョンリョン…気をつけて〉
〈ウルシバラ…なんかあったらすぐに報告する〉
◇
20坪くらいの会議室に木製の折りたたみ椅子が並べられていて、両サイドには3人掛けのソファーが1つずつ配置されている
正面には講演台があり入り口が左右に1つずつ、昨日行った部屋がバックヤードになっていて右の扉と繋がっているようだ
どこに控えていたのか、ゾクゾクと人が会議室に入ってきた
タバコの匂いが鼻をつく
喫煙所がどこかにあるのだろう
全員が着席した
リョンリョンは右手のソファーに座っているのが、スーヤラードのギルドマスターだと気がついた。
何かの時のために持っていたメガネと帽子を深く被った
星柄黄色男と横にあの司祭が講演台に立つ
正面向かって右側扉の前には"ピ"と呼ばれていたエルフの少女が立っている
「皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。諸事情により、時間短縮のため挨拶などは割愛させていただき早速始めさせていただきたく存じます」
「それでは最初の1人目です!」
マイク無し地声で声を張る
アナウンスと同時に右の扉が開かれ
オークの少年が入ってきた
「彼は潜在能力が高く、冒険のお供としてボディガードとして
今後の活躍が見込めます。今回は金貨5枚からのスタートです!」
どれくらいか沈黙が続いた。やはり彼は買い手がつかないのだろう
「原価割れ承知!金貨3枚からでいかがでしょうか!」
またしばらく沈黙が続き
「金貨3枚と銀貨1枚」
リョンリョンだ
「入りました!金貨3枚と銀貨1枚
さぁ、皆様他にございませんでしょうか?
…
こちらご入札です!」
拍手が湧いた
「こちら奴隷契約とお支払いは全行程済み次第行いますので宜しくお願いいたします」
「続きまして…」
2人目も買い手が着かずリョンリョンが入札した
〈勝手がわからんがこんなものなのか?〉
〈星柄黄色男もちょっと焦っている様子だから、あまり盛り上がってないみたいね〉
〈ちょっと待って!スーヤラードのギルドマスターの使いが星ガラになんか話してる〉
「失礼致しました。今回最後に予定しておりました娘を次にお出ししたいと思います。今回の目玉、サキュバスの娘です!」
会場は一気に盛り上がった
「こちら、金貨10枚からのスタートです!」
「12枚」「13枚」「18枚」
「18枚出ました!」
「20枚」
リョンリョンはこのタイミングにかけた
「25枚!」
「28枚」
あえなく超えてきた
「さぁ、28枚出ました」
「35枚」
あのギルドマスターだ
「35枚…いかがですか?
はい!こちらご入札おめでとうございます!」
〈また、ギルドマスターの使いが星ガラのところに行った〉
〈引っ掻き回すわね〉
「えー大変お待たせ致しました。次はですね…今回予定しておりませんでしたが…この右の扉の前にいるエルフ。こちらになります。
私が直接に躾させていただいたので…25枚からのスタートとさせていただきます」
「28枚」30枚」
「35枚」
「さぁ、35…」
「50枚」
またギルドマスターだ
「50枚出ました!さぁいかがでしょうか?
はい!こちら50枚で決定でございます!
それで…この高額2人につきましてはこの後すぐに契約、お支払いとなります。司祭、裏でお願いします」
ギルドマスター一行と司祭が裏に入った
「こんなことあまりないよな」「どうせお得意さんのわがままだろ?」「欲しいものだけ手に入れてサッサと帰っちまうんだろ」
会場が少しザワついた
「さぁ、続けていきましょう!」
◇
〈ギルドマスター一行っぽいのが裏から出てきたぞ。どうする?〉
〈ここは見逃すしかないですよね。中にいる奴隷の方が多いので〉
〈わかった!〉
◇
〈最後の入札が始まるわ〉
「さぁ、泣いても笑っても本日最後の商品となります」
〈デンリュウ!なんだ、あれは!〉
建物表側と裏側の路地を50人くらいの王国騎士団が埋め尽くす
〈リョンリョン、まずい!一斉捜査が入る!
先頭にいるのは…アルージシさん?!〉
〈デンリュウさん、まさか…〉
〈アイツに嵌められた…〉
ピーーー
路地裏に笛の音が響き渡る
音を確認して騎士団は中に侵入していく
〈アイツ、自分の欲しいものだけ手に入れて、後は筋書き通りの捕物帳にしやがった〉