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第70話:女神がくれた始まり

 画面を覗き込んだエレナと明日香は、互いに目を合わせた。その瞳は瞬く間に潤み、唇には喜びが浮かぶ。


「ついに……ついにグッズ化されましたのね。おめでとうございますわ、蓮!」


「蓮さん、本当におめでとうございます! 私も嬉しいです‼」


 二人の祝福を受け、蓮はぐっと唇を結び、目元を手で覆った。


「あぁ……! 今までずっと、ずっと待ってたんだ……主人公やヒロイン、ライバル、それに最終シーズンのメンバーばっかり優遇されて……サードシーズンのアマルフィーナは、一度もグッズ化されなかったからな……」


 その声は低く、けれど熱を帯びている。胸の奥から押し出されるような言葉だった。明日香も深く頷く。


「そうですよね。蓮さん、いつも『またいつものメンバーか。アマルフィーナは人気ないからな~』って不貞腐れてましたもんね!」


 すかさずエレナも微笑を浮かべ、茶化すように言葉を足す。


「蓮はいつも『まあグッズなんてあっても場所取るだけだし、別にいいんだけどよ~』と強がっていましたものね」


 からかうような二人の言葉。和夢は、さすがにこれは蓮が怒るのではないかと、ひやひやしながら様子をうかがった。しかし――


「ああ、そうだ! そうだよ‼ でもやっと……やっとアマルフィーナが、ついに認められたんだ……!」


 蓮は否定するどころか、大きく頷き、こらえきれぬ笑みを浮かべる。その目はほんのりと潤み、普段では見られないほどのハイテンションだった。


 和夢は完全に対応に迷っていた。どう返せばいいのか、正解が見えない。


 そんな和夢に気づいたのか、蓮ははっとして顔を赤くし、「うおっほん」とわざとらしい咳をする。


「……わりぃ、ちょっと落ち着くまで待ってくれ」


 そう言って、熱を持った頬を冷ますように三人へ背を向けた。


 和夢は困惑しつつも、蓮の背中を見守る。そんな彼の耳元に、エレナと明日香の小声が届いた。


「蓮があんなに興奮している姿、和夢さんには珍しいですわよね」


「は、はい……正直驚きました。コラボカフェに出るって、そんなに珍しいことなんですか?」


 和夢の問いに、エレナが静かに首を振った。


「珍しいというより、アマルフィーナがコラボカフェに出るのは今回が初めてなのですわ。それに……蓮にとって、アマルフィーナは特別な存在ですから」


「特別……?」


「蓮がレジェンドレコードを始めたきっかけ、それはアマルフィーナ・ノクターンなのですから」


 意外な言葉に、和夢は思わず身を乗り出す。


「えっ、それってどういうことですか……?」


 エレナは、蓮の背中をちらりと見やってから続けた。


「当時、蓮はカードゲームとしてのLRには全く興味がなかったみたいですの。ですが、たまたまテレビで放送していたサードシーズンを目にして……その時に出会った女神デッキの使い手、アマルフィーナ・ノクターンに心を奪われたのですわ」


 明日香が補足するように笑みを浮かべる。


「私やエレナさん、それに和夢君もデッキを組むときって『自分の好きなカード』を軸に考えるでしょ。でも蓮さんは『アマルフィーナというキャラクター』を軸にデッキを作ってるんだよね」


「――それじゃあ、あの……コントロールデッキ必須のプラフマーを入れてないのも?」


「うん。女神カードの比率を上げたいのはもちろんあるけど、アマルフィーナの世界観を壊したくない、って前に言ってたね。そう言った意味では蓮さんの構築も私と似てるのかもね」


 そう言って明日香ははどこか嬉しそうに微笑んだ。


 そんな中、エレナが背中に声をかけた。


「蓮、落ち着きましたか?」


「……ああ。すまん、ちょっと取り乱しすぎた」


 振り返った蓮の表情は、まだ少し赤みを帯びていた。だが次の瞬間、その瞳が真剣に細められる。


「それでよ、一つ頼んでもいいか? ……その、コラボカフェ、一緒に行ってくれねえかな?」


 声はわずかに震えていた。けれどその奥には、長年の思いがようやく叶った喜びと、それを共有したいという願いが確かにあった。


「もちろんですわ、蓮!」


「任せてください、蓮さん!」


 二人は即答だった。その瞬間、完全に流れに乗り損ねた和夢は、そろそろと手を挙げる。


「え、えっと……まだアニメもほとんど視聴できてない僕も行っていいものなのでしょうか? というか、コラボカフェってまだよくわかってないですし……」


 蓮は思わず吹き出し、そして少し照れくさそうに笑った。


「むしろあたしのほうが、一緒に来てくれって頼む側だ。頼んだぞ、和夢後輩!」


 そう言って、拝むように両手を合わせる。その真剣さに、和夢も自然と背筋が伸びた。


「はい、分かりました! 三人がよろしければ、僕もお供させていただきます‼」


「ありがとうな、和夢後輩‼」


 蓮は小さく口元を緩め、照れ隠しのように和夢へ次々とおかずを移し始めた。


 生徒会室の昼休みは、温かな空気が続くような心地よさで満ちていた。



※あとがき

本日、日間のランキングで66位に入っていました。

本当にありがとうございます。


ブックマーク、高評価、いつも大変励みになっております。もしよろしければしてもらえると本当に幸いです。


これからもどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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