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第58話:究極を越える力

 この一週間、和夢は環境デッキを回しながらブラックブレイズのデッキに改良を加えていた。


(環境デッキはどれも洗礼されて無駄がなく強い。それを考えたらデッキの分厚さだけ僕の構築は無駄なのかもしれない。でも、だけど――!)


 和夢は力強くドローするとレコードをセットする。


(今はどれだけデッキが分厚くなってもいい。そして勝ち筋がどれだけか細くてもいい。それでも前環境デッキに勝つための布石は用意した。僕は、ブラックブレイズドラゴンと一緒に強くなるんだ!)


 和夢は展開を終えると、最後の締めにとこのターンにドローしたカードを発動する。


「僕は手札の≪ネオブラックブレイズドラゴン≫の効果を発動。場に≪ブラックブレイズドラゴン≫がいる場合、≪進化≫することでその上に重ねます」


 エレナから受け取った五周年版ブラックブレイズの上にネオブラックブレイズが重ねられる。和夢はそのまま攻撃をし、義道のライフを削る。


「これで僕のターンはエンドです」


 和夢はターンを終えると改めて場を見る。


(ユニークデッキを組んでから数週間、一人回しも含めて、多分今が一番上手く嚙み合ってる。ネオブラックブレイズも場に出して、ライフにもかなり余裕はある。ただ一つ気になるのが……)


 和夢は義道の場を見る。義道は和夢よりも多くのレコードがセットしていた。義道は前半戦、致命的な場面を除き、ただひたすらにレコ―ドの加速を優先していた。


(この動きは三つの環境デッキのどれにも属さない。義道さん、いったいどんなデッキを組んでるんだ)


 未知なるデッキとの対面に和夢は期待と興奮で目を輝かせる。義道はそんな気持ちのいい和夢の表情を見て嬉しそうに声をあげた。


「高坂君は本当に楽しそうにLRをプレイするな」


「はい! 僕、LRが大好きなんです‼」


「これまた気持ちのいい返答だ。なら、わしもわしの大好きを持ってそれに応えんとな。いくぞ高坂君――わしはコストを払って手札から速攻持ちの≪原始の開拓者 プロトラプター≫を召喚する‼」


 加速し続けたレコードを全て払いプロトラプターが召喚される。そのステータスを見て和夢は目を見開く。


(コストが踏み倒しなしのアルティメットクリアシャインと同じ。なのにステータスはブラックブレイズとより低い⁉ いや当然それだけじゃないはずだ)


「さらにわしは手札を三枚捨ててプロトラプターの効果を発動する! 手札を捨てた数だけデッキの上を捲り、それが≪進化≫効果を持たない恐竜族ならば場に出すことが出来る。さあ一世一代の大博打だ‼」


 義道はデッキトップのカードを三枚オープンする。そのうちの二枚は恐竜族だ。


「この効果で召喚されたモンスターは全て≪速攻≫と≪貫通≫が付与され、攻撃が可能な場合必ず攻撃に参加せねばいけない。コストを踏み倒した二体とプロトラプターで攻撃だ!」


「そしたら僕はシールドドラゴンで――――」


「おっと急ぐでない。わしの攻撃フェイズはまだ続くぞ。プロトラプターの攻撃宣言時効果、このカードが攻撃に参加する時、デッキの一番上を捲りそれが≪進化≫効果を持たない恐竜族ならそのまま場に出すことが出来る」


 義道の手がカードの山にそっと伸びる。その瞬間、ゾクリとした感覚に和夢は襲われる。


(この感覚、やっぱり僕はどこかで義道さんと? いや、違うこれは――――⁉)


 義道がカードを引く瞬間、その手から滲み出る何かが場の空気を変えた。まるで目の前に聳える山が、目覚めたかのような重圧だった。義道は手にしたカードを一瞥すると、ゆっくりと口角を上げた。


「大地を揺るがし、絶滅の咆哮を轟かせよ! 暴虐なる暴君竜よ、その巨躯をもってすべてを踏み砕け! 今ここに現れよ――≪暴君竜王 ギガノタイラント≫‼」


 義道が場に置いたカードがテーブルの上で静かに揺れる。まるで、その名を冠する恐竜が地を踏みしめたかのようだ。カードのイラストに描かれた巨竜の眼光は鋭く、見る者に圧倒的な威圧感を与える。その攻撃力は、並のモンスターとは一線を画す存在感を放っていた。


「攻撃力が――――アルティメットクリアシャインよりも高いモンスター⁉」


「さらにプロトラプターのこの効果で召喚されたモンスターは≪速攻≫≪貫通≫を得て必ず攻撃に参加しなければいけない!」


 ギガノタイラントの召喚コストは文字通り桁が一つ違っている。とてもではないが通常のゲームで出せる代物ではない。それ故の『究極』を超えた攻撃力。だが義道の猛攻はまだ止まらない。


「ギガノタイラントの効果発動。このカードが攻撃に参加した時、デッキのカードを四枚捲る。そのカードが恐竜族だった場合、コストを支払わず場に出すことが出来る。当然≪速攻≫≪貫通≫は付与される。捲った四枚は――――全て恐竜族だな」


 まるで猛獣が鎖を断ち切られたかのように、ギガノタイラントは牙を剥く。そうして場がゼロの状態から一気に八体の恐竜族が並んだ。


 それはまるで義道の豪快さを象徴するかのような展開だった。和夢はそんな華のある見事なプレイに目を輝かせながら、それでもゲームを続行する。


「僕はシールドドラゴンでガードをしますが……どちらにしても≪貫通≫があるので僕の負けですね。対戦、ありがとうございました」


「ああ、ありがとうな高坂君」


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