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第24話:三人寄ればおかずがいっぱい

 次の日のお昼休み。和夢は残り四枚になった食パンを片手に生徒会室に向かっていた。


(まさか今週いっぱいエレナ先輩にご馳走になることになるとは……でもあれだけ言ってもらって断るのも悪いしな)


 その分、エレナが困ったら必ず力になろう。和夢はそう心に誓いながら生徒会室に入る。するとそこにはエレナの他に、蓮と明日香もいた。


 明日香は和夢を見ると勢いよく近づいてきた。


「ごめんね和夢君。まさかあのお出かけがそんなに負担になってたなんて、本当にごめんね」


「えっ、明日香さん、あ、あの、どうして」


 和夢の疑問に蓮が答える。


「なーんかエレナの様子がおかしいと思って問いただしたんだよ。そしたら和夢後輩の金欠の話を聞いてな。悪かったな。和夢後輩の金欠の件は『カードを勧めた』あたしにも非があるからな」


 強調する言葉は、明日香に相談の件は話すなと言うことだろう。和夢はコクコクと頷くと席に座る。


 既に机にはお弁当が広げられている。昨日のエレナの物の他に、高級感のある漆塗りの黒いお弁当箱とキャラ物の可愛いお弁当箱が置かれていた。蓮は蓋の裏におかずを切り分けて置く。


「今日はあたしの分しかねえから、これで我慢してくれ」


「私ももちろん和夢君にあげるからね。ほら私お手製のミニハンバーグ、絶対美味しいよ~」


 と言って明日香はハート形のハンバーグを箸で持つ。


「ほら、和夢君。あーん」


「えっ、あっ、明日香さん」


「なーんてね。さすがにそれはちょっと恥ずかしいかな。と言うわけでこのハンバーグはまるまる和夢君に進呈いたします。蓮さん蓋をお借り……和夢君どうしたの?」


「な、何がでしょうか」


「えっと、顔がすごく赤いよ?」


 明日香にそう指摘されると、和夢は昨日のことを思い出し、さらに顔を赤くする。そんな二人を見ると、蓮は隣にいるエレナの腕を肘で小突いた。


「なあ、和夢後輩はどうしたんだいったい?」


「さ、さあ、皆目見当もつきませんわね」


 そう言ってエレナは長い金髪で顔を隠すように俯いていく。


 そうしてエレナは誰にもバレないように恥ずかしさに耐え、体を小さく震わせていくのだった。


 それから数日後。お昼休みの生徒会室。和夢は目の前に置かれた大量のおかずを前に目を丸くしていた。


「も、もうこれは軽く一食分以上ありますよね。三人とも本当にありがとうございます」


 改めて頭を下げお礼をする。


(三人に恵んでもらうのも今日で終わりだ。いつも通り噛み締めて食べよう)


 和夢は元気よく「いただきます」と言うと箸を伸ばす。おかずを運ぶと、口元に自然と笑みが浮かび、頬がほんのりと緩んだ。そんな和夢の表情を明日香はニコニコ顔で見ていた。


「和夢君は本当に美味しそうに食べてくれるから作り甲斐あるな~」


 その言葉に蓮も続く。


「……まあそれは言えてるな。ほら、追加であたし特製のだし巻き卵焼きも恵んでやろう」


「あー、そしたら私も、この可愛く作れたタコさんウィンナーあげるね~」


 そう言いながら、二人は和夢の皿におかずを追加していく。エレナはそんな二人を見ながら、自分のお弁当箱を覗き込んだ。中には、シェフが完璧に仕上げた料理が美しく並んでいる。だがその片隅に少し黒焦げたからあげが控えめに置かれていた。


 一度は渡すのを諦めたが、今の流れなら渡せるかもしれない。エレナは不安そうに箸を手に取り、から揚げをつまみ上げる。そして自信なさげにそれを見つめたまま、ついに言葉を伝える。


「……あの、これ……少し焦げてしまったんですけれど……」


 エレナの声は普段の堂々としたものとは違い、どこか控えめで照れくさそうだった。その姿に、和夢は一瞬驚いたようにエレナの顔を見つめ、そして微笑んだ。


「ありがとうございますエレナ先輩! いただきますね‼」


 からあげが紙皿の上に置かれると、一番にそれを口に運んだ。そんな和夢の行動を見て、エレナは一瞬、ほっとしたような、でもまだ恥ずかしいような表情を浮かべる。


 和夢は一口かみしめたあと、笑顔で「美味しいです」と答える。


 そんな和夢の嘘偽りない表情を見ると、エレナは思わず両手を小さくパタパタと動かし、体全体でその喜びを表現した。だがすぐにハッとすると、蓮と明日香に見られる前に体の揺れを抑えていく。


「わ、わたくしったら……」


 そう小さくつぶやくと、エレナは顔をほんのりと紅潮させ俯いていくのだった。



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