表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/184

第22話:優しさの距離

 日曜日のバロック。明日香は目に涙を浮かべ、エレナと蓮に深々と頭を下げていく。


「本当にごめんなさい、二人とも……」


 その声は震え、心からの謝罪が込められていた。明日香は一度、言葉を詰まらせてから、続けた。


「本当に我儘でした。二人に相談せず、私は私が受け止めたい言葉だけを二人に要求して、それで勝手に落ち込んで……本当にごめんなさい」


 彼女の言葉には、悔しさと反省が滲んでいた。深く頭を下げたその姿から、明日香がどれほど自分を責めているのかが伝わってきた。


 そんな明日香を、エレナと蓮は優しく受け止める。


「そんなことありませんわ」


 エレナは落ち着いた声で言いながら、そっと明日香の背中を撫でた。


「誰だって自分の好きが否定されるのは辛いものです。それに大会でそんなことがあっては、明日香さんが言い出せないのも仕方ないことですわ」


「むしろあたし達のほうこそ、明日香の考えにもっと寄り添ってやるべきだったよな」


 蓮も、苦笑しながらぽんぽんと明日香の頭を撫でる。


「配慮が足りなかった。すまないな、明日香」


 二人の言葉を聞くと、明日香は大粒の涙を流しながら顔を上げる。


「え~~~ん、二人共優しすぎるよぉ~~!!」


 涙声のまま、今度はさらに力を込めてぎゅうぅっと二人を抱きしめる。


(うんうん。一件落着みたいで良かった、良かった)


 和夢は一歩引いたところから三人の姿を眺め、小さく頷く。


 明日香はそんな和夢に気づくと、すぐにエレナと蓮から離れ、勢いよく駆け寄った。


「和夢君も本当にありがとうね!」


「いえいえ、僕は別に何もしてませんし。これは明日香さんが頑張って勇気を出して、思いを打ち明けられた結果ですよ」


 和夢がそう返すと、明日香は一瞬ぽかんとした顔をした。しかし、すぐに目を細め、柔らかく優しい笑みを浮かべる。


「あーあ、そんなこと言ってくれちゃうんだ」


「そんなことって?」


「ううん、なんでもないよー!」


 明日香はぱっと顔を輝かせると、和夢の腕を掴んでぐいっと引っ張った。


「ほらほら、和夢君もそんな端っこにいないで、こっち座ろう!」


「えっ、ちょ、明日香さん?」


「私ね、飛空隊ビートの改造案考えてきたんだ!」


「本当ですか! 是非ともお願いします‼」


 勢いのままに和夢を隣の席に座らせると、明日香は満足げに頷く。


 そんな二人の様子を見ていた蓮が、戸惑い混じりの声を上げた。


「な、なあ、明日香。流石にその距離は近すぎるんじゃねえか?」


「そうですか?」


 明日香はきょとんとしながら、小首をかしげる。そして、にこっと笑って和夢の肩にすり寄った。


「私たち同級生ですし、これくらいの距離、普通だと思いますけど?」


 その言葉に、蓮は思わず口をぱくぱくとさせる。


「な、何だその謎理論は……」


「あらあら、お二人はさらに仲良しさんですわね」


 エレナは嬉しそうに微笑んで見せた。


 一方で、和夢は明日香がぴったりと寄り添っていることに気づき、慌てて身を引こうとする。


「あ、明日香さん。流石に近すぎて、その……」


「大丈夫、大丈夫! 近くにいたほうがもっといいアイデアが浮かぶって!」


「そ、そうなんですかね?」


「うん、絶対にそうだよ!」


 ひまわりみたいな笑顔で、力強く断言されてしまうと、和夢にはもう反論の余地がなかった。


 そんな二人を、エレナと蓮は呆れながらも微笑ましく見ている。和夢は「ははは……」と硬い笑みを浮かべながら、三人の優しい空気に包まれていく。


 すると、明日香は突如として立ち上がり、天に向かってこぶしを突き上げた。


「それじゃあ今日もみんなで頑張っていこうねー‼」


 その眩しい笑顔に、バロックの空気はさらに温かくなっていくのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ