第16話:大好きなカードと一緒に(前編)
とある休日のバロック。和夢は連戦に次ぐ連戦を終えると、悩むようにぐてーっと机に突っ伏してしまう。
(始めた頃よりもデッキはうまく回せてるはずだ。その証拠に本当にポツポツとだけど、勝てる試合も出来てきた)
だが勝率だけ見れば、まだまだ三人には遠く及ばない。和夢は顔を上げると、三人を見つめる。
「僕がまだまだなのは分かるんですけど……環境、でしたっけ? 三人のがそうじゃないのがとても信じられないです」
三人がユニークビルダーとして牙を研いでいるのはちゃんと理解している。だがその強さを目の当たりにし続け、和夢は少しだけ弱気になってしまった。その姿を見て蓮がすぐに声を上げる。
「和夢後輩がそう疑問に思うのは、それだけLRへの理解度が深まったってことだ。誇っていいぞ」
「そ、そうなんですか?」
「だが残念ながらあたし達のデッキは環境ではない。同時にあたし達も本気でデッキを組んでいるから、あまり自分のデッキにネガティブなことは言いたくはないんだ」
「確かに、それはそうですよね」
「だが和夢後輩のモチベーションの為に話す準備だけはしておいた。おい、エレナ、明日香、いよいよこの時だ」
蓮がそう言って立ち上がると、エレナと明日香もそれに続く。その後、自分の持っているデッキケースを時計回りに交換する。いったい何の儀式だろうと思っていると、まずはエレナが和夢の対面に座った。
「それでは不肖天城エレナが、明日香さんのカワケモについてお話させてもらいますね」
「は、はい、よろしくお願いします」
エレナはそう言うと、カワケモモンスターを並べ始めた。
「ご存知の通り、カワケモはそれぞれが持つ固有能力を連携させることで、一気にモンスターを展開できるのが最大の強みですの」
「はい、僕もその展開力で何度も押し切られました」
「しかし当然、その能力がうまくかみ合わない時もあります。例えば、墓地が空っぽの時に救援隊を出しても意味はありませんし、手札にカワケモがいないのに騎士を出してもアドバンテージはありません」
「そうですね。僕もそのおかげで何度か勝ちを拾えたことがあります」
「では、改めてそのあたりを思い出してもらったところで、こちらのカードを見てください」
そう言って、エレナは一枚のカードをテーブルに置く。白い蟻に大きな目がついた≪エイリアント≫というカードだった。
「和夢さんはこのカードのステータスを見てどう思いますか?」
「えっと、攻撃も防御もコストもカワケモと同じですね。それに、能力で手札のエイリアントを場に出すか、墓地のエイリアントを蘇生するのも一緒で……あれ?」
和夢はもう一度じっくりカードを見つめた。
「この効果、どちらか選べるってことは……この一枚でカワケモの騎士と救援隊、両方の役割を担えるってことですよね?」
「そうですわね。さらにこちらのカードも見てください」
エレナは他のエイリアントカードを手渡す。そこには救援隊の効果と魔術師の効果が両方書かれていた。
「エイリアントはカワケモの能力を複合して持っています。それにアニメでも放送中のカードだから、定期的に強化も入っていますわ。なのでアニメ産の高速ビートダウンを使うなら、このエイリアントが人気ですわね」
「なるほど……」
確かに明らかに上位互換だ。和夢はカードを返しながら、明日香の方を見る。明日香はできるだけエイリアントから視線を逸らし、小さな声で答えた。
「昆虫族と獣族って、あんまり相性よくないし……それに、あのむき出しの大きすぎる目、どうしても苦手で……」
「確かに、かなり目力ありますよね」
「うん、そうなんだよね――」
明日香は小さくため息をつき、気持ちを切り替えるように口元を引き締めた。
「じゃあ次は私の番だね」
明日香は落ちたテンションを無理やり上げて、エレナと交代し、蓮のデッキを広げる。
「まず大前提として、LR環境では妨害カードってあまり強くないんだよね。効果は強いんだけど、コストが高かったり、範囲が狭かったりして」
「確かに僕も使っててそう思いました」
「だからコントロールデッキを使うには、蓮先輩みたいに相手の動きを完璧に読んで、マストカウンターを決めないといけないんだよね」
「蓮先輩はブラフにもほとんど引っかからず、こちらが止めたくないカードをきっちり止めてくるから凄いですよね」
和夢はブラックブレイズコントロールを握っている今だからこそ、蓮の凄さをより深く理解していた。
和夢がうなずいていると、明日香も一枚のカードを置いた。
「でもそんなコントロール界隈に、革新的なカードが現れたんだ。それが≪創造の神ブラフマー≫。ブラフマーは墓地の妨害カードの数だけ召喚コストを下げられて、攻撃力も高い。さらに≪速攻≫と一ターンに二度攻撃できる≪連撃≫も持ってて、一気にコントロール界隈の主軸になったんだよね」
「……確かに強力ですね」
和夢は蓮を見た。蓮はとびきり不機嫌そうにブラフマーを睨んでいた。
「……あたしのデッキとはちょっと雰囲気が違うんだよな。入れたら、世界観が変わっちまいそうでな~」
「つまり蓮先輩は、必須と言われるカードをあえて入れてないんだね。女神シリーズもアニメ終了以降、ほとんど強化が入ってないのも向かい風かな――じゃあ最後はそのまま蓮先輩、お願いします」
明日香と蓮が入れ替わる。蓮はエレナのデッキを広げず、最初から二枚のカードをテーブルに置いた。




