第12話:支えてくれた三人の為に
次の日の日曜日、バロックには四人全員が集まっていた。蓮と明日香に見守られる中、和夢とエレナのバトルは終盤に差し掛かっていた。
「わたくしは≪クリアシャインドラゴン≫を召喚してターンエンドですわ」
絶対的攻撃力持つエレナのエースモンスターが場に舞い降りる。和夢は首筋に汗をかきながら、「ふぅー」と息を吐く。
(エレナ先輩の手札にアルティメットがあったら終わってたな。まだチャンスはある)
エレナは引きが悪いのか普段と比べて動きが重い。だがそんな状況でも和夢は首の皮一枚だ。和夢は緊張で手を震わせながらデッキを見る。
(楽しくLRが出来れば勝ち負けなんてどうでもよかった。でも今日は勝ちたい。皆が肯定してくれたブラックブレイズはちゃんと戦えるって伝えるんだ)
不格好に震える手を抑えることは出来ない。だが和夢は止まることなく、不格好なままデッキに指を置く。
「僕のターン、ドロー‼」
引き当てたのはエレナがプレゼントした五周年シークレットのブラックブレイズだ。
「よしっ! レコードをセット、コストを払って≪ブラックブレイズドラゴン≫を召喚します‼」
「和夢さんのエースが来ましたわね。でもそれだけではないのでしょう」
「もちろんです! 僕は手札の≪ネオブラックブレイズドラゴン≫の効果を発動。場にブラックブレイズドラゴンがいる場合、≪進化≫することでコストを払わず重ねて場に出すことが出来ます。さらに≪進化≫したモンスターはこのターン攻撃が出来る! これで攻撃力はこちらが上、≪飛行≫持ちのネオブラックブレイズドラゴンで攻撃‼」
「これは止めるしかありませんわね。同じく≪飛行≫持ちのクリアシャインでガードですわ!」
ここだ。この瞬間だ。和夢はコストを払うと手に持っていたカードを発動する。
「クリアシャインがガード宣言したタイミングで手札の≪ブラックブレイズブラスト≫を発動! このターン名称≪ブラックブレイズドラゴン≫は≪貫通≫効果を得る。さらに相手モンスターを戦闘破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与えます‼」
「そ、そのカードは⁉」
「あの時ストレージで見つけた実質無料のカードです!」
やれることは全てやった。あとはエレナの対応次第だ。和夢はエレナの手札をじっと見つめる。だがエレナはゆっくりと首を横に振ると目を閉じた。
「対応は……ありませんわ」
「そ、それじゃあ」
「わたくしの……負けですわね」
和夢はずっと震えていた手を力強く握りこむ。そして目が潤むほどの感動を噛みしめた。
「勝てた……初めて勝てた……」
和夢の初勝利に明日香が椅子を寄せて詰め寄ってくる。
「おめでとう和夢君! 最後のターン、私、体が震えちゃったよ‼」
「ありがとうございます明日香さん」
素直に勝利を喜ぶ明日香に対して、蓮が言葉を差し込む。
「まあ今回はエレナの引きが悪すぎたな。手札にはクリアシャインがダボついてて、次のドローは……アルティメットクリアシャインだ」
「も、もぉー蓮、わざわざ言うことではありませんわよ!」
「後輩が調子に乗らないように釘を刺してるだけだよ」
蓮の言葉を聞くと和夢はギュっと両手を握り締める。
「もちろん調子になんて乗りませんよ! 次は蓮先輩戦ってください‼」
そう言って和夢はネオブラックブレイズデッキをケースに戻す。すると蓮はそのケースを見て「うん?」と声をあげた。
「そう言えばどうしてエレナのデッキだけ、そんな高そうなケースに入ってるんだよ。あたしと明日香のは普通のプラスチックの奴だよな」
「あっ、それは」
と説明をしようとすると、明日香も声をあげる。
「そう言えば今日のエレナさん、凄く綺麗な格好してますよね。いつもバロックに来るときはもっとラフだったような」
そう聞かれると、エレナは和夢の方を見る。エレナは楽し気に少し口元を緩めた。
「昨日和夢さんが綺麗と褒めて下さいましたので、今日も気合を入れただけですわ」
「……はっ?」
「……えっ?」
その言葉を聞いて蓮と明日香は目を見開いて和夢を見る。蓮はわなわなと体を震わせると口を開く。
「そう言えば≪ブラックブレイズブラスト≫なんてカード持ってなかったよな」
「和夢君は昨日エレナさんとどこに行ったのかなぁ~~」
二人はジト―っとした目で和夢を睨みつける。そんな状況を見てエレナはさらに楽し気に話を続けた。
「そんなこともありまして、和夢さんがわたくしの考案したデッキを一番に扱うのも仕方ないことですわね」
「えっ、いや、このデッキケースは昨日帰りにエレナ先輩が――――」
「……あたしの構築したデッキが不服かあ~、和夢後輩~」
「二人で秘密に遊びにいってたんだね、和夢くぅ~~ん」
「うっ、うえぇ~~⁉」
蓮はストレートに不機嫌さを、明日香は圧力のある笑顔を浮かべると和夢を壁際に追い込んでいく。そんな二人に囲まれた和夢は、助けを求めるようにエレナを見る。
「え、エレナ先輩~~」
「うふふ、頑張ってくださいね、か・ず・む・さ・ん」
エレナはそう言うとほんの少し肩を揺らす。そしていまこの瞬間が本当に幸せだと、心底楽しそうに笑みを浮かべていくのだった。




