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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第三章  これぞ完璧なる負け戦
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第四話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 負け戦専門の先生について歩いていたから分かるけど、戦の最中に負けると分かった時の絶望感たるや半端ないものだったりするんだよね!恐怖に怯えて混乱すれば混乱するほど、相手は残虐なほど殺戮行為を行うし、逃げ場がないって思っちゃう。


 比叡山から安芸の国に行く途中で、小さい規模の戦に二つ、三つ参戦したんだけど、それも全部負け戦。先生と途中ではぐれちゃった時には死体の下に潜り込むことで難を逃れることに成功したんだけど、あの時は本当に死ぬと思ったよ!


 僕らの間では犬が先祖と言われる伊賀の忍びなんだけど、犬並みの嗅覚があるからこそ仕事に定評がある人達だし、

「信玄公にすり潰されるようにして殺されるのはあまりに勿体無い!」

 というのが柳生さまの意見なんだよね!


 侍になりたい!なりたい!と言っているのは服部半蔵という人だけみたいだし、暴走する頭首に代わって一族をまとめているのが義父にあたる人なんだって!だからこそ、

「戦の前にはその義父と接触し、敗戦の最中に殺されそうになっていたら、弥五郎、お前が助けて柳生の里まで連れて来て欲しい」

 と、柳生さまは言っているわけ。


 同じ先生の元で学んでいるから、柳生さまは兄弟子、先生は弟弟子。上下関係がしっかりし過ぎて先生は逆らえないみたいなんだけど、

「弥五郎、三河で行われる戦は歴史に残る負け戦になるのに違いない」

 柳生さまは先生のことを十分に理解しているんだよね。

「負け戦が大好きなお前が参戦しないで如何する?今なら私の伝手を使ってすんなり城に入り込むことが出来るのだぞ!」


「・・・」

 先生としては正覚院豪盛様が言う通り、織田信長さまと信玄公が戦って、信玄公が勝つと確信しているものだから、是非とも美濃の地で起きる戦では信長さまの方に付いて戦いたいと考えているんだけど、

「美濃の戦は三河を終えた後に参戦すれば良いであろう!」

 柳生さまは畳み掛けるようにして言い出した。


「三河で負け戦に参戦をしたお前は、仲間の恨みを晴らすため、是非ともお味方に付きたいと言い出すのだ。充分な大義名分を手に入れられるであろう?あっちでも負け戦、こっちでも負け戦、一世一代の負け戦に参戦し続けられるのだ。一体、何の不満がある?」


 ここで先生は完全に陥落したよね。

 先生ったら本当に負け戦が好きなんだもの。

 ここまで言われて、浜松に行かない手は無いだろうなって僕でも思うもの。



 そんな訳で僕と先生は一路、三河の国を目指すことになったんだけど、移動をすればするほど徳川様の敗色が濃厚になっていることを実感するんだよね。


 将軍足利義昭さまの信長さま討伐に応じる形で兵を出発させた信玄公は、総勢三万にも登る軍勢を動かしていたんだ。これを遠江、三河、美濃の三部隊に分けていたんだけど、自身は本隊二万二千を率いて二俣城を包囲したわけ。


 二俣城っていうのは徳川の本城となる浜松城と掛川、高天神城を結ぶ要所になるんだけど、あっという間に開城させて降伏させちゃったんだ!


 遠江国へむかう軍五千は山県昌景という人が率いていて、諏訪から東三河へ侵攻。武節城と東三河の重要な支城となる長篠城を攻略!


 軍二千五百を任された秋山虎繁っていう人は、岩村遠山氏っていう人が治める領地を通って三河を目指して移動。途中で衝突はあっても大きいものにはならず、遠山氏の拠点となる岩村城を攻略した!


 普通は城攻めの場合、城に立て籠もる兵士の二倍や三倍の人数を用いることになるし、攻略には二カ月も三カ月もかかるものなんだ。だけど、この時の武田軍は日を置かずに次々と敵城を攻略しながら軍を進めていくこととなったわけ。


 僕らはこの頃にはすでに浜松城に到着をしていたんだけど、毎日のようにあっちの城が落とされた、こっちの城が落とされたって報告が届くものだから、混乱の極み状態になっていたんだ。


 だってさ、何度も言うけれど、城攻めって二ヶ月も三ヶ月も普通はかかるものだっていうのに、わずか数日で落とされた城もあるんだよ?嘘でしょう!って感じだよね!

 安芸の英雄と言えば毛利家なのは間違いないんだけど、甲斐の英雄と言えば武田信玄!いくら信長さまが暴れ回ったところで、信玄公が出てくれば潰される。そんな風に周りの人々は考えているし、実際に周囲の城は潰されているしね!


 実は家康公、バタバタと周りの城が落とされているものだから、同盟を結ぶ織田信長さまに対して援軍を何度も要請していたみたいなんだ。


 だけどね、ご存知の通り、足利義昭将軍が織田さま包囲網を頑張って作り上げているところだったし、柳生さまが一向一揆衆や東本願寺のお坊さんたち(お寺にもたくさんのお侍様がいるんです)を焚き付けておいたおかげで、畿内において無数の敵の包囲に苦しんでいる状態だったんだよね!


 徳川家康公の方へ援軍を送っている余裕がなんてあるわけもない。だけど、今まで文句も言わずに付き従ってくれた徳川様だもの。二俣城が武田軍によって陥落する前には、佐久間右衛門さま、平手甚左衛門さま、水野下野守を大将として、浜松城へ送り込んではいるんだけどその数僅か三千だよ?


 二万二千の兵力を持つ武田軍に対抗するにしてはあまりに頼りない人数の援軍だよね!焼石に水ってこのことだと思うよ!


 大将として佐久間右衛門が送られて来ると聞いた僕らは、浜松城内で大いに沸くことになったんだけど、

「「「えええ!三千!三万じゃなくて!三千!嘘でしょうー!」」」

 僕も驚いたけど、みんなも驚いた。やっぱり織田信長さまは血も涙もないっていう噂は本当だったんだな!って実感することになったんだよね!




ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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