第二話
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
結局、安芸の国を後にした僕らは、堺行きの船に乗って移動をすることになったんだけど、堺の港に到着したところで、
「弥五郎、其方、弥五郎ではないか?」
と、声をかけられることになったんだ。
振り返れば、虚無僧の姿をした三人が立っており、その中の一人が天蓋と呼ばれる深網笠を持ち上げて見せると、
「宗厳様ではございませんか!」
と、先生は驚きの声をあげたんだよね。
僕らが商人の街と言われる堺で出会ったのが柳生宗厳さま。この方も先生と同じ剣術の先生の元で学んでいたので、兄弟弟子という間柄になるみたい。
「其方には礼を申さねばならぬと思っていたところなのだ」
近くの茶屋に入るなり、柳生さまは先生に向かって頭を下げたんだけど、
「いや、こちらこそ申し訳ない。巌勝さまをもっと早くに助けられたら良かったのですが・・」
先生はそう答えて、顔を曇らせたままでいたんだよね。
柳生さまがお仕えする松永久秀さまは、主筋にあたる筒井さまが守る辰市城に攻め込んだんだけど、大和国始まって以来と言われるほどの大敗を喫することになったんだ。
『大和国はじまって以来の大敗』、僕の先生が小躍りして喜びそうな文言だと思うんだけど、その歴史的大敗に足軽雑兵として参加をした先生は、敵に討ち取られそうになった柳生さまの長男さんを助けることには成功したんだよね。
だけどこの時、長男さんが受けた銃傷が思った以上に深刻なものになったみたいで、家を継ぐのはどうやら難しいってことになっちゃったみたいなんだ。だからこそ先生も浮かない顔をしているんだけど、
「弥五郎よ。死んでしまってはお終いなのだから、そんな顔はするな」
柳生さまはそう言って、先生の肩を励ますように叩いていたんだよね。
僕の村からもさほど遠くない場所に柳生の里というところがあるんだけど、剣豪として名を轟かせるほどに有名な当主さまがいらっしゃるという話は、父さまから聞いたことがあったんだ。
「弥五郎よ、その男の子はもしかして・・」
「ええ、徳一の息子ですよ」
先生と柳生さまの剣術の先生が一緒だとするのなら、柳生さまの先生と僕の父さまの先生も同じっていうことになるわけで、
「徳一の息子、イチです」
僕が頭を下げると、柳生さまは瞳を細めながら僕の頭を撫でてくれたんだ。
えーっとですね・・京の都に上洛をするのは武将であれば誰もが夢見るようなことでもあるんだけど、最近では織田信長さまという方が足利の将軍をお連れする形で上洛を果たしたわけなんです。
最初でこそ将軍さまと信長さまは仲が良かったんだけど、自分のことを傀儡にする気、満々の信長さまに辟易とした将軍様が、
「いつまでも好き勝手にさせてなるものか!」
と言い出して、織田さま包囲網というものを作り出そうとしているわけです。
昨年、この包囲網を突破しようとした結果、織田様は比叡山を焼き討ちにしたというのは有名な話ですし、僕らはその比叡山に、戦いがすっかり終わった頃に到着することになっちゃって、
「そんな〜!」
と、言いながら先生は大泣きしていたのは忘れられない思い出です。
ここで兄弟弟子は最近の近況などを互いに話し合うことになったみたいだけど、
「弥五郎よ、お前、相変わらず負け戦が好きであろう?」
と、柳生さまがニコニコ笑いながら言い出したんだ。
この頃、柳生さまは使僧を遣わして大阪本願寺や伊勢長島の一向一揆との交渉に当たっていたというのだけれど、柳生さまご自身も虚無僧に扮して移動をしているところだったみたい。
「確かに負け戦が好きですが」
「それではな、今から私が手配をするから浜松城へと向かって欲しい」
「浜松城?」
浜松城とは駿河の国にあるお城のことなのですが、
「その城に伊賀衆の頭領の義父が潜り込んでいるはずだから、その義父にこの手紙を渡して欲しいのだよ」
そう言って、柳生さまは懐から一通の封書を取り出したんだよね!
今現在、柳生様の主君である松永久秀さま(この前、辰市城でボロ負けした人)と三好義継さまは、将軍足利義昭さまと手を組んで、信長さま包囲網を作り出そうとしているところ。この包囲網を強固のものにするために、
「ここだけの話だが、伊賀衆の調略を進めようと考えておるのよ」
と、柳生さまは恐ろしげな顔となって言い出した。
「伊賀衆というと今は松平家に仕えているという・・」
「元は草の者どもの集まりだが、頭領の服部半蔵という男がかなり変わり者のようでな。武家に仕え、武将になりたいと願っているというのだ」
「え〜!珍しい〜!」
思わず僕は声を上げちゃったよね!
草の者と呼ばれる人々は情報を集めるのが仕事だからさ、先生に連れられて行った戦場でもたまに目にすることはあったんだけど、汚い格好で活動していたりするんだよね!
こっそり情報を抜き取るだけでなく、裏切り行為によって戦を大敗に導いたりするから、戦場では貧乏神以上に忌み嫌われているのが草の者と呼ばれる人達なんだ。
「ちなみにその頭領は槍が得意だと聞いている」
「ますます珍しい〜!」
草の者と呼ばれる人が大きな得物を持っている姿なんて見たことがない!精々が大小の刀くらいのものだと思うんだけど、
「槍?槍ですか?だとすると、馬にも乗るってことですか?」
戦場で槍を使うのなら馬にだって乗らなくちゃいけなくなる。
貧乏そのものの姿にしか見えない草の者が、馬に乗って槍を振り回す?ちょっと想像が付かないんだけど!と、僕が頭を悩ましていると、
「服部半蔵は武将になるのが夢なのだから、武将のような格好で馬に乗っているという話は聞いている」
と、柳生さまは言い出したんだよね!
ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!
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