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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第二章  西に行こう!
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第二十九話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 先生が教えてくれたところによると、鉄砲っていうものはポルトガルっていう国の人が持って来たもので、だいたい三十年くらい前に種子島という島の領主様が鉄砲を貰って使い方と作り方を教わって、一年もかけずに模作に成功しちゃったっていうんだよね。


 この鉄砲、かなり高額で取引されているんだ。弾が当たれば相手に致命傷を与えることが出来るし、引き金を引くとびっくりするくらいの音が響き渡るから、相手を威嚇するにもちょうど良いと言われていたんだよね。


 最近ではかの織田信長さまが鉄砲を買い集めているなんて噂も伝わっていて、堺の商人が鉄砲鍛冶職人の数を増やすように手配しているんだって。とにかくお値段が高い!だからこそお金持ちだけが持てる最新式の武器というのが火縄銃というものなんだ。


 村上海賊を配下に従えて小早川水軍の戦力を強化した隆景さまが、新兵器に興味を持たないわけがないんだけど、

「「「グァワアアアッ」」」

 弓を構えていた男が弾を食らって倒れ込む。


 お値段がかなりお高い火縄銃は当たれば致命傷だけど、とっても的に当たりづらいことで有名な代物なんだ。それがきちんと当たっているんだから凄い!凄い!とは思ったんだけど、植え込みの影から出て来た人達を確認するに、かなりの至近距離から撃っていたことが分かったよ。


「船上で使うには難しいか」

 鉄砲を抱えた状態で頭に葉っぱをくっつけた状態の隆景さまが出て来てそんなことを言っているんだけど、僕が襲われているのを承知の上で放置していたってこと?酷くない?本当の本当に酷くない?


「船上で使えるわけがないでしょう?」

 そうしたら、隆景さまの後ろから現れた角兵衛さんが言い出したんだ。

「火縄銃とは、火縄に火を着火しなければなりませんし、海水を浴びるような場所では全くの不向きでしょう」

 筋肉隆々で横に幅広い角兵衛さんは片手で火縄銃を受け取りながら、

「火縄が火薬に着火するまでに時間がかかり過ぎるし、今のように待ち伏せに使うのが精々だと思いますなあ」

 なんてことを言い出したんだ。


「角兵衛さん!」

 僕は叫んだよ。

「酷いよ!酷いよ!僕が襲われているってことを知りながら!角兵衛さんは助けてくれなかったんだよね!」

 僕の言葉を聞いて、角兵衛さんは顔を赤くしたり青くしたりしながら、

「いや、だって、ねえ?」

 困り果てた様子で隆景さまの方を見ると、

「最近の家臣どもときたら、私に忖度もせずに随分と勝手なことを始めているだろう?」

 と、隆景さまが全く悪びれもせずに言い出したんだ。


「あれほど子供、子供、養子、養子と言いながら、イチを養子にすると私が言い出せば気に食わぬ、納得出来ぬと文句を言う。挙句の果てにはイチの代わりに用意をしたのが田坂全慶の孫、しかもその孫にイチを殺させて武功の誉を与えるというんではなあ・・」


 池泉の周りは隆景さまの配下の者たちに囲まれているような状態で、僕を殺そうとした奴らは全員、捕縛されているような状態になっていた。

「庶流であれば他にも候補はいるというのに、わざわざ田坂家を連れて来るあたりが気に食わぬ」

 隆景さまが沼田小早川の本家を継ぐのに最後まで抵抗をしたのが田坂家だからね。お家断絶は免れて家名は残されていたらしいんだけど、これじゃあこの後、どうなっちゃうのか分かったものじゃないよねえ。


「他の庶流の方々は毛利家に頭が上がりませぬし、血筋の濃さで言ったら田坂が一番濃いと判断されたのでは?」

「内室の考えそうなことだな」

「ねえ!角兵衛さん!随分と御城主様と親しげだよね!」


 隆景さまの奥さんが何を考えているとか、そんなことは今はどうでも良いよ。

「角兵衛さん!確か角兵衛さんはさあ!こんな片腕野郎にお城に上がる伝手はないとか、御城主様は上も上、雲の上の存在すぎて紹介できるわけもないとか、散々、僕に言っていたよねえ?」

 母さまに会いたくて安芸の国までやって来た僕だけど、僕の母さま、側妾候補としてお城に居るっていうんだもの。お城に居る母様を一目見ようと考えて、僕は名を上げるために残党狩りをし続けていたんだよ?


「なんだよ!なんだよ!角兵衛さんも嘘つきだったのかよ!御城主さまと仲良しだったのに!角兵衛さんまで僕を騙したな!」

 この一年、耐え忍びながら残党狩りをし続けていたあの時間はなんだったんだ!

「角兵衛さんの嘘つき!嘘つき!」

 僕は泣いた、大泣きをした。皆んなに騙され、働かされ、殺されかけて、今に至る。

「うわ〜ん!酷いよ!酷いよ!本当に酷いよ〜!」


 突然僕がぎゃーっと泣き出したため、恐怖で竦み上がった心が解放されて安心して思わず泣いてしまったんだな。みたいに周りの大人は考えているみたいだけど、違うからね!全然違うからね!


「分かった!悪かった!イチ!俺が悪かった!」

 角兵衛さんはギャン泣きする僕を見下ろして驚き慌てだしたんだけど、

「イチ」

 隆景さまは僕の方に顔を近付けて、

「角兵衛に諸国武者修行の旅を勧めたのは私なのだよ」

 と、言い出したんだ。


「このクソ野郎!」

 御城主さまが嵌めたんだ、僕の存在を十分に分かりきった上で嵌めたんだ!

 流石に隆景さまにクソ野郎発言はまずかったらしく、角兵衛さんは慌てて片手で僕の口を塞ぐと、

「イチ!ちょっと大人の話し合いをしよう!」

 と言って、僕を抱えて走りだしてしまったんだ。



ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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