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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第二章  西に行こう!
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第二話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 辰市城での戦いでも将軍派に寝返った松永さまは、今までお仕えし続けて来た織田派の筒井さまをあっさりと裏切って反旗を翻したわけなんですけど、あっちこっちで裏切り、裏切り、裏切りが横行しているような世の中なんだよね。


「あいつら!よくも裏切りやがったな〜!」

 同盟関係にあった義弟とその友人に揃って裏切られて京の都を奪われそうになった織田さまは、こう着状態だった摂津を離れてあっという間に引き返して来たってわけで、

「「帰って来るの早いって〜!」」

 京都まで後もう一歩のところだったんだけど、浅井さまと朝倉さまは比叡山まで後退し、籠城することになったんです!


 この時、織田さまは比叡山を包囲して、

「比叡山が織田方につくのなら!横領した土地は返す!こちらにつくことが出来ないと言うのなら!せめて中立を保って欲しい!じゃなければ焼き討ちにしてやるぞー!」

 と、通告したんです。そうです、織田さまはここでも一回、焼き討ち宣言をしているんですね。


 この時、比叡山側は、

「いや、お前は以前、横領した領地を返さないと言い切っとるじゃないか!」

 ということで織田さまの訴えを無視。浅井さま、朝倉さまへの協力を続けることにしたわけです。


「てめえ!ふざけんな〜!」

 激おこ状態の織田さまは比叡山を包囲し続けましたが、方々中で、

「「「今こそ織田を潰そう!」」」

「「「織田をぶっ倒してやる!」」」

 という勢力が暴れ始めたんですね。


 この騒動の中で、織田さまは有能な武将は死なせるし、弟は死なせるしで、散々な目に遭うのですが、それでも二か月間、比叡山を包囲し続けたのです!だけど、だけど、浅井、朝倉勢はなかなか降伏しないし、周りの状況はどんどん悪くなるしで、流石の織田さまも仕方なく朝廷と将軍足利義昭さまにお願いして、講和をすることになりました。


 これが昨年に起こったことなんです。


 織田さまの助力があって京の都へ上洛をした足利義昭さまですが、義昭さまの行動を制限するための殿中御掟を織田さまが出した時点で、

「やっぱりあいつは気に食わねえ〜」

 と、将軍様はなっちゃったわけですよ。自分を傀儡にしようとする織田さまを排除するために、義昭さまは織田さま包囲網を作ろうと画策したってわけです。


 自分を裏切った浅井・朝倉連合軍もさることながら、甲賀では六角義賢がゲリラ的に活動しているし、三好三人衆も河内、摂津をおさえて再び京への上洛を狙っていますもの。本願寺も、本願寺を支援する雑賀衆も対織田さまで結集しておりますし、織田さまを阻むように一向一揆の波も広がっているような状態です。


 え?登場人物が多すぎて訳が分からないって?

 とりあえず、将軍足利義昭さまの呼びかけに答える形で織田さまを包囲して潰してやろうと企む輩が、たくさん、たくさん、現れることになったんです。

 苦戦を強いられていく中、有能な武将たちだけでなく、自分の弟である信興さままで討たれることになった織田様は、

「そうだ、比叡山を潰そう」

 と、考えたのには理由があるんです。


 比叡山は北陸路と東国路との交差点に位置する上に京からも近く、数万の兵を要する事が可能な比叡山は戦略的に重要な場所になるんです。包囲網を突破するためには、まずは憎っくき比叡山を落としてしまおうと考えたのでしょうね。


 比叡山が信長さまに属さないのなら致し方なしということで、三万の兵で隙間なく取り巻いた織田さまは、和睦の為にと差しだされた黄金の判金三百に見向きもせずに総攻撃を開始しました。


 山に火をかけるし、比叡山の寺社堂塔を容赦無く焼いていくし、僧侶や僧兵、近隣の住人たちが逃げ場として選んだ八王子山も追撃をかけて焼いているからね。


 この比叡山の前に、織田さまときたら、伊勢長島の一向一揆に参加した村々を焼き討ちして回っているし、一向一揆衆が立てこもりをした志村城は皆殺しにしちゃったからね。


「「「あいつ、またやりおったわ!」」」

「「「神仏を恐れぬ恐ろしい奴!」」」

 

 比叡山の焼き討ちで出た死傷者数は、信長公記には数千人、ルイス・フロイスの書簡には1500人、言継卿記には3000人から4000人と記されているそうなのですが、

「なんで間に合わなかったんだ〜!」

 と言って涙を流す先生が、首を切り落とされた僧俗、児童、智者、上人に対して哀れみの涙を浮かべている訳じゃないんです。


 兎にも角にも比叡山側に潜り込んで、僧兵と一緒に戦う気満々だったというのに、すでに僕らが到着した頃には戦いは終了し、織田さまは精鋭の馬廻り衆を連れて京の都へ移動をしているし、残った明智さまが戦後処理をしているという段階になっていたんだよね。


 僕の先生ときたら九死に一生を得るようなことが大好き!

 完全に不利だし、絶望的な状態の中で、何とか生き延びることで自分の剣を磨いているような人になるのだもの。


 先生としたら、せっかくの修行の場に終了の看板が掲げられているような状態だったため、

「チキショーッ!」

 と言って泣いているだけなんど、周りの人間はそういうことで泣いているなんて思いもしないもの。


「泣くでない、泣くでない」

 先生を中心にして集まった人々はわんわん泣いていたんだけど、どうやら焼き討ちから逃げ延びることに成功した様子の僧侶が一人、瞳に涙を浮かべながら言い出したんだ。


「天下の覇権を握るような者は神の目に余るほどの虐殺などは行わぬ。そうして目をそむけたるほどの神に背く所業を行った者は王道よりはずれ、天下の覇権を握るような事は出来ぬ!織田信長は絶対に!天下を取ることなど出来ぬであろう!」


 あららら、織田さまを名指ししてそんなことを言い出しちゃっているけれど、織田さまの配下となる者たちがあちこちに居るような状況で、よくもまあ、大胆な宣言をするものだなあと、僕を含めて周りのみんなが呆れ返っちゃっていたんだけど、

「それじゃあ!(織田さまは)負けるってことなのか!」

 先生は勢いよく立ち上がりながら僧侶に問いかけたんだよね。


 僧侶は自信たっぷりに大きく頷きながら、

「(織田さまは)破れる!」

 と、断言したんだよね!


 このお坊さん、何とか焼き討ちから逃げ延びることに成功をした正覚院豪盛という方だったんだけど、後に武田信玄に庇護を求め、延暦寺の復興を計画する人なんだけど、

「それではお坊さま、勝利をおさめるのは誰になる?」

 先生の問いかけに豪盛さまは大きく胸を張りながら、

「甲斐の国の武田信玄公になるであろう!」

 と、大言したんだよね。


 後にこの発言が先生の運命を大きく動かすことになるんだけど、

「そうか・・織田さまは破れるのか!」

 今まで地面を叩きながら悲嘆していた人とは思えないほどカラリとした笑顔を浮かべた先生は、負け戦が大好き過ぎる、相当変わった人なんだよね。


 


ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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