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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第一章  僕と先生のはじめの物語
17/74

17)

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 この世の中、戦、戦で毎日何処かで戦をやっているような状態なんだけど、現在、最も大きな争いといえば、自分を傀儡にしようとする織田さまに抵抗をする足利さまとの争いで、織田さま包囲網を作ろうとしている将軍様はお金や兵士はいくらあっても足りないというような状況なんだ。


 この前の辰市城の戦いでも、織田さま方についている筒井さまが勝利をおさめることになったもんね。


 守護代さまはこの地域を治めることを任されている人になるんだけど、お金、兵力、お金、兵力は、どんどん出せ、どんどん出せって言われているような状況なわけさ。そんな中で材木問屋の一つが木材を横流しした上で私服を肥やしていたとなればだよ?


「財産は没収、一族郎党は全て兵力として供出することとなる」

 役人さまは、驚き慌てる八兵衛さん一族に向かって言いましたとも。

「女子供も免れることなし」

 コワーーッ!


「「「嘘でしょう!」」」

「「「どうかお許しください!お役人さま!」」」

 公開処刑ということにはならなかったけど、死刑宣告を受けたようなものだもの。必死になって訴えたところで相手は全く聞く耳を持たない状態だよ。


 見れば、最近川場で幅を利かせていた男たちも揃って捕まっているような状態で、

「兵役逃れを進めた庄屋の取り潰しも進めろ!」

 と、役人さまが檄を飛ばしておりますもの。


 今の世の中、お金やお米を蓄えているところを責めたてられる理由が一つでも見つかるのなら、即座に役人さまは動きます。それだけ、兵力、金、兵力、金を供出せよという上からの圧力が凄いんでしょうねえ。


 川場の人足は兵役を逃れられるという事で、結構な額と引き換えに受け入れを行っていた八兵衛さんだけど、ここで悪事が明るみとなって滅亡の道まっしぐら状態になっている。


「本当にありがたや!ありがたや!神様!仏様!弥五郎さま!」

 八兵衛さんが妾に産ませた息子である弥源次さんが先生に向かって拝んでいる。

 それにしたってだよ?

「先生、どうやって弥源次さんを助けられたの?」

 思わず疑問の声をあげると、先生はニコニコ笑いながら言い出したんだ。

「今の俺にはな、柳生さまの後ろ盾という分かりやすいものがあるのさ」



 辰市城の戦いで柳生巌勝さまを助けた先生に、柳生の里の皆さんからこの人は柳生宗徳の弟弟子であり、身元はこちらがきっちりと保証します!みたいなことが書かれた書状を渡してくれたんだよね。


 柳生さまといえば剣の達人として有名な方ですし、この度は足利将軍さま側について一生懸命働いてくれたってわけですし、雇われ身分の守護代さまからしたら、

「やや!有名人の後ろ盾がある人がやって来たぞ!」

 という感じで先生を受け入れることになったし、

「徳一(僕の父さま)は柳生さまの弟弟子だったのを失念していた・・あちゃ〜・・ヤバいことになっちゃったかな〜」

 と、焦ることになったってわけ。


 そこで先生が守護代さまに言ったわけだよ。

「上の方からの圧が最近すごいんじゃないですか?金と兵力がコロッと手に入る算段があるんですけど良かったら乗っかりませんか?」

 ってね。


 父さまは前から、

「俺が死んだら八兵衛と兼蔵は殺しておいてくれ」

 と、先生に頼んでいたらしいんだ。

「もしも俺が死んだら、川場は弥源次が纏められるようにしておいてくれ」

 と、父さまは言っていたというんだ。


 川場の町は山から降ろした木材を川を使って運んでいくわけなんだけど、ズブの素人に管理できるような仕事では決してないんだよね。上に守護代さまが居るとはいえ、商売の折衝をするのは問屋の役目ということにもなるわけで、生半なことでは回せない仕事だというのは明らかなため、

「弥源次だ、あいつさえ残れば川場は生き残れる」

 とまで言っていたというんだよ。


 父さまからこの話をされた時には、最悪の場合、自分が殺して歩けば良いだろうという程度にしか考えていなかった先生も、

「イチもすぐに母親を追いたいだろうし、さっさと終われるように手筈をつけよう」

 ということで、守護代さまの協力を仰ぐことにしたってわけさ。


 無頼漢のまとめ役となっていた郷士兼蔵は自分が殺すとして、残った悪者たちを兵力とするために守護代さまにかっちり渡して、川場の方も八兵衛一族を差し出すことに成功したというわけなのさ。


「先生ったら、意外に頭脳派なところもあるんだね」

 僕が半ば呆れながら先生を見上げると、

「意外などではなく、俺は元々頭脳派なんだ!」

 と、先生は胸を張って言い出した。


「それでさ、先生、僕もだいぶ体も治って来たことだし、そろそろ母さまを追いかけて行きたいと思うのだけれど」

「うむ、そうだな」

 先生はうん、うん、と頷きながら胸の前で腕を組むと、

「比叡山経由で西へ向かおう」

 と、言い出したんだよね。

「先生、比叡山はうちから見ると、西じゃなくて北に位置していると思うんだけど?」

「うん・・だけどな、比叡山に行こう」

「何故?」

「・・・・」

「まさか、比叡山まで行って父さまの供養をしようなんていう話じゃないんだよね?」

「・・・・」


 母さまは西方面に攫われて行ったって言っているのに、なんで比叡山になんか行きたがるのよ。と、僕は疑問に思っていたわけなんだけど、丁度この頃、将軍足利義明さまが作り出そうとしている織田さま包囲網を突破しようと考えた織田さまは、北陸路と東国路との交差点に位置する上に京からも近く、数万の兵を要する事が可能な比叡山に目を付けていたんだよ。


 織田さまが比叡山に向かって、

「俺の仲間になれ〜!比叡山を明け渡せ〜!」

 と、叫んだところで、

「いやいや!無理無理!他を当たってくだされ〜!」

 と、比叡山側は答えるしかない状況で、

「だったらてめえら!分かってんだろうな〜!」

 と、激怒した織田さまときたら、三万の兵で比叡山を取り囲んだんですよね。


 和睦を申し出た比叡山側は黄金の判金三百枚を用意したというけれど、さてさて、

「どうなったのか知りた〜い!」

 と、先生は言うんだよ。負け戦が大好きな先生ときたら、お寺側につく気満々で出発するみたい。


「イチ、とにかく気をつけて行っておいで」

「イチ!いつでも帰って来てくれよ!俺、待っているかな!」


 知らない間に色々と僕は問題を抱えているような状態だったため、夜中にこっそりとおミツおばさんと幸太に見送られる形で出発することになったんだけど、

「なんで比叡山なのよ・・」

 と、僕はぼやき続けていたんだよ。


だけど先生は、

「お前の母さんは大事にされているから大丈夫!大丈夫!」

 と言うし、かなりの遠回りになるけれど比叡山経由で母さまの移送先に行けないわけではないということで、僕は先生についていくことになったんだけど・・


「先生、その負け戦の匂いがしたら、行かないわけには行かないみたいな考え、どうかしていると思いますよ!」

 僕は文句を言い続けることになったんだ。

 本当に先生ったら、頭の中の木組が外れてどっかに飛んで行っちゃっている人だから、僕の言うことなんかちっとも聞いてやくれないんだよな〜。



ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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