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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第一章  僕と先生のはじめの物語
16/74

16)

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 僕の先生は頭の中の木組が外れて何処かに行ってしまったんだなと思うような人なんだけど・・


「我が名は伊藤弥五郎、兄弟子徳一の息子イチは我が甥も同然のもの!我が甥を俺の目の前で食い物にしようという発言を散々してくれたわけだが、それをこの伊藤弥五郎が許すと思うてか!」


 という大見得を切った時に、僕はいや〜な予感を感じたんだよね。

 なにしろ先生は頭の中の木組がどっかに飛んで行っちゃったような人だもの。

「皆殺し」

 やりかねない、やりかねない。


 先生の話によると、何処かのお偉いさんが僕の母さまを手に入れるために『ふうまの一族』とやらを遣わした。その『ふうまの一族』とやらが郷士の兼蔵の協力を得ながら山の中の集落へとやって来ることになったんだよね。


 この兼蔵の案内をしたのが八兵衛さんで、八兵衛さんは目の上のたん瘤状態の父さまを排除できるのなら兼蔵と手を組んでやろうと考えた。

 今回は『ふうまの一族』が資金を提供してくれた関係で、大量の弓矢を用意して僕の父さまを討ち果たすことが出来たし、母さまも攫うことに成功した。


 調子に乗った兼蔵が集落の女たちを集めて、それ以外は全て皆殺しにしたのは八兵衛さんにとっては予想外の出来事だったのかもしれないけれど、

「俺はいつでも八兵衛さんの味方だよ〜」

 と、悪者たちを統括する兼蔵に言われたら、

「味方なら大丈夫だよね〜!」

 と、八兵衛さんも答えたことだろう。


 ちなみに僕の父さまと先生は同じ剣の師匠の元で学んでいるんだけど、二人は義兄弟の契りを結んだのかと思うほど仲が良かったんだ。だからね、先生が兼蔵をあっという間に殺しに行っちゃったことからも分かる通り、父さまが死ぬ元凶にもなった八兵衛さんを絶対に許さないよね?


 先生はね、やるって言ったらやる男なんだよ。

 八兵衛さんの一族郎党を皆殺しにするってことにしたら、やっちゃう人なんだよ。半分以上腐った生首を笑顔で掴める先生だもの、やるってなったらやっちゃう人なんだよ。


「はわわわわ、幸太、どうしよう、先生ったら何をやらかすか分からない人だから・・」

「イチ!そうじゃない!そうじゃないんだって!」


 幸太に手を引っ張られて走ることになった僕なんだけど、足がもつれて何度も転びそうになってしまったよ。


 同じように土蜘蛛にボコボコにされて足だって刃物で刺されているはずの幸太なんだけど、なんでそんなに元気なの?確かに幸太は足をびっこひいてはいるんだけど、なんでそんなに活発に動けるのかな?


「幸太!待ってよ!待ってくれって!」

 幸太に手を掴まれた僕はヒイヒイ言いながらついていくことになったんだけど、幸太が向かったのは川場問屋の八兵衛さんの家の前のようで、川場の人間が全員集まったんじゃないかと思うほど大勢の人が集まっているような状態になっていた。


「どいてください!どいてください!」

 幸太は大人をかき分けながら前へと出ると、八兵衛さんの一族全員が捕縛されている状態で膝をついている。

 拘束を受けた八兵衛さんや惣兵衛さんの隣には先生が立っていて、先生は剣の柄に手を置いてニマニマ笑っているんだもの。


「先生〜!無益な殺生はいけません!」

 先生ならやる、先生なら確実にやるだろう。

 縄で縛り上げた八兵衛さんたちを一直線に並べて、ズバーッと斬り捨てるくらいのことは平気でやる!


「先生〜!殺しはいけません!話し合いで済ませましょう!父さまだってそんなことは望んでいません!平和的解決が必要!血生臭いことはもう結構!」


 大人の間をすり抜けるようにして飛び出した僕は、先生にしがみつきながら訴えたんだけど、先生はニコニコ笑いながら僕を見下ろして、

「俺はいつだって平和的解決を望んでいるよ〜!」

 と、言い出したんだ。


「嘘ばっかり!」

 僕は泣きながら言い出した。

「せめて弥源次さんだけは助けてあげて!あの人、妾の子だからって馬鹿にされているんだけど、あの人居なくなったら川場は終わりになっちゃうから!」


 材木問屋の八兵衛さんなんだけど、惣兵衛さんと弥源次さんという二人の息子が居て、弥源次さんは妾の子なんだよね。跡取り息子の惣兵衛さんは表の仕事をして弥源次さんは裏方に回っているんだけど、商取引なんかは全て弥源次さんがやっていて、最後の最後に惣兵衛さんが出てきて美味しいところは全て持っていくという感じだったんだ。


「弥源次さんは今まで美味しい思いなんか一つもしてこなかったんだ!だから八兵衛さんたちと一緒に並べて殺さないで!」


 八兵衛さんも惣兵衛さんも、父さまの息子である僕の顔を見るだけでそりゃあ嫌な顔をしていたんだけど、そんな僕にお団子を買ってくれたのは弥源次さんだけなんだ!ここで僕は弥源次さんを助けられなかったら一生後悔するのに違いない。


「イチ、お前はなんて良い子なんだ!」

 そしたら先生の隣に立っていた弥源次さんが、滝のような涙を流しながら僕の頭をぐりぐり撫で始めたんだ。

「こちらのお子さんは?」

 真向かいに立っていた強面の役人が問いかけて来たので、

「殺された徳一の息子ですよ」

 と、先生が僕の肩に手を置きながら答えている。


 え?役人?

 改めて顔をあげてみれば、守護代さまから遣わされたと思しき役人やら捕り方やらが大勢集まっており、

「え?なに?なに?なに?」

 わけがわかんないよね。


 そしたら僕と一緒にやってきた幸太が、

「あちゃ〜」

 っていう顔で僕の方を見ているよ。


ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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