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突然、大量の弓矢を持った悪漢どもが山の集落に現れて、男たちは皆殺し、母さまを含んだ女の人たちは連れ去られてしまったわけなんだけど、先生がまとめて置いた遺体を見て、親族の人たちは大いに悲嘆することになったってわけ。
それだけ残された遺体が無惨な有様となっていたわけなんだけど、
「これは供養をしなければ私の心がおさまらない!」
と、言い出したのは八兵衛さんで、わざわざ律宗の徳の高いお坊さんを招いて供養を行ったんだよ。在所ではない遠くのお坊さんを八兵衛さんはわざわざ大金をかけて招いていたわけで、
「「「さすが顔役さんだわ!」」」
と、みんなは感心していたわけなんだけど、唐律招提に木材を横流ししていたってことが分かるとだよ?律宗の総本山は唐律招提だから、そりゃあ徳の高いお坊さんだって呼べちゃうよねっていう話になっちゃうんだよ!
「わざわざ悪漢どもを招き入れて集落を全滅させて」
「罪悪感でも感じるようになったのかね?」
「だからこそ、徳の高いお坊さんを招いたってことになるんだろうか?」
「それじゃあ、供養の時に土蜘蛛の奴らがやって来たのも、八兵衛さんが招いてのことってわけなのかい?」
皆んなが皆んな疑惑の眼差しを八兵衛さんに向けたわけだけれど、土蜘蛛と八兵衛さんは関係なかったんじゃないのかな。
悪漢どもを取りまとめるようなことをしていた郷士の兼蔵と八兵衛さんが話を付けていた関係で、川場の町は守られるものと思い込んでいたところ、そんなことは知らない土蜘蛛の一味が川場の町までやって来た。
供養で大人は山に登っているし、守護神とも言われていた僕の父さまは死んでいるし。簡単に川場の町を制圧できると土蜘蛛の奴らは考えたんだろうけど、全員、生首となって現在晒し者状態になっているってわけ。
八兵衛さんはさ、冷酷であり残酷なことでも有名な土蜘蛛をたった一人で撃退出来るイチさえいれば、川場の町は何の問題もないだろうと考えた。なんなら、僕を使ってお金を稼ごうとまで考えていたっていうんだから笑っちゃうよ。
僕はさあ、子供なんだよ!子供!
子供が土蜘蛛の奴らを一気に殺して歩くなんて、出来るわけも無いことを本気で信じているあたりが信じられない。
しかも子供の僕が用心棒?
本当に頭がおかしくなっちゃったんじゃないかな〜。
「いやいや、イチ、お前はそろそろ現実を認めた方が良いと思うぞ?」
川場の人間は尻餅をつく八兵衛さんに襲いかかって行ったんだけど、息子の惣兵衛さんは巻き込まれたら大変だとばかりに、自分の父親とは距離を取ってしまっているような状態だよ。
「イチ、ここには首級しかないけれど、見てみろ、コイツも、コイツも、コイツも、鼻っ柱を切り付けられているだろう?」
八兵衛さんがボコ殴りにされているのを一切気にすることもなく、先生は僕に土蜘蛛の生首を見せながら言い出した。
「お前は俺が教えたことをきちんと踏襲しているのが、コイツらの死体を見聞していて良く分かったぞ。体が小さいという不利な点を利点に変えて、まずは相手の急所を傷つける。ここなんか見てみろ、首をこのように斬り割るのはなかなかの腕だぞ?」
そう言って先生は生首を右手で掴んで持ち上げると、首の断面に残った深い傷を見せながら僕に言ってきたわけなんだけど・・
「ううぉぉおぇえええ」
僕はその場で嘔吐した。
朝、おミツおばさんがわざわざ用意してくれた芋粥を全て嘔吐してしまったよ。
「いや、吐くのは後で良いから、一旦、自分のやったことを直視した方が良い。土蜘蛛の首領、コイツなんかほとんど首が切断されているような状態だったんだから。だけどこの切り口はイマイチだ、こういった場合の刀の振り方はこう!骨を断つならこう!」
「怖いこと言わないでよぉお・・う・・うぉぉえええええ」
日にちも経っちゃっている生首は本当に臭いし、気持ち悪いしで、なんで先生が笑顔で生首を掴んで持ち上げられるのかが良く分からない。
この時の僕は、明るい笑顔で生首を掴んで講釈を垂れる先生の心境が全く理解できなかったんだけど、自分の父親をボコボコにされているっていうのに、全くの他人事という扱いをしている惣兵衛さん自身に対しても理解出来なかったよね。
もしかしたら惣兵衛さん、八兵衛さんが死んだら次は自分が川場の主人になれると信じ込んで、ウキウキしていたんじゃないのかな?
川場には他にも材木問屋はあるんだけど、やっぱり一番大きな問屋は八兵衛さんのところの問屋だし、守護代様にも認められたって自ら宣言しているほどだしね。
悪いのは八兵衛さん、自分は全く関係ない。
この世の中は金さえあれば何とかなるので、たとえ役人が川場の町までやって来たとしても袖の下を掴ませれば何とかなるだろうくらいに考えていたんだろうね。
惣兵衛さんの何が嫌だって、自分の父親がボコ殴りにされている隣で、自分は弓を持った護衛に守られながら、安全を確保しているっていうところだよ。
こんな奴が次の川場問屋の主人になるのか・・と、思うと、暗澹たる思いになっちゃったんだけど、次の日の朝、幸太が僕のところまでやって来て、
「イチ!大変だよ!イチ!」
と、大声をあげたんだ。
その日は朝早くから先生は不在。
何処に行ったのかも分からない状態だったため、
「まさか、先生ったら、八兵衛さんや惣兵衛さんを殺しに行っちゃったのかな?」
と、問いかけると、
「そうじゃないんだよ!イチ!お前も外に出てことの顛末を見た方がいいよ!」
と、幸太が僕の腕を引っ張りながら言い出したんだ。
ゴリゴリの時代小説をライトに描いておりますが、これから有名人とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でおりますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!
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