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一鬼  〜負け戦専門の先生と僕の物語〜  作者: もちづき裕
第一章  僕と先生のはじめの物語
1/74

1)

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。ガチガチの時代小説をライトに書いているのですが、非常に血生臭いので、戦いが苦手な方はご注意ください。

 怒号があちこちで湧き上がり、矢が頭上を掠め、鉄砲の音があちこちで鳴り響く。

塀が引き落とされ、搦め手口の一角へと押し進んだのが松永勢で、城攻めの道具である仕寄りを彼らは寄せ付けた。


 僕が生まれたのは山の中の一軒家なのだけれど、僕らが住んでいる山の周りでは、戦、戦、戦の状態になっていたんだ。

 そんな戦に喜んで参戦するのが僕が先生と呼んでいる人なんだけど、

「まずは敵を突き崩せ!」

 十文字槍を掴んで馬上から大声を発した素晴らしい体格の武将、柳生巌勝という名前の人になるんだけど、この人は僕の先生ではないです。  


 車輪をつけた敵の櫓が城壁の傍につけられ、これを登ってきた兵士たちが土塁や塀を飛び越えて城内への侵入を試みる。

 それを妨ごうとする城兵がいっせいに矢を射かけ、槍で敵を叩き落とした。


 お城の守護を指揮する筒井さまという方で、お城を絶対に落としたい人が松永さまという方だったのですが、筒井さま、味方の裏切りにもめげずに、見事に敵の侵入を防いでいるような状況です!


 法螺貝と陣鉦の音が鳴り響き、南曲輪の木戸口から討って出た城兵四百が仕寄せを組んで侵入を図る搦め手口へと突入する。搦め手門前は敵と味方が入り乱れていたのは間違いない状態です!


 この絡めて門前で馬に乗って城門から侵入しようと指揮をしていたのが先ほど馬に乗っていた柳生巌勝という人になるんだけど、この若き武将から遠く離れた場所に足軽部隊がいたわけさ。

 足軽っていうのは馬にも乗らない雑兵の集まりみたいなものなんだけど、その中でもそれは粗末な装備に身を包んでいる人、防具はボロボロなんだけど腰に差した長剣だけはやたらと長いから目立つ人。


 これこれ、この人が僕の先生なんだよ。

 僕がまだ父上と一緒に山の中で稽古を続けていた頃なんだけど、外の世界では至る所で戦が行われているような状態だったんだ。


 昨日の友は今日の敵なんてことは当たり前に行われていたし、裏切り、裏切り、裏切りの連続のような時代。下っ端の雑兵ともなれば、

「今度はどっちにつく?」

「あっちにつく?」

「勝ち馬はどれだ?」

「いや、皆目分からん」

 状態になっている。


 後に大和最大の合戦と呼ばれることになる場所に先生が参加をしているのは、間違いなく野生の勘が働いたからに違いない。

 この時の先生は自分の腕を磨くために、大きな合戦になりそうだと噂を聞きつければすかさず駆けつけ、参戦するような人だったからね。

 それに今回は兄弟子のご子息にもなる、先ほどから馬に乗って声を張り上げている武将柳生巌勝さまの助太刀をするつもりもあったのかもしれない。


 お偉いさんの武将である巌勝さまが雑兵でしかない先生の助太刀なんて全く意識しているわけもないんだけど、兎にも角にも先生は大和最大の合戦と言われる戦いに身を投じたわけなのさ。


 ちなに辰市城というお城は筒井順慶という人が部下に命令して建てさせたお城で、

「辰市城をぶち壊せー!」

 と、声を張り上げているのが松永久秀という人。

 この松永という人のかつてのご主人様が城を守っている筒井様なのだけれど、元々、この二人は仲が良い主従関係だったんだよね。

 松永さまは主君を攻め滅ぼそうってことまではあんまり考えていなかったんだけど、こっちに味方をしてくれるのなら援軍を沢山送ってあげるよ〜と言う人が居たわけなんだよね。それだけ援軍を送ってくれるのなら、かつてのご主人様だって倒せそうじゃね?ということで、軍討伐に舵切りをした裏切り者が松永久秀っていう人だよ。


 兎にも角にも、この時期は毎日、毎日、いろいろなところで戦が勃発していたんだけど、今回の松永さんの裏切りは、

「悪辣すぎるし!爽快すぎる〜!」

 と、後に言われるほどの大裏切りになったわけですね。

「あんなに可愛がられていたのに?」

「嘘でしょう〜!」

 と、周りも驚くほどの大裏切りです。


 さて、裏切り者と言われる松永さまに付くことになったのが僕の先生、ついに左腰から太刀を引き抜きました。

 敵とのぶつかり合いの中で、地面から跳ね飛ぶが如く、先生の剣先が下から上へと掬い上げられて敵の腕を甲冑共々切り捨てた。腕を切断された男は尻餅をつくと、その背後から飛びかかってきた敵の面上へ、刀を走らせ十文字に切断する。


 先生はよくこれをやるんだけど、面上に走らせるなら横一文字でも良くない?って僕なんかは思っちゃう。だけど先生は十文字にするんだよ。変なこだわりはやめてって僕なんかは思っちゃうんだけどね。


 血飛沫をあげて倒れるその体を先生は踏みつけにして跳躍すると、返す刀で向かい来る敵の兜ごと切断した。そのまま地面へと着地するとへばりつくような姿勢で敵の槍の穂先を寸前に避け、地上より八寸ほどの高さへ刀を走らせていく。


 八寸の高さ(約24センチ)というと脛を切り割っていく形。これを食らった敵は再起不能状態だよ。鬼だよね〜。


 足を切断され倒れ込む敵兵のその先には、黒馬に跨る敵の武将がやってきちゃったよ。派手に暴れすぎて目をつけられたのは間違いない!敵将沼木蔵重は先生を認めると、

「カッ!」

と、怒りの吐息を吐き出し、馬を走らせた。


 武将の強みは、恐れを知らぬ馬にある。

 雑兵相手なら馬の足で踏み潰してしまえば、はい終わり状態になるのだもの。

 馬で踏み潰さなくても、持っている長槍でひと突きにすればそれで終わりだからね!


まずは先生のお話から始まります。本日3話分を公開、次は15時18時に更新したいと思います!

懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

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