お求めの悪役令嬢じゃありません
「きみを悪役令嬢と見込んで、頼みがある!!」
明るい金色の短髪が勢いよく下げられた。
目の前で突然、頭を下げた男には見覚えが無い。背は高く、均整の取れた身体つきは鍛えていることが窺える。今の流行ではないがスタンダードな燕尾服を品よく着こなしていて、そのスタイルの良さが際立っていた。
「あなた、お名前は?」
顔を上げたその男は凛々しい眉に明るい空色の瞳、すっと通った鼻筋に薄い唇、どこぞの絵画から飛び出してきたのかと疑うほどの美しい容貌をしていた。
「突然、失礼した!」
しかし、話し出すとどこか人懐っこく、非現実的な美しさが急に現実に紛れ込む。慌てて謝罪するその姿は好印象でしかない。
「俺はハミルドン伯爵家の次男でライナスと言います」
ハミルドン伯爵家といえば、新種の果樹を開発した技術力、それを国の代表する輸出物に押し上げた販売手腕が評価され、近々陞爵の噂がある家だ。次男は確か長いこと大国に留学していたはず。
どうりで顔に見覚えがないわけだわ。
「わたしはアイラ。リーガイル伯爵家が娘でございます」
同じ爵位の家同士、敬意を払って片足を引いて挨拶をする。
わたしの美しいカーテシーに見惚れているのか、彼は無言で口をパクパクと開けては閉じた。
「リーガイル伯爵家? 公爵家ではない? え?」
戸惑う彼に、追い討ちをかけてやる。
「わたし、悪役令嬢だなんて面と向かって言われたのは初めてよ。人違いじゃなくって?」
整った顔が一気に顔色を無くす。
人間違いをした上に、悪役令嬢とは、どう考えても誉め言葉には聞こえない。
「大変失礼なことを!! 公爵家の娘は妖精のように美しいが悪魔のような性格をしていると噂で聞いて、今宵一番美しい令嬢であるあなたがそうに違いないと、思い込んでしまった」
それで家族から少し離れた隙に手を引かれ、有無を言わさず廊下の隅に連れて来られたわけね。悪役令嬢と言われたことに腹は立つけれど、美しいと言われて気を悪くする女はいないだろう。
「お口がお上手ですこと。さて、ではあなたはわたしではなく本当は別の悪役令嬢が必要でしたの? もしよろしければその理由を教えてくださる?」
理由によってはその美しい顔に傷をつけて償ってもらおうかしら。いいえ、彼は自分の容貌にはこだわらなさそうね。それよりも家族が苦しむほうが重い罰になりそう。彼の家族はどんなことに苦渋を覚えるのかしら。
微笑むわたしが怒っていないと判断したのか、彼は表情を緩ませた。
「実は、俺は10歳の年から八年間留学していて、つい先日帰国したばかりなんだ。我が家には二つ年上の兄の婚約者であるマドリンも同居していて、彼女は俺とは同い年で、幼馴染でもある。彼女が、その」
そこから先は事情があるのだろう、言い淀む彼に予想はついた。
「お兄様よりもあなたと結婚したいと言われた?」
「どうして、それを……!?」
やっぱり、と思う。だって、ハミルドン伯爵家の功績の話は聞こえてくるが、長男の容姿に関しては特に聞いたことがない。目の前にいる男の兄ではあるから美形ではあるのだろうが、人並外れて、というほどではないのだろう。
対して、驚きに表情を崩しているライナスは、どんなに素晴らしい内面や特技があったとしても、真っ先にその容貌の美しさを語られるであろうほどの外見をしている。帰国してまだ間もないようだが、今シーズン中には彼の美しさは周知の事実となるであろう。
微笑むだけのわたしに、彼はため息をついて視線を落とした。
「5歳の頃に俺がトイレに間に合わずにお漏らししてしまったのを、遊びに来ていた彼女に見られてしまって。それ以来、言うことを聞かないと友人たちにバラすと、彼女は俺を子分のように扱うようになった。馬になれと言われて部屋中乗り回されたり、床にわざと落としたクッキーを食べるように強要したり。親や兄の目の届かないところで、俺が留学するまでそれは続いた」
うん、うん、と頷きながら話を聞く。
別に悪役令嬢を探さなくても、身近に性格の悪い女がいるじゃない。どうせなら、日ごろの鬱憤を晴らすような使い方をせずに、知っているということだけを伝えて、秘密を握ったまま、ちょうどよい駒にすればもっといいと思うけれど。
「先日、久しぶりに帰宅して、驚いた。まさかマドリンが兄上の婚約者になって、しかもすでに屋敷に住んでいるなんて」
トラウマでしかない女が兄の婚約者で、将来家族になる上に、自宅で毎日顔を合わせるなんて、そりゃあイヤでしょうね。嫌がらせとしてはまぁいいセンスをしているかしら。
「彼女は俺に背が伸びた、格好良くなった、だの言って、必要以上に触れてきて。兄のいないところで、兄とは親同士が勝手に決めた婚約で、ちっとも好みじゃない。どうせこの家に嫁に来るのなら、俺と結婚したいと言い出したんだ」
たしかマドリン・ソニー子爵令嬢は学院での成績・素行がよろしくなくて退学勧告まで秒読み、という噂だったけれど、婚約が決まったからと自主退学をしたはずだ。
「俺が聞いていたのは、幼馴染のマドリンが兄に惚れ込んで親に泣きついて、ソニー子爵家の商売の権利の一つを譲渡することを条件に婚約を成した、という話だった。彼女の希望で、彼女の家から申し込まれた婚約だと聞いている。しつこいくらいの彼女の好意に根負けして、婚前から我が家に住むことを認めたと」
周囲の話と彼女の話が食い違っているのね。詰めが甘いわ。
「しかも、当主になることが決まっていて、そのための教育も受けている兄とは結婚せずに、留学して好き勝手していた次男の俺と結婚してハミルドン伯爵家を継ぐとか、頭がどうかしている。兄を、我が家を侮辱していると言ってもいいと思う」
「けれど、幼い頃の失敗をネタに脅されることを考えると、強気にも出られない?」
ライナスは唇を噛み締めて、こくんと頷く。頬が赤く染まり、可愛らしい。
「そんなこと、と言いたいのだが。どうしても恥ずかしくて、お漏らしをしたことを知られたくないと思ってしまう。彼女に会うのが嫌で、親戚や旧友の家に泊めてもらったりしていたのだが、荷物を取りに帰った時に、マドリンが密かに媚薬を手に入れたと家のメイド達がお喋りをしているのを聞いてしまった。彼女達は兄との初夜に使うと考えていたようだが、おそらく、家に寄り付かない俺に業を煮やしたマドリンは、夜会に紛れて俺に媚薬を盛って既成事実を作ろうとしていると思うんだ」
彼の話に聞く浅はかなマドリンであれば、考えられそうなことである。これだけ美しい男が媚薬に狂わされながら「待て」をされるところを見てみたい気持ちなら、共感できそうだけれど。
うっかりわたしにお漏らしした秘密を話してしまっていることに気がついていない、目の前の美しい男性を見ながら考える。
「それで、彼女の上を行く悪役令嬢と名高い女に自分を奪ってもらおうと考えたの? 噂の公爵令嬢であれば、あなたの実家であるハミルドン伯爵家もマドリン令嬢のソニー子爵家も口を出せないものね」
「噂の悪役令嬢と呼ばれる公爵家の娘は、自分の婚約者だった男を王家主催の晩餐会で酷くこけにして笑い者にしたと聞いた。その後、婚約者だった男は家を追い出され平民に落とされたとか。他にも自分に仕える侍女もメイドも護衛も、少しでも気にいらない時は返事すらせず、その存在を無視して、時には罰を与える冷酷さだと聞く。噂話だけでは真意はわからないが、その令嬢が考えなしだとは俺には思えない。様々な思惑のスケープゴートにされた可能性もある。そしてそれを受け入れる器があるのであれば、俺に同情してくれるかもしれないと考えた。そうでなくても、噂通りの傲慢な態度や行動が許されるほどの存在であれば、マドリンも敵わないと俺を諦めてくれると思ってしまったんだ。今夜にでも彼女に媚薬を盛られるかもしれないと焦るあまり、勢いできみに声をかけてしまった」
元婚約者は善良だが考えが浅い男だったことは、彼の家がうまく情報操作して漏れていない。王家が主催した晩餐会に、王族のみが許されているロイヤルブルーを身に纏って現れるなど、殺してくれと言っているようなものだ。しかも、婚約者がいる身で、好きな女の子に貰った物だから取り上げないでくれと泣いて懇願するような男は貴族として生きていけるわけがない。
例えそれが、陽の光の下では明るい空色で、薄暗い照明の室内でだけ、濃い青に見えただけだとしても。陛下の目にロイヤルブルーに映ったのならば、それはロイヤルブルーなのだ。
彼の頭が弱いことを前面に訴え、なんとかその場を取り繕うことが出来た。下手に彼を庇うような行動に出ていたら、今頃は彼の生家である侯爵家も悪役令嬢と呼ばれる娘の公爵家も存続が危ぶまれていたことだろう。元婚約者の貴族籍剥奪のみで場は収まり、彼は家を出た。もともと貴族として生きるには優しすぎる男だった。貴族のくせに偉ぶることもできず、しかし労働は厭わない性格だったから、今頃は他国の田舎町から親戚を頼ってこの国に働きに来たというキッチンメイドだった娘と、仲良く食堂勤めでもしていることだろう。
身分ある家に仕える者は、それに相応しくなければならない。些細なミスも笑って許せばいいというものではないのだ。高い給金を支払い、見合ったマナーも学ばせ、一流の使用人に育て上げる義務がある。使用人たった一人のレベルが低いだけでも、その家の家格が損なわれるのだ。厳しく接するのは当然のこと。
しかし、家での使用人の扱いが外に漏れているとは由々しき事態。早急に手を打たなければ。
「わたしでよければ、お力になるわ。今夜はあなたにエスコートされてあげる。それだけで周囲の皆様には、あなたがわたしのお気に入りってわかるもの。すでに決まった相手がいる男性には簡単に手を出せなくなるはずよ。もちろん、それでも媚薬を盛られる可能性はあるから、今夜は馬車に乗るまで、わたしはずっとあなたの側にいるわ」
「今更だけれど、きみに婚約者はいない? きみこそ、俺との関係を誤解されてしまうよ」
本当に今更ね。わたしはもうあなたが気に入ってしまったの。
「わたしに婚約者はいないわ。あなたとなら、誤解されてもいいの。もちろん、誤解じゃなくってもいいのよ?」
小首を傾げて微笑むわたしに、彼は頬を染めた。整った美しい顔が、時々可愛らしく変わって、わたしの胸もなんだか高鳴っているような気がする。
他人に知られたくない秘密をうっかりわたしに漏らしてしまう迂闊さも可愛く感じるけれど、わたしにだけそうであるように躾のしがいがありそうだ。
「では、お願いしてもいいだろうか?」
「もちろん、お受けするわ」
わたしはライナスを連れて控室に戻り、家族に彼を紹介した。わたしに危険がないことは影から報告を受けてわかっていた父は、興味深そうに彼を観察し、本日のエスコート役を譲ってくれた。
すでにたくさんの人で溢れている会場に、名を呼ばれ、わたしはライナスと共に入場する。わたし達の登場に人々から騒めきの声が漏れだす。
これまでわたしは元婚約者以外には、父や従兄弟などの縁戚関係の男性としか夜会に参加することはなかった。それが今夜は、見慣れぬ男性にエスコートされている。それも、とびっきり輝く美の化身のような男。彼は先ほど出会ったばかりだというのに、わたしに甘やかな視線を注いでいる。
「ライナス」
彼の名を呼ぶ男性の声に振り向くと、ライナスは嬉しそうに笑った。
「アイラ嬢、彼は俺の幼い頃からの友人です。紹介しても?」
もちろん、という意味を込めてにっこりと微笑みを返す。
「エイブラハム、先日は何日も滞在させてくれてありがとう。こちらはアイラ嬢。俺の今夜のパートナーだ」
「ラブレス伯爵家の長男、エイブラハムです。お目に掛かれて光栄です」
ライナスの言葉にぎょっと驚きながらも紳士的な態度を崩さない彼に、アルカイックスマイルでこちらも挨拶を返す。
「リーガイル伯爵家が娘、アイラでございます。お見知りおきを」
「妖精や女神にも例えられる社交界の美しき花である貴女様のことは、もちろん存じております。少しライナスをお借りしても?少々男同士の話がありまして」
「わたし、今日は帰りの馬車に乗るまでライナス様から片時も離れないと約束をしておりますの。お邪魔はしませんから、わたしのことは気にせず、どうぞお話になって?」
本当か?という目でエイブラハムがライナスを見る。彼は少し頬を染めて嬉しそうに話し出した。
「ずっと俺の隣にいてくれると約束をもらっている。彼女は俺の酷い勘違いに怒らないどころか、困っている俺を助けてくれようと申し出てくれた優しい人だ。妖精のごとし美しさに、天使のような清らかな心を持っているんだよ」
それを聞いた友人は、顔を引きつらせながらも笑顔を保とうとしている努力がうかがえる。
「彼女がどんなお方かわかっているのか?」
「先ほど名乗っただろう? リーガイル伯爵家のご令嬢だ」
「リーガイル伯爵はゴスウェル公爵家が持っていた爵位の一つで、いずれ公爵家を継ぐご予定の方が譲り受けておられる」
長く他国に留学していたため、この国の貴族関係に疎いらしいライナスは不思議そうな顔をしている。
「つまり、ゴスウェル公爵の息子で、次代のご当主が現リーガイル伯爵様。彼女はゴスウェル公爵の直系の孫娘だ」
ライナスは、悪役令嬢は公爵家の娘、と聞いていたようだが、正確には公爵の孫娘。わたしのことだ。面と向かって言われたことはなかったから驚いたけれど、陰でどう呼ばれてどんな噂をされているかは、おおむね把握している。
「ライナスじゃない! 家にも帰らないで夜会には出席していたのね」
突然、甲高い女の声が馴れ馴れしくライナスの名前を呼んだ。
振り向くと、先ほど彼から話を聞いたばかりのマドリン・ソニー子爵令嬢がこちらに向かって歩いて来る。手に持つグラスのシャンパンを零さないよう、人を避けながら。
「や、やぁ。マドリン」
思っていた以上に苦手なようで、麗しいライナスの顔は引きつっている。どんなに好みの相手でも、挨拶の言葉すらまともに返せない関係性の相手に結婚を迫るなど、よほど愚かな女だと思われても仕方がない。
ライナスの反応も、隣にわたしがいることもお構いなしに、マドリンは彼にしな垂れかかるように体を寄せてきた。
「このお酒、とっても美味しかったからライナスにも飲んで欲しくて持ってきたのよ」
ぐいぐいと押し付けられるグラスを、彼はやむを得ず受け取る。
ライナスはまだグラスに口をつけていないというのに、マドリンは勝ち誇ったような顔をして、苦労して寄せて上げたであろう胸の谷間を彼に突き出す。
「わたし飲み過ぎちゃったみたいで、休憩室に連れて行ってちょうだい」
有無を言わさぬ口調で、彼女が普段からライナスに命令しなれているだろうことが伝わってきた。
「俺は、今夜はアイラ嬢の側を離れないと約束している。悪いが、休憩室には別の者に付き添いを頼んでくれ」
ライナスがちらりとエイブラハムに視線を送ると、彼は無言で首を横に振った。
彼の言葉で、やっとわたしの存在に気付いたマドリンがこちらを見る。
「あなたは……!!」
社交界でわたしの顔を知らないなんて、よほどの田舎貴族か、長くこの国を不在にしていた者くらいであろう。
我がままな上に公爵の孫娘という権力を好きに使うわたしに逆らえないことが、幼稚で愚かな彼女でもわかっているだろう。
マデリンに押し付けられたシャンパングラスを、ライナスの手から奪い取る。それを傾けて、一気に飲み干す。
慣れない味が口いっぱいに広がり、喉が熱くなる。アルコールが苦手なわたしには辛い行為であったが、その後のことを考えると、思わず顔が綻んでしまう。
「ライナス様、なんだか身体が熱くなってきたわ。休憩室に連れて行ってくださる?」
先ほどのマデリンの真似をして、ライナスに寄りかかる。シャンパンに入れられていただろう媚薬はまだ効果を発揮していないが、上目遣いのわたしに、ライナスはごくりと唾を飲む。
「しかし……」
「馬車に乗るまで、今夜はずっと一緒にいると、約束したわ」
彼の手に、自分の手を絡めて恋人繋ぎにする。わたしの熱が、彼に伝わるように。
恐らく、ライナスに公爵家の悪役令嬢の噂話を吹き込んだであろうエイブラハムは、そのことを生涯後悔するだろうか。
彼のおかげで、ライナスがわたしを見つけて、わたしも見目も中身も気に入った将来のお相手を見つけられたのだから、せいぜい優遇して差し上げましょう。もうライナスに変な虫が寄り付かないように、立派な盾となるよう協力していただければ、だけど。
何が起こったのか理解できないようで、ポカンと間抜け面を晒しているマドリン・ソニー子爵令嬢が親戚になるのはご免だし、可愛い彼の秘密はわたしだけのもの。まつ毛も凍る極寒の北と、裸足で歩けない灼熱の南と、彼女はどちらを希望するかしら。
クスクスと笑いながら、ライナスにさらに身を寄せた。早くも薬が効き始めてきたようで、立っていることが辛く感じる。
「今夜初めてきみに出会い、言葉を交わしたというのに、もう俺の心はアイラ嬢で満ちている。きっと後悔させないから、本当に今日はずっと傍にいてくれる?」
わたしの顔を覗き込むライナスも、媚薬を飲んだかのように頬を染め、瞳を潤ませている。そんな彼に嬉しくなって、胸が高鳴る。これは先ほど飲んだアルコールのせいか、媚薬のせいか、はたまた、これが恋と呼ばれるものなのか。
「後悔なんてしないわ。わたしは全て自分で選んで決めてきたの。あなたにも、絶対後悔させないから、早く連れていって?」
ふわりと身体が浮いて、気が付けば彼の腕に抱えられていた。
ライナスは手近な休憩室にわたしを連れて入って、そっとベッドの上に体を横たえてくれる。彼の瞳は潤んで、欲を孕んでいるのがわかった。
「お水をくださる?」
熱く火照る体に耐えながら、懐から薬を取り出す。ライナスが水差しから汲んでくれたコップにそれを溶かし、ぐびりと飲む。
「アイラ嬢、大丈夫?」
心配する彼に、呼吸を整えて返事をする。
「ええ。媚薬の効能はじきに治まるわ」
にっこり微笑むわたしに、ライナスの表情が固まった。
それから部屋に置いてあったカードゲームを楽しんで、勝利のご褒美にライナスの頬に口づけを送ってあげた。照れて顔を赤くする彼は可愛らしい。
この数日後、悪名高き令嬢が、すい星のごとく現れた美しき婚約者を手に入れたことが、社交界中に知れ渡ることになる。
アイラとライナスが結婚して数年後、悪役令嬢と呼ばれていた頃が嘘のように、夫に愛され幸せそうに微笑むアイラは若い令嬢たちの憧れとなっていた。
彼女は結婚してからも自分が思うように好きに生きたが、ライナスにとっては、いつまでも妖精のように美しく、天使のように清らかな最愛の人であり続けたという。
数ある作品の中から見つけてくださり、読んでくださり、ありがとうございます。
ブックマーク、評価、いいね、どれもとても嬉しいです。