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005. 初めての女子会

 午後のお茶会には、昨日の晩餐でおしゃべりをしたテータとクイナの他に、クイナの姉のカーラがいた。

 テータとクイナは同じ歳だとは知っていたが、その姉のカーラも15歳と意外に歳は近かった。意外と思った理由は、非常に大人っぽい体型と服装のせいだ。けしからんお胸ですね。


「キース様の婚約者になったのでしょう?じゃあ、もう姉妹みたいなものよね。」


 ロベルト公爵家関係者の距離のつめ方がよくわからない。そもそも、昨日のテーブルに皆さんのご夫君がいらっしゃらないことも不思議なのに。

 失礼になるかもしれないと思うと、どこからどう尋ねたら良いか全くわからない。


「テータ、クイナ。いつもロベルト公爵家の在り方は一般的じゃないって言ってるでしょう。ミラ嬢が目を白黒させてるわよ。」


 人付き合いがないせいで感覚がおかしくなっているのかと思っていたけど、やっぱり普通ではないんですね。普通もよく思い出せないし、前世の対応が今世の普通かは疑問だが、そういう指摘や解説は助かります。


「あのね、んー、先ず、多分、昨日の晩餐で私達の父親がいなかった理由は聞いてる?」


 読心術でも習得されているのだろうか。カーラお姉様と崇めたい。


「ロベルト公爵家って女ばかりでしょう?しかも結構女傑が多いからか、基本、ご夫君は前もっての集まりには来ないのよ。身分や立場の差もあるし、夫婦仲は良いけど、居辛いみたい。ウチの父もそう。」


 確かに、運悪くあの中に男性一人とか傍から見ても可哀想でしかない。昨日の晩餐でも男性陣は一所に固まって座っていらっしゃったもんな。


「一週間後の葬儀にはみんな来ると思うわよ。基本的にみんな恋愛結婚だけど、交流のない家の人と恋愛するのも難しいから、勢力は固まってるのよね。」


「だから私達の結婚って死活問題なのよね。」


「ね。面識がある家は基本親族だもんね。」


 この国の領地は大体50くらい。襲爵される爵位は100もない。

 18人兄妹でかつ叔父叔母甥姪とか考えだすと近親婚を避ける方が難しい気がする。きっと分家や騎士とかにも嫁いでいるんだろうけど。


「だけど、キース様との婚約に関してイチャモンつけてくる親族はいないと思うわよ。ロベルト公爵家ではセシリア様の決定は絶対って感じだから。」


「そうそう。だから私、後継はセシリア様だと思ってたもの。」


「それはないわよ。だって、セシリア様は既にレベッカ公爵夫人だもの。」


 5つある公爵家のウチの2つは親戚なんですね。確かに世間が狭い。


 長らく話すのは家庭教師くらいだったので、ポンポン会話が弾んで違う話題に飛んで行くのが面白い。女の子同士だとよくある話だったよね。懐かしい。


「親達もなんだかんだで安心するんじゃないかしら。伯父姪で恋愛とか泥沼過ぎだもの。」


 兄妹で孫子以上に歳が離れている家系図を見ていたら洒落にならんのですが。


「キース様の婚約者になったなら、王都で暮らすことになるのかしら。それともここで?」


「まだそこまでお話しできていないんです。」


「ふーん。王都だと簡単には会えなくなっちゃうわね。私達の親は辺境伯だから、社交シーズンでさえ王都に行くことはないのよね。公爵領にはポータルがあるから、よく来るんだけど。」


 ポータルとは、決まった地域間での転移ができる施設のことだ。大都市のポータルが王都と、地方都市は各地方の大都市と繋がっている。かなりの魔素と費用が必要なため、貴族や大商人専用と化していると聞く。


「私の親も公爵家の騎士団員だから、王都は難しいなぁ。」


「王都にいつもいるのって、ラニア様とシンシア様かな。ラディエルのところも、アイラ様はご主人についてよく王都にいらっしゃるんだけど、子どもは領地で留守番なんだよね。」


「シンシア様はまだ歳が近いけど、それでも私達とは15歳以上離れてるからなぁ。」


 カーラが描いてくれた家系図では、シンシア様は故公爵様の庶子で、カシアス様のすぐ上のお姉様らしい。

 ちなみに、ラニア様は故公爵の次子で、故公爵の長女セシリア様の長女がアイラ様で、その娘がラディエルだ。

 カーラとクイナはハウエル辺境伯に嫁いだキース様の異母姉であるメルシア様の子供で、テータは同じく異母姉のトリシア様の娘である。

 ややこしい。


「あ、でもテルスはカシアス様が政務官になったら、護衛兼従者にどうかって言われてたし、便乗して私も侍女としていけないかな。」


「えー、ずるい。私も行きたーい。」


「カシアス様もキース様も侍女どころか下働きさえ避けてるし、難しくない?」


 キース様も「侍女も苦手」と言っていたが、女性全般が苦手なのだろうか。そもそも恋愛対象は女性なのか?本気で腐ったお姉様方の喜ぶ方向性は検討しなくて良いのだろうか。


「王都のお屋敷には侍女はいないのですか?」


「あ、ミラ嬢が行くんなら、侍女を雇わなきゃだよね。やっぱりお母様に言ってみようかしら。」


 一緒にお茶を飲んでいたご令嬢に侍女をお願いするなんておそれおおいのですが。


「一応、身の回りのことは自分でできますので、そのあたりのことはキース様にお任せしようかと。」


「親どころか使用人からもネグレクトされていたので、この世界の掃除洗濯も習得済みです」とは言えない。


 コロコロといろんな方向に転がる話題を笑顔で拝聴しながら、意識は家系図にばかりいっていた。こんな複雑な家系図、覚えられるかしら。

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