舞台裏03. ロベルト公爵家首脳会議
晩餐後、セシリアとカシアスは、キースを伴って執務室に部屋を移した。伴ってというより、カシアスがキースを引きずって行ったという方が正しいかもしれない状況ではあったが。
「先ほども伝えたが、カシアス、お前が次の当主だ。流石に未来の奥方が可哀想なので、妾はお義母様が別邸に連れて行くとのことだ。カティアは今年の結婚を来年に延期、間を開けずに予定通りウルティアも結婚するから、あとはキースとライナーだけだが、ライナーはアイラが引き取ることにした。」
カティアは通いの商人と恋仲で、ウルティアは隣国の伯爵家に嫁ぐことが決まっている。他の姉達は皆、既に結婚して家からでていた。
「というわけで、お前達には早急に結婚してもらう。ただでさえ親族は女ばかりな上に、公爵家に残るのはお前達しかおらんのだからな。」
「いや、結婚って言ったって、相手が」
「できれば、どちらかが今日紹介のあったミラ=リバース嬢と結婚してほしい。お父様が妾に、と引き取られたんだ。」
セシリアとカシアスの視線がキースに向いた。
カシアスが令嬢と結婚となると、年齢的な問題もあるが、それ以上に後継者問題が解決しない。ミラと結婚した場合、後継がどうのというはなしができるのは早くとも5年以上後だろう。
「か、彼女もどこかに養子じゃダメなのか?」
「女児をとなると、婚家との調整が難しい。しかもロベルト公爵家の血は引いていないんだ。彼女自身のためにもならんだろう。」
「テルスとかダンテは?ちょ、ちょっと年上だけど、オリアとか。」
カシアスが意見した瞬間、部屋の気温が少し下がった気がした。セシリアの気に障ったのだ。
カシアスより歳下の従兄弟たちなので、年齢的な問題は過敏になるほどではないとは思うが、オリアには婚約者が既にいるのだ。キースにも悪手と分かったが、カシアスがキースとの約束を守ろうとしてくれているのは理解できた。
「テルスやダンテの相手をウチの一存で決められるわけないだろ。あっちの跡取りなんだから。キースは決まりとして、お前はどうするんだ?一族内であれば簡単なんだが。」
問いの形ではあったが、セシリアの中ではミラ嬢はキースの婚約者と定まっていたのだろう。キースの意見など関係なく、本題であろう後継であるカシアスの婚約に話が移ってしまった。
キースとしては「もう少し頑張ってくれ」と思わないでもなかったが、今回ばかりは責められないとも思った。
「い、1年待ってくれ。相手を連れてくるから。」
「そも、独り立ちして10年、候補の噂すら聞かんが、自分で探せるのか?」
「そ、そこは、キースが全面的に手伝ってくれる約束なんだ。な、キース。」
「セシ姉。1年と言わず、3年は待ってくれ。」
騎士団には騎士20人と対戦して半数以上を下せば、年齢に関係なく入団できるという特例がある。本来は入団制限の15歳になったら騎士団に入る予定にしていたが、流石に騎士団の仕事は手伝えない。入団してすぐは動けないだろうが、1、2年もすれば多少は融通の利かせ方などもわかってくるだろう。
「兄さんが焦って変な人を家に迎えても問題だろう?」
「私としては騎士団を除隊して欲しいんだが。まぁ、お前達にばかり我慢をさせるのは本意ではない。」
セシリアは厳しそうに見えて、実は弟妹に甘いことをキースは知っていた。カシアス自身は気付いていないが、カシアスには特に甘い。カシアスが後継ぎなのに命の危険がある騎士団に入ることができたのも、セシリアが父母を説得したからだった。
キースに至っては冒険者をする際にも苦言をいただいた。軍部にも冒険者組合にも伝手は欲しいが、弟妹への心配は別だったらしい。でも結局、魔法書を揃えてくれたり、市井に溶け込みやすい装備を贈ってくれたりと協力してくれるのもセシリアだった。
「結婚まで3年だぞ。」
こうしてキースは「兄がまだだから」という免罪符を手に入れた。




