00. 赤ちゃんなのに人生枯れ気味
生まれて何日経ったかわからないけど、本能ってすごいなって思う。
精神年齢55歳にとって、下の世話をしてもらうことは抵抗はあれど受け入れられるが、他人のおっぱいを吸うのは勘弁してほしい。しかし、齢ゼロ歳にとっては死活問題で、目の前に出されれば何故か勝手に口が開いておっぱいを吸ってしまう。おっぱい飲むのって結構難しいし体力がいるから、必死でお腹を満たしている内にそのまま寝てしまうこともしばしば。早く離乳食に移りたい。
記憶があるのに脳みそはツルツルなのか、何度考えても同じようなところで眠くなり、考えていたことを思い出している内にまた眠くなる負のループ。考え事も一向に進まない。取り敢えず、母親だと思っていたおっぱいは乳母のものだったことは理解しました。
赤ん坊の視力では区別はつかないけれど、取り敢えず黒い面積が多い女の人はおしめ係だということと複数人いることはわかっているので、自分がお金持ちの家に生まれたことは把握しました。感想はすぐに出てくるのに、何か思い出そうとすると眠くなるのは通常運転です。
父親を見ないなと思っていたら、なんとなく誰が誰なのか判って来た頃に女の人と一緒にやって来た。隣にいる女の人は母親とは声が違う。乳母でもない。
「取り敢えず愛人ではないことを祈ります。」
とか思っていたら、抱っこもしてくれないので、父親でもないのかもしれない。叔父とかかな。父親も抱いてないのに、抱っこするなんてって遠慮してるとかかな。
そうこうしている内にようやく離乳食が始まった。取り敢えずよく分からんペーストを食べてるけど、味覚が発達してないからかよく分からん。おっぱいより腹持ちが良いことは確か。もうすぐ這って歩けそうだけど、昼は寝て、みんなが寝てから練習しよう。ちょっとずつ目も見えるようになってきたから、ちょっと探検したい。だって、誰もおもちゃをくれたり絵本を読んだりしてくれないから暇なのよ。
這って歩けるようになっても、部屋から出れる訳ではないので暇で仕方がない。取り敢えず運動して寝て、ご飯食べて運動しよう。
おしめ係の人や乳母の雑談から、なんとなく言葉が分かってきた。時々来る母親や母親に対する乳母の話し方から推測すると、最低でも3種類の言葉があるらしい。まあ、語尾と発音の仕方が少し違うだけなので、方言とか丁寧語の類のよう。私はどれを喋れば良いんだろう。私に話しかける人はいないので、取り敢えず黙っておこう。